「やさぐれ魔法の王女様」 11、ガルド国王


 会場はダンスホールにも使われているほどの大きさ。その天井には豪華なシャンデリアと壁にはよくわからない絵画が飾られている。会場の壁際には衛兵とそれに混じって自国の王宮勤めの高官たちが周囲を取り囲むように立っていた。パーティーは立食形式で行われるため大きなテーブルがいくつかあり、その上にはワインボトルとグラスが礼儀正しく置かれている。

 カレンとユイは受付を済ませると会場の中に入っていった。それを察知した参加者達は挨拶をしようと次々とこちらに向ってやってくる。それを見てユイは持っていたカバンから銀色の箱を取り出して箱を開ける。そこにはカレンの名刺が束になって入っていた。

 隣国の副総理や外交官が立て続けに挨拶に来る。その一人一人に丁寧にカレンは対応し、嫌な顔一つせずに話を聞いていく。話の内容は大体が王都イントラについての未来の話や政策の話についてだった。

 その波がひと段落すると、見覚えのある人物がやってきた。

カレン
「「あら、いるじゃない。馬鹿共に混じって綺麗な花が」

クロム
「凄いね、普段と全然違うよ。こんな注目度の有るパーティーなんか見たこと無いもの」

 クロムはやや興奮気味だったが普段通りに話しかけて来た。その様子を記者たちが写真に収めていたが皆、驚きの表情をしていた。直系の王族が異母兄弟と親しくしているのはかなり珍しい。

 公の場でフランクに話し合う姿がものすごく新鮮に映ったのだろう。その様子を見ていた高官たちも少し驚きの表情をしている。その上カレンはクロムだけではなく、その付き人であるメイドや執事にまで話しかけていた。

 一通り近寄ってきた王族や他国の政治家たちと話を終えると次にカレンはあり得ない行動をとる。壁際に居た自国の高官に対して話しかけていったのだ。

カレン
「ずーっと立ってるの疲れない?座るとことか無いのかしら?」

王宮の高官
「あ・・・椅子をお持ちしましょうか?」

カレン
「私じゃないわよ、あんた達のことを言ってんの・・・あら、その眼鏡素敵ねぇ、誰かの贈り物かしら?」

王宮の高官
「あ・・・ええ、これは私の妻が誕生日プレゼントでくれまして・・・」

カレン
「素敵な奥様じゃないの!良かったわね!素敵な人に巡り合えて」

カレン
「・・・あなたお名前は?」

エクト
「名前・・・ですか、私はエクト・スルームと申します」

カレン
「エクトね、覚えておくわ」

 そういうとカレンはエクトの背中をバシバシ叩いた。その光景を他の高官たちはあっけにとられた表情で見つめている。しかしお構いなしにカレンはくだらない世間話を高官たちに次々としていく。

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「龍を倒す」こと。剣や魔法でドラゴン退治はファンタジーの王道ですが、そんな王道から少し外れた先の未来。握らなければいけないのは剣や魔法の杖ではなく、自分の種になるかもしれない。

完結済みのオリジナルの小説です。全21話。文字数は大体18万字あります。少々長いですが良ければどうぞ。

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