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オンラインでのことばの支援②_幼児さんとのレッスンの様子

「幼児さんにオンラインでのことば支援は難しいのではないでしょうか?」「効果はあるのでしょうか?」という質問は少なくありません。

オンラインでも、予め録画されている動画を使うオンデマンド型は難しいことが多いだろうと予想しますが、

ZoomやSkypeなどのWeb会議用のツールを使用した同時双方向型について、私は、幼児さんだから取り組まない、という判断をしたことはありません。

その子の背景やことばの支援の目的によってケースバイケースだからです。

対面のときと同じように、初回から課題に取り組むことができる子もいれば、慣れるまでに回数が必要な子もいます。

開始前、保護者の方からも「画面の前に座っていられるかどうか・・・」と心配の声が届くことがあります。少しでも安心してスタートできるように、ステップはふみます。

初回、私は、以下の2点が含まれる活動を含めることが多いです。

①その子が好きなものを使う

②画面の前に座り続ける必要がない(動く必要がある)

難しいことではなく、例えば、「〇〇さんの好きなおもちゃを1つ見せて」、「〇〇さんが好きな絵本をひとつ持ってきて」などです。

1つに決められなくて、もじもじ迷っていたり、好きなおもちゃをいくつも抱えてきたり(ときにはケースごと引っ張ってきたり)、1度決めて持ってきたけれども違うものを取りに戻ったり、その子らしい姿がみられる時間でもあります。

「もう少し近づけて見せて」「後ろ側も見せて」「さわるとどんな感じ?」など、それぞれの支援の目的に合わせて質問もします。

けれども、応答がどうであれ、初回は、画面越しで何かしらのやりとりが成立すれば、バッチリ!としています。

もちろん、小さな体、全身でドキドキして、こちらの声をじっと聞いている、画面をじっと見ている、それだけでもOK!です。

以下、対面とオンラインと併用している幼児さんの、オンラインでのセッションの一部(15分前後)をご紹介です。

事例の紹介ではないことと、具体的な支援方法はアセスメントに基づいてケースバイケースということを踏まえて、眺めていただけたらと思います。

幼児期後期、理解している言葉は多いけれども、音声で表出できる言葉はとても少ない幼児さんへのセッションです。

ちなみに、この幼児さんとの出会いはこちら

幼児さんですが、文字と音とが結びつき、書くことができる文字も増えてきたので、文字を活用しています。

この回の最初の数分間は、私がペンタブレットを使って文字を書き、その文字を刺激として、声を促していきました(文字を介した方が声が出やすい理由はここでは省きます)。

書いている線の動きが見えることこともあり、私が書き終えないうちから、「あ~」という声が聞こえてきました。

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母音をはじめ、ほぼ確実に出せるようになった他の音についても、文字を刺激にうながします。

その子がその音の出し方をつかんだときの動きもヒントとして提示しながら促します。

たとえば、「は」。この子の場合は、手のひらがあたたかくなることをキーに促してきました。

誰が聞いても「は」と認識してもらえるような音が出せていました。

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1音ずつの発音の確認や、出せる音と出せる音とで組み合わされた連続音の確認が終わったところで、ことばを表出する課題に入りました。

次の写真、実際には、私は音声で「〇〇さん、これは、なんでしょうか?」と質問しています。

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「髪はどれですか?」と聞かれて、自分の髪をさわったり、「髪、結ぶよ~」と声をかけられて、お気に入りのゴムを選んだり、のように、聞こえた言葉が意味するものが分かることと、

「これは何ですか?」と髪を見せられて、「髪」と自分から表現することとは、プロセスが異なります。

このセッションでは後者を扱っています。

前回までのセッションの中で触れたことがある課題です。ことばを含め、身につけている途中のことは、間隔を空けずに繰り返した方が定着しやすいことは、いろいろな研究結果から分かっていることです。

繰り返す機会を設けるだけで効果が出る子はいます。その場合には、そのまま機会を設けることを続けるのも良いかもしれません。

一方、そうはいかない場合もあります。その場合の促し方(声のかけ方、問いかけの仕方、引き出し方)は、ことばの支援のポイントの1つです。

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