「やさぐれ魔法の王女様」 12、ぜろことめ

 パーティーから3日経ち、日付は11月22日になった。普通ならば豪華な誕生日パーティーが行われるはずなのだが、この21歳の誕生日に関しては行われない。それよりも魔法の儀式の方が重要視されているためである。

 それでもニュースはカレンの誕生日を祝い、街は静かに興奮しているように見えた。魔法伝授を静かにほのめかす。決して大げさではなく、決して信じているわけでは無い。しかし、確かにそこに有るだろうと信じられている物が伝えられる。

 カレンの屋敷。カレンの部屋。そこにエドワードが手紙を持ってやってくる。豪華ではない宛先だけ書かれた手紙。そしてノックの音が部屋に響き渡る、

カレン
「どうぞー」

 いつもの調子でカレンがノックの音に反応して返答をした。エドワードは襟元を正してドアノブに手を掛ける。

エドワード
「お誕生日おめでとうございます。私もこの日が来るのを楽しみにしておりました」

カレン
「あら、ありがとう。私も、楽しみに待っていたわ」

 エドワードは軽くお辞儀をすると持っていた手紙をカレンに渡した。カレンは受け取ると机の上に置いてあったナイフで封を切り、中身を読み始める。

カレン
「なるほどね、明日の23時に王立図書館に来いって事・・・出迎えは?」

エドワード
「ございます。魔法の儀についての事は秘中の秘。それを知った者だけが護衛や案内をいたしますのでカレン様は時刻前に外出の準備だけをしていただければ大丈夫です」

 「そう」と興味なさそうに返事をするとカレンは煙草に火をつけて、窓から空を見上げた。

カレン
「・・・明日は雨になりそうね」

 カレンはその後もいつも通りに過ごした。クロムと電話をしたり、ユイと一緒に花壇を見たり。シャワーを浴びたりした。

その光景を不思議に思ったのかエドワードが訪ねて来た。

エドワード
「カレン様・・・こういうのは何なのですが・・・随分と落ちついてらっしゃいますね」

カレン
「あら?そう?」

エドワード
「私が今まで付いたことのある王族は例外なくこの時間、ワクワクしておられたので・・・」

 自分の髪の毛を後ろにやるとカレンはエドワードの方を見た。

カレン
「楽しみ・・・と言えば楽しみなのかもしれないわね。でも、その楽しみは少し私にとっては・・・そうねぇ、違うのよ。問題は魔法を受け取った後の方が大事でしょ?それで何をするかとかそういう話じゃなくて?」

カレン
「なんでも同じだけど、手に入れることが出来るまでは・・・ね?」

そういうとカレンは自分のベッドに潜り込んだ。

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8,572字
「龍を倒す」こと。剣や魔法でドラゴン退治はファンタジーの王道ですが、そんな王道から少し外れた先の未来。握らなければいけないのは剣や魔法の杖ではなく、自分の種になるかもしれない。

完結済みのオリジナルの小説です。全21話。文字数は大体18万字あります。少々長いですが良ければどうぞ。

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