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02.ミッフィーキャラメルティー

物語から受けた衝撃が、一日中引きずってしまうぐらい大きい。
そんな物語と出会う事がたまにあります。原神というオンラインゲームに出てくる五つ目の国、フォンテーヌのメインストーリーが私にとってそうでした。今日は一日中フリーナの事を考えてしまっています。結末の衝撃を浴びて、わっと湧いた大きな何かをはしっこからあれこれ言語化したり、紙に書いて整頓してみたり、人間の愚かさを恨んでしまったり、お前も人間だからお前のせいだと私の中に無責任さんが湧いて責められたり、混乱して落ち込んでしまったり。
彼女一人に背負わされてしまったあまりにも大きすぎる役割が辛くて泣いたり。泣いているうちに、ああ私は彼女に過去の自分を重ね合わせているなと気づいたり。
……少しずつ。少しずつですが、どういう形で私は衝撃を受けたのかが、一日考えて見えてきた気がします。というか考える事をやめられない状態だっただけですけど。底までどっぷり沈んでしまってる時は無理ですが、このぐらい輪郭が見えてくると少し物思いから浮上しやすくなる。そろそろしんどいので、浮上がしたいな。できるかな~。

こういう時私が力を借りる定番のツールが、ストレッチ、音楽、それと紅茶です。ちょうどフォンテーヌは紅茶文化が盛んな国。彼女を想うのをやめられないなら、彼女に多少まつわるもので少しずつ浮上を試みてみましょう。


ミッフィーキャラメルティ―フィーユブルーのブレンドティーです。

去年末に手に入れていたミッフィースイートティーコレクションセット。それに入っていたお茶です。ずっと買うチャンスを窺っていたキャラメルティーを送料無料で買えるし、さらにトートバッグまで手に入るお得セット……あまりにも私のニーズにジャストフィットでした。以前レポしたアップルティーフラワーアッサムティーをもう一度たっぷり楽しむ事もできますしね。フラワーアッサムティーに至っては缶とパウチが両方入ってるからほんとに大漁。でも何にでも合うからなんぼあってもいい。
フリーナは甘いデザートが好きだったよな……というところも今日のお茶に選んだ理由だったりします。フリーナに好きなもの好きなだけ食べてほしい気持ちがやっぱりまだ暴れていますね。そういう話じゃないのにね~。

袋を開けると、くっきりとしたキャラメルの良い香り。お菓子のキャラメルの香りにしてはちょっぴりほろ苦いので、ブリュレの上に乗っている焦がしキャラメルとか、キャラメルラテみたいな印象です。茶葉の香りと混ざっているのですっきりとしているのに、バターや砂糖みたいなこっくりした質感も同時に感じるから不思議。淹れた後はより蕩けるような甘みに……。すっきりと、でもこっくりとという不思議な質感が、そのまま温度と共に色鮮やかさを増したみたい。お菓子ともお茶とも違う新しい領域の香りがするな……では一口。

……おいしい。おいしい……。じゅわっ、と染み渡る旨味と香ばしさ……。香ばしさ、とも少し違うんだよな。苦味と甘みが同じ量溶け合った味がします。甘いのに苦い、苦いのに甘い。本来相反する味のはずなのにどちらも両立して溶け合っている。それこそ焦がしキャラメルのような味わいで、やめられない美味しさがあるな……うま……。実は渋みも結構強いですね。苦味甘みが過ぎ去った後に、ぴりっとした渋みが舌に残る感じがする。でもこの渋みはあんまり嫌じゃないな……渋みと一緒に旨味もくっきり残ってるからな気がする。ぴりっと一刺し残った後にじわーっとした余韻に変わっていくんですけど、その余韻が心地よくてほうっと浸れるし。余韻に浸っている間、苦味でも甘みでも渋みでもない『何か』を感じる気がする。何か。明確に拾える味ではなくて、透明な、でも柔らかなものが空洞にふわっと広がっていくような何かなんですけど。お茶の風味でしょうか。それとも香りや温度でしょうか。わからないんですけど、すごく心地いいなぁ……と思います。くっきりとしたキャラメルらしさが過ぎ去った後にいる、正体のわからないなにかが、心地よくてほっとする。

ちょっとお菓子がほしいかもな……と思って、急遽お茶菓子を用意。
札幌タイムズスクエア。昨日友人達みんなで遊んだ時に後輩くんから頂いたお土産です。ふわっふわのケーキ生地にカスタードクリームが入っているシンプルなお菓子なんですけど、これがまた美味しいんですよねぇ。私はなんとなくタイムズスクエアの事を北海道の定番お菓子のひとつだと思っているんですけど、道外の方にとってはどうなんでしょうね。知名度ははたしてあるのかないのか。なんてこと思いつつ一口……。

……んま……。生地ふわっふわ。クリームあま。馴染み深い味なので、それ故にすごくほっとする甘さだ……。味の要素の少なさも好きポイントです。複雑さがない分、気楽に美味しく食べやすい。その後お茶を飲むと……あ。甘くなる。苦味がふわっとほどけて、包むような優しい甘さのお茶になるなぁ。すっきりとした印象はそのままなのに表情が和らいだみたいな。その後齧ってもタイムズスクエアは味の印象変わらず、安定でおなじみの味。でもそれに合わせるキャラメルがすごく甘い美味しい味になる……不思議なんですけど両者が口の中で合わさった瞬間、はちみつのような味がしますね。どこか懐かしい甘さが口の中にふわっと広がってほっとする……。


ほあーーー美味しかった……。美味しかったし、なんだかほうっと気が抜けた気がする。からっぽの入れ物に温かいものが注がれたような。おなかが空いていたところに紅茶とお菓子を入れたのでまさしくその通りなんですけど、物理的な充足だけではなくて。別のところのからっぽもほっと和らいだ感じ。

お茶の余韻に浸りながら。
『選べずに負わされた役割』について、思いを馳せていました。
状況が、集団が、とても大変な事になっていればいるほど。なんとかできる人が一人しかいないという事がとてもありがちで、選択できないまま一人で役割を負わされてしまう。大人でも子どもでも容赦なく。そして一人で負うしかない状況であればある程、周りの人は一人に背負わせている事に気づけない。気づける力を持っている人が周りにいればそもそも、一人で負うしかない状況は生まれないから。
私はフリーナに報われてほしいと切に思う。とてもとても切実に願ってしまう。でもきっと、それは無理だ。それは自分の人生でよくわかってる。一人で集団を背負ってしまってる時点で重すぎて、身体にも心にも負担が大きすぎて、それに相応しいごほうびはもうこの世のどこにも無い。どんなお金でも名誉でも、その孤独や苦痛とは釣り合わない。ああ役割をやり遂げてよかったと、自分で区切りをつける為に思う事はできても。心の底から救われるかのように思う事ができる瞬間は、絵に描いたような『報われる』瞬間は、決して、永遠に、無い。私は、そう思う。

フリーナの『これまで』は報われない。
そして私の『これまで』も報われない。だから。
今、『役割という荷物を降ろせた』事だけが、事実なのかなって思う。
もう背負わなくていいこと。自分のためだけの人生が始まったこと。過去の役割ではひとりぼっちでも、この先の役割では一緒に持ってくれる人と出会えるかもしれないこと。そんな可能性のある人生を歩み始められた事。それだけがとても確かで、冷えていた身体に少しだけ温かく沁みていく、事実なのかな、って思います。
自分のために好きなお茶とお菓子を用意して、誰にも気遣う事なく味わって、美味しいってゆっくり浸れる時間が、今日あったみたいに。

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