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やってやれないことはない34話 『獣医師人生で保健所勤務』

保健所に勤務することになりました。                                     家畜衛生保健所ではありません。人対象の皆さんご存じの保健所です。

獣医師が保健所でどのような仕事をしているのでしょうか?

獣医師には、医師や歯科医師、薬剤師と同様に環境衛生監視員、食品衛生監視員、薬事監視員、医療監視員の職種に就業できる資格があります。

私はこの後5年半余りで、2か所の保健所と1か所の健康福祉センターで環境衛生監視員と薬事監視員、1か所の保健所で食品衛生監視員と医療監視員の4業務を行うことになりました。

日本獣医師師会のホームページに獣医師の担う公衆衛生分野について次のように書かれています。

『 われわれが、日常、口にしている肉や牛乳あるいは魚介類などの食品。そのおいしさの陰にはその安全を確保するために獣医師などの目がしっかりと行き届いています。スーパーマーケットや精肉店に並んでいる牛肉、豚肉、鶏肉などの肉類は、肉となる段階で獣医師による厳重な検査が義務づけられています。肉以外にも、牛乳や魚介類などあらゆる食品について製造施設、市場あるいは販売店などで、また、輸入食品については輸入時点で、それぞれ獣医師をはじめとする食品衛生監視員によって検査や取り扱いについての指導が常時行われています。
また、ヒトの健康を守るために必要な生活環境の衛生にかかわる監視・指導業務も獣医師などの環境衛生監視員が担っています。
動物とヒトが共通して感染する人畜共通感染症の中でもっとも怖い病気のひとつである狂犬病の予防も公衆衛生分野で活動する獣医師の重要な仕事。そのほかの人畜共通感染症についても国立感染症研究所、各都道府県の衛生研究所などの獣医師が調査活動、研究活動を通じてその対策に取り組んでいます。
さらに、厚生省検疫所では、海外からエボラ出血熱、マールブルグ病などの感染症が国内に侵入するのを防止するため、獣医師も検疫官として検疫業務に従事しています。
このように、獣医師は、公衆衛生のそれぞれの分野で、ヒトの健康に密接にかかわる仕事にも精力を注ぎながら公衆衛生の向上に寄与しているのです。
●と畜検査・食鳥検査(食肉等の安全性の確保)
●人畜共通感染症(狂犬病等)の予防
●食品衛生監視・指導(食品の安全性の確保)
●環境衛生監視・指導(生活環境の保全)
●人畜共通感染症に関する試験・研究                』

私が最初に拝命した環境衛生監視員は、非常に多くの種類の法律を所管し、それぞれの法に則り許認可や衛生措置監視指導の立ち入り検査等を実施します。

理容師法                                            美容師法                                            クリーニング業法                                       旅館業法                                                 興行場法                                            公衆浴場法                                                  水道法(受水槽や飲料水についての衛生指導)                          温泉法                                             建築物における衛生的環境の確保に関する法律(ビル管法、特定建築物やビルの環境衛生監視)                                          墓地                                             埋葬等に関する法律(火葬場、墓地、納骨堂の監視指導)                           化製場等に関する法律                                      住宅宿泊事業法に基づく民泊届出事務(民泊)                             ねずみ・衛生害虫防疫駆除                                   シックハウス症候群の相談                                     コインランドリー                                        プール                                            高齢者施設でのレジオネラ症発生による感染症調査                  その他                               渦中においては新型コロナウイルス感染症への感染症対策がすべての業務に関係しています。

専門性の高い保健所のこれらの業務は、多岐にわたる法令の所管をもって実施されています。

皆さんは、保健所の仕事を理解していますか?

私も仕事を始めてから理解したというのが本音です。なんとなくはわかっていても、業務範囲を理解している方は少ないと思います。

多分、国民に対して保健所業務を告知する場面がほとんどないからだと思います。自らにかかわる何かに対して行きついたところが保健所への届け出や許可、相談窓口であったりします。そこで初めて接点を知ることになった方がほとんどでしょう。

ここでの出来事は山ほどありますが、ほんの一部のエピソードお話ししたいと思います。

理容師法と美容師法、クリーニング業法に基づき確認業務と立ち入り検査を行います。                                          ある理容室では理容椅子に猫が寝ていました。ある美容室では小型犬が作業室内で自由に遊んでいました。何が問題でしょうか。                        法令によって理美容所内に動物を入れてはいけないことになっています。つまり、違反行為となって指導を受けることになります。根拠は、人獣共通感染症の発生原因になっている病原体を持っているかもしれない動物を入れさせず、感染を事前に防御する公衆衛生の観点から禁止されいます。

別の理由として、ハサミやかみそりを扱う仕事ですから作業場内への客などの自由往来もできないよう作業場と待合いの区切りを指定されていますので危険防止の観点もあります。

クリーニング業法の対象は、町のクリーニング屋さんやクリーニング工場、クリーニング取次所(洗濯物の引き受けと受け渡し)です。ドライクリーニングには主に石油系の洗浄剤が使われるため、利用の仕方や排水に関しては環境排水専門部署が対応します。衛生的なクリーニングが確保されているか、クリーニング師の人数がいるかなど確認します。クリーニング取次所においては、きちんと所定研修を受けたものが対応しているが、汚れた衣類等とクリーニングされた衣類等を別々のカウンター位置で受け渡ししているかなど確認します。

旅館業法と民泊の住宅宿泊事業法は全く別の法律です。                 旅館・ホテルなどは専門業者がいるために保健所に事前打ち合わせに来る建築家は慎重に打ち合わせます。                                 民泊は、一般住宅や寮だったところを利用しようとする全く知識のない方がほとんどです。                                       民泊として経営すれば儲かると称して、再建築不可の物件を見栄えのみリフォームして個人に販売し、コロナ禍によって運営が頓挫してしまいローン返済に苦しむという事例があります。

興行場法には映画館や市民ホールのように興行を規定以上の日数行う場所が対象です。                                           ある映画館では、二酸化炭素濃度が基準値を超えて運営されていました。     経費削減のため、夏は冷房維持、冬は暖房維持のため換気扇を止めてしまいます。                                             映画館や屋内ステージのコンサートに行かれましたら換気扇のON・OFFを確認してみてください。換気扇の吸い込み口に埃がたまっていたら換気不十分になっていることがわかります。                                  因みに映画鑑賞室内に二酸化炭素濃度測定装置が設置されているにもかかわらず、職員が誰もその機器の存在を知らないということもありました。   もしかするとあなたが行く映画館ですぐ眠くなるのはこのせいでしょうか?

公衆浴場法は、町中の銭湯はもとより、スーパー銭湯、共同浴場、ゴルフ場のお風呂など幅広く対象となっています。                        お風呂で一番気を付けるのは、各浴槽の残留塩素濃度です。           基準値以下ですと細菌等の増殖が疑われます。近年では死亡などの重症に結びつく、レジオネラ菌の発生件数が増加しており要注意です。                               お風呂のボイラーから浴槽や蛇口やシャワーヘッドまでの配管の清掃がされていない場合、この危険性が高まります。                                      定期的に清掃されているところは安心できる場合が多いのですが、レジオネラ菌が見つかってから清掃しているところは気を付けなくてはいけません。

次週は、続きのエピソードをお伝えしますね。






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