「やさぐれ魔法の王女様」 2、カレン・レトリック


 レトリック王国の首都イントラ。カレンたちが今いるアレストからは遠く離れており、そこからは想像もできないくらい大都会である。

 国民からは王都と呼ばれており、ここには国王と女王が住んでいる「王宮」がある。そしてその周辺には王族や貴族、国民の中でも裕福な層が住んでいる。その街並みはオフィスなどが入ったビル群と、昔ながらの古風な作りの建物が入り混じる異質な見た目をしている。

カレンはこの王都に国王の娘として生まれて育った。

 国王を絶対的な権力に据え、その血縁者たちが行政の長を司っているこの国は外国から見れば民主的ではなく独裁的に見えるかもしれない。しかし運がよかったのか悪かったのか。歴代の国王は国民にそこまで強い圧政を強いることは無かった。

 カレンは現国王ガルドと第一夫人フレンドルの間に生まれた3人目の子供。最終的に国王は9人の夫人と12人の子供を持つことになる。だから当然最初の3人以外は全員異母兄弟。

つまりカレンとクロムは「腹違いの姉妹」ということになる。

 第一夫人は例え一般人であっても王と婚約することで「国の女王」という立場に上がる。レトリックでは男系・女系ともに関係なく王位継承権が有り、直系に女の子しか生まれなかった場合でもその長女を女王として同じように「第一夫」を婿に入れていく。

 王と第一夫人の間に生まれた子供は特にその中でも地位が高く、扱いが別格。王としての後継者は絶対的に直系の中からの選択であり、カレンも当然その資格がある「第2王女」である。

 長男ガラル、長女リゼリア、そしてカレン。

 カレンは第2王女ではあったものの上2人と比べるとかなり自由度は高く、さほど一般国民と変わらない環境で教育を受けてきた。その性格はかなり破天荒で、暇だからと言って屋敷のガラスを破壊したり、かわいそうだからと言って庭の池にいた魚を川へ逃がしたり。このころからやりたい放題やっていた。

 送ってき生活が一般国民と同じと言っても実際には周りは特別扱いをした。小学生の頃は同級生の家に遊びに行くことも出来ず、街に自由に遊びに行くことも出来なかった。幼いころから国の式典や儀式などには必ず参加させられ、何か挨拶などで発言するときは必ず「誰かの書いた文章」を壇上で読み上げさせられる。

「ずっと誰かの言いなり」だった。

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8,499字
「龍を倒す」こと。剣や魔法でドラゴン退治はファンタジーの王道ですが、そんな王道から少し外れた先の未来。握らなければいけないのは剣や魔法の杖ではなく、自分の種になるかもしれない。

完結済みのオリジナルの小説です。全21話。文字数は大体18万字あります。少々長いですが良ければどうぞ。

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