「日本」を謳う海外企業の繁盛に見る、国名を冠した海外ブランドへの期待

香港・シンガポールには、「JAPAN HOME 日本城」もしくは「JAPAN HOME 日本の家」というディスカウントホームセンター屋さんがどの商店街でも見つけられるほどお馴染みの店としてあります。生活用品全般、収納道具や掃除道具、キッチン用品のディスカウントショップで庶民の便利屋さんであり、香港でも実に200店舗、さらに狭いシンガポールでも47店舗あると紹介されています。

ただ「JAPAN HOME」と言いつつ、実際この小売店企業は香港企業で、売っている商品も生活用品で日本ブランドに特化している訳ではありません。ではなぜ海外企業が「日本」と名前を付けるのかと言えば、(日本にとって大変誇らしくありがたいことに)日本を謳うことによって消費者が好感を持ってくれる背景があります。

香港企業JAPAN HOMEの筆頭株主ETQによる紹介https://www.eqtgroup.com/Investments/Divestments/Japan-Home-Centre/

日本ブランドを模したブランドやお店では香港・シンガポールでは数多く見られます。食品関係では特に多く、日本商品っぽく見せるために商品パッケージに平仮名や片仮名の名前を付けているものはキリがありません。

とは言え、やはり言語って外国人には難しいよね、と言うか大抵どこか可笑しいキャッチコピーになります。

もやっとする日本語表記の例

例1:「せんいジュース こんにゃくゼリー 繊維蒟蒻果の凍」 「繊維と自然ぶどうジュースを含んだ」

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出だしは良い感じですが、3段目からモヤっと、そして最後はこれは動詞の連体形で終わっているのかそれとも動詞の終止形だ・である調なのか、、、なぜ駄目なんだと問われても答えられない、うまく言い換えるならこうかなと代替案は出せるけれど、とにかく駄目なんだとしか言えないモヤモヤを呈しています。

因みにこちらは台湾企業のゼリーで食感が「蒟蒻畑」っぽく美味しいです。


例2:「麦屋」「焼きたこ」

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焼きタコですか。。。?と思うなかれ。察してあげましょう、「焼きたて」を。静的なプリント文字にしては意味のない「焼きたて」は元より、そうだよね、「て」と「こ」の判別はそのフォントじゃ難しかったよね、と肩に手を置いてあげたい気持ちになる間違いです。。一方で、「麦」には中国の繁体字を当てる漢字への自信が見えます。。。

「て」と「こ」は珍しいと思いますが、シンガポールの街中の看板でラーメ「ソ」(ああ、「ン」と「ソ」は書き順を知らないとどちらも同じに見えてしまうのでしょうね。)などン・ソ・リ間の間違いはよくあるものです。

上記に紹介した通り、東南アジアで日本ブランドを模して消費者からの好感を得るのは常套で恐らく有効なマーケティング手段です。日本で可笑しな英語やフランス語が付いた食品や雑貨、Tシャツが五万とあることと同じでしょう。

ただ最初に挙げたJAPAN HOMEにおいて、「日本の暮らし」を意図しそうなブランド名をして、実態は少し違うお店が400店近くの店舗数を東南アジアで持っていることやEBIDA +25%(!)の興盛を見ると、日本の企業ではないブランドがあたかも日本企業として現地で受け止められないか少し不安であり、日本を模していることに釈然としないものがあります。

例えば、「インドカレー」と謳って大成功を収めているレストランがあったとして、そのレストランで提供しているものがただのターメリックスープだった時、インドの人はインドカレーはそんな薄っぺらなもんじゃない!と抗議したくなるのではないかと。

ある国の名前を冠してブランディングしている商業には、そもそも消費者がその国にもつ印象をマーケティングに利用している一方、模倣を外れて独自路線を取っている際に、うまくいってしまえば現地の消費者がその国に持つ印象にも影響してしまう恐れがあると思うわけです。

さらに言えば、本来はそのマーケティングポジションを獲得したい国をよそにして他の国がマーケティングポジションを獲得してしまう可能性もあります。

そのように考える例として、日本ロッテのチョコレート「ガーナ」はアフリカの国Ghanaの国名を付けていて、CMでお馴染みの商品なので、さぞかしガーナはチョコレート(正確にはカカオ豆)貿易が盛ん何だろうな、と想起できるくらい日本の消費者に浸透していると思います。ただ、実際のカカオ豆の輸出量世界一は、圧倒的に、コートジボワールです。2位ガーナに倍の差をつけて堂々たる圧倒的1位ですが、日本においてコートジボワール=チョコレートのイメージは、ガーナ=チョコレートよりもイメージが乖離しているのではないでしょうか。コートジボワールの立場からすれば何で日本ではお隣の2位のやつが有名なのだろうか?という気持ちになるのではないでしょうか(実際のところは全く分かりませんが)。


些細な実害として、食品に日本語が付いているもので日本人として困るのは、たまに日本の食品と勘違いして買ってしまうことです。実は完全に現地企業による現地の味で食べられないことがあり、本当に何のポリシーもなく日本語を付けるのもどうなのだろうとも思ってしまいます(苦笑)。最近はしっかりと製造元の食品ラベルを確認するようにしています。

例えば「日本の生活様式を目指した家具」とか「日本の味や雰囲気を再現した食品」などの精神があるなら分かりますが、脈絡もなく日本語だけ足すのはむしろ勘違い狙いなのかと勘ぐってしまいます。もとい、パッケージマーケティングの勝利ではあります。


やはり日本人としてはどんなブランドや商品であれ、日本を模したりその国名を冠するのであれば、少なくともある程度は日本らしいところを持っていて欲しいなと期待してしまいます。マーケティングに使うのはビジネス上の狙いだったとしても、どうか消費者がその商品を通じて思う「日本」が良いものであって欲しいと思うのです。

決して日本に限ったことではなく、日本企業でも海外ものを思わせる商品がいくらでもあると思いますが、ポリシーのある商品であって欲しいなと無垢な消費者は願います。

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