「やさぐれ魔法の王女様」 10、最高級のブラフマジック


 一か月振りにエドワードが実家から戻ってきた。彼は帰ってきた報告と合わせて今日の新聞を片手にカレンの屋敷に向って車を走らせていた。

エドワード
「まさか、急にこんなことになるなんて」

 その日、新聞やメディアが報じたことは世間のSNSを賑やかにしている。王都や近隣の都市部の人たちの話題はそのことで持ち切り。

街の女性
「もしかして、初めてじゃない?」

街の男性
「ああ、俺の記憶が正しければ初めてだ。絶対に見に行くしかない」

 カレンが言ったことが王宮を通じてメディアに情報が流れた。エドワードは息を切らし気味に屋敷に到着すると、真っ先にカレンの部屋に向いノックをした。

カレン
「・・・なによー・・・入っていいわよ」

エドワードはその言葉を聞くと襟元を正し、息を整えるとドアノブに手を掛けた。

 部屋ではカレンが珍しくユイにネイルをして貰っていた。

エドワード
「ただいま帰って参りました。・・・申し訳ありませんでした。急に屋敷をあけてしまいまして・・・」

カレンは手元を見ていた。

カレン
「お兄さんはどうだったの?大丈夫そうだった?」

エドワード
「ええ、お陰様で、兄は思ったよりも元気にしてました・・・術後の経過も良好です。急いで帰るほどではなかったです」

カレン
「まあ、会える時に会っておいた方がいいこともあるわよ」

 エドワードは持っていた新聞を広げるとカレンに見せた。

エドワード
「それよりも・・・カレン様、これは本当でしょうか。私には今でも信じられないのですが・・・」

 新聞に書かれていたことはカレンが3日後、国王主催のパーティーに参加するということだった。

カレン
「ええ、本当よ。何を驚いているの?私も今週で21歳。魔法を授かってそれで国民の為に働く。多分私はゆくゆくこの王都の管理者にされるって思っているの。だからそこで働いている偉い人達に挨拶をするのは当然じゃなくって?」

 カレンの兄と姉の将来は間違いなくレトリックという国の顔役。他国で言えば総理大臣や大統領という立場になる。彼らは国全体の指針を考えたり、この国特有の魔法外交をしなければいけなくなる。

 そのためにこの王都と含めた地方都市のトップには他の王族が就くことになっているが、カレンが就任するとしたらこの王都バンデルだと言われている。王都イントラは国際的に見ても有数のメトロポリス。文化や産業の重要なハブとしてだけではなく、王都予算の金額は小国の国家予算に匹敵するとも言われている。

 歴史を見てもこの王都のトップは直系の子孫が就くことが多く、現在はガルド国王の直系。三男のチャスト・レトリックが就任して治めている。しかし、チャストは生まれつき病弱な為か表には全く姿を現さず、王都の実質的な運営はガルド国王の名の元に王宮の高官たちが行っているのが現状。

 王都民からはきちんとしたトップを据えて欲しいとの声が数年前から上がってきており、王宮としてもある意味国王や女王よりも影響力のある大都市のまとめ役が不安定なのを懸念していた。そのための後任候補としてカレンの名前が挙がっていた。

 しかし、カレンも現任者チャトスと同様に全く表に出て来ない人物。21歳の誕生日が近づき、どうなるのかわからない中での突然のパーティー参加。国内はもとより、国外の政治家やマスメディアも慌ててレトリック行きのチケットをかき集めていた。

 パーティーに招待されていたのはクロムのような異母兄弟の王子や王女、それと王都の高官たち。主目的は王都イントラで事業を展開してる自国、他国を問わない企業の交流会。本来ならばチャトスが開くべきだが、それが不可能なため国王主催で開いているという趣旨のものである。

エドワード
「・・・急にどうされたので?お心変わりでもされたのですか?」

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「龍を倒す」こと。剣や魔法でドラゴン退治はファンタジーの王道ですが、そんな王道から少し外れた先の未来。握らなければいけないのは剣や魔法の杖ではなく、自分の種になるかもしれない。

完結済みのオリジナルの小説です。全21話。文字数は大体18万字あります。少々長いですが良ければどうぞ。

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