「やさぐれ魔法の王女様」 9、本当の心色


 屋敷に戻るために車を走らせているとユイが「そういえばお昼まだでしたよね」と言って街にあるパン屋に立ち寄る。そこでお茶とホットドックやサンドイッチを購入した。ユイは街に真っすぐに戻らず、郊外にある小高い丘の上にある公園を目指した。

カレン
「・・・どこに行くつもり?」

ユイ
「秘密です」

 車は人気のない道に入っていきしばらくすると忘れ去られてしまっているかのように寂れている公園に着いた。駐車場には落ち葉が散らばっていて近づく人はほとんどいないようだ。2人は車を降りるとさっき買ったものを持ってベンチに向った。

カレン
「屋敷に戻って食べればいいじゃない?どうしたのよ急に」

ユイ
「・・・いいですから」

 珍しくユイが強引にカレンを引っ張って公園の中に入っていく。仲には申し訳なさそうなブランコと滑りの悪そうな滑り台が置かれていた。その近くのベンチに腰掛けると2人は買ってきたものを食べはじめた。

カレン
「いいわね、なかなかおいしいじゃないの。よく知ってたわねあの店」

ユイ
「でしょう?私とクロム様の秘密のお店です」

 パンを食べ終わるとカレンは煙草を取り出しユイに差し出した。ユイは「ありがとうございます」というと受け取り、カレンが火をつけてあげる。紫煙が宙に舞い、静かで穏やかな時間が流れる。

カレン
「・・・もう気づいてるでしょ?ユイ」

ユイ
「ええ、もちろんです」

ここから先は

4,138字
「龍を倒す」こと。剣や魔法でドラゴン退治はファンタジーの王道ですが、そんな王道から少し外れた先の未来。握らなければいけないのは剣や魔法の杖ではなく、自分の種になるかもしれない。

完結済みのオリジナルの小説です。全21話。文字数は大体18万字あります。少々長いですが良ければどうぞ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?