ハラスメント防止講座の講師が失礼だった話
先日、「これから始まる稽古場のハラスメントガイドラインをどのような内容にするか」というミーティングをしていて、その最中に、めっちゃ過去のことを思い出したので今更書いてみる。
経営者という立場もあり、いろいろなハラスメント研修を自主的に受けてきたのだが、1年半くらい前にオンラインでのパワーハラスメント防止講座を受けた。
ハラスメント防止講座はいろいろなアプローチのものがあるが、その講座自体は、アンガーマネジメントという視点からのものであった。
講師は50代くらいの男性。講師自身、かつて企業に勤めていた際に部下に対してめちゃくちゃパワハラをしていたそうで、次から次へと下の人が辞めていってしまっていたらしい。周囲も自分のことを腫れ物に触るように接してくることが日常で、でも自分自身でも怒ることがやめられなくて、それをどうにかしたいとアンガーマネジメントの講座を受け、それで自分自身の行動を変えることができ、今は「これを多くの人に伝えたい」と、講師となったのだと最初に自己紹介があった。
で、その講座自体はコロナ禍でオンラインでの実施ということもあってか、受講生の人数も少なく、そして自分も含め、講師よりも若い(ように見える)女性しかいなかった。
講座の内容自体はスライドに沿って淡々と進み、勉強になった。「パワーハラスメント防止講座」だから当然、講師の口調も丁寧だし、ハラスメントに該当するようなことなど絶対に起こり得ないのだけれども、かなり早いタイミングから私はずっと違和感があった。それをどう形容していいか分からないのだけれども、敢えて言うと「ナチュラルに失礼」という感じ。
こちらが指摘したくなる発言とか態度の決定打は出ないんだけど、ず~っと薄い失礼さを感じていた。
これっていったい何なんだろうな~と、途中から私の興味と関心は講座の内容ではなく「この講師の失礼さを私はどこから感じるかの分析」に移行していた……。
それは、女性=こうだよねという性別役割分担意識に基づく発言が多いとか、「教えてあげている」という上からの目線とか、質問者が最後まで言い切るのを待たずに微妙に最後かぶって話始めるところとか、カジュアルな、フランクな姿勢を示したいのか分からないけど、ときどき出てくるタメ口とか、たぶんそういうところだったんだと思う。
だから、内容を教えるという意味では講座的には滞りなく終わったと思うが、あの講義の場が「学びのための安心安全な場」を目指していたのだとすると、場作りには完全に失敗していたと思う。私はとても居心地が悪かったので。(そしてそのまま終了後のアンケートに書いた。)
それで思ったのは、この講師はアンガーマネジメントを学んだことでパワハラはやらなくなったけど、そもそも自分とは異なる他者へのリスペクトを持つということが腹落ちしてないんじゃないかということだった。そもそも他者にリスペクトを持てる人はパワハラやらないと思うので。パワハラ部分の「行動」を封じても、その根底にある部分にはアプローチできてないんじゃないか。だから、残念だけど、パワハラしていた時と、根っこのところはあんまり変わってないんじゃないのかなと思った。
技術によって、自分自身の怒りをコントロールできるようになったとしても(それはそれで非常に重要であることは言うまでもないけど)、この講師は、マジョリティ特権とか、権力勾配に対しての意識とかが理解できてないから、こうやってナチュラルに失礼な感じで「ハラスメント講座」の講師ができるんだろうなと思った。
この講師じゃなくても、ハラスメント研修を受けているはずの人が、丁寧な口調で、他者に対してリスペクトを欠いた発言をする場面にも遭遇したし。
だから、ハラスメント研修をしても、ガイドライン作っても、基本的人権の尊重というか、多様な価値観や考えへのリスペクトとか、まだ配慮されていない人たちの日本社会の側にある構造的な問題とかが腹に落ちて理解できてない限り、リスペクトを欠いた行動や発言は出てきてしまうんだよなぁと。
研修をやった、ガイドラインを作った、で終わりじゃなくて(やらないよりも100倍素晴らしいことは言うまでもなく)、ず~っと自分の言動をアップデートし続けないといけないんだと思う。
ちょっと前のつぶやき。
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