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お母さんの読書感想文「わかりやすさの罪」

わかりやすさの罪
武田 砂鉄 著
朝日新聞出版
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わかりやすいことが良い、と言われる。

短く簡潔に、要点を絞って、伝わるように。

それが良いと言われているし、自分でもそう思っている。

しかし、本書では、それでいいのか?という問いが、ずっと投げかけられていく。

人間の思考や感情は、本来、そんなに簡単に言葉にはできないはずだ、という主張には納得できる。

けれども、出来るだけそれを端的に言葉にすることが良いと言われ、そうすることを求められているから、だんだん言葉に思考や感情を寄せていく。

そのうち、言葉を見て、自分の思考や感情を決め付けていくようになってしまっているのかもしれないが、それに気付かない。

そんなふうに、今手近なところにある言葉だけに自分を合わせていれば足りるのであれば、考えることをしなくなるだろうし、新しい言葉を知ろうという意欲も湧かなくなってしまうだろう。

わかりやすい、ということは、お手軽なこととつながりやすいのではないだろうか。

さらに、わかりやすいことで、分かった気になりやすいということもあるだろう。

そうなれば、ますます考える機会が失われると思う。

考えるのは、面倒くさい。

とくに正解のないことを延々と考え続けるのは、なかなかしんどいことだ。

でもそれを放棄してしまうと、誰もがただ待っている人になってしまう。

誰も考えず、誰も動かず、そんな世の中は怖いと思う。

何ができるのか、すぐには思いつかないが、考えることを諦めずにいたい。

それでいいのか?を何度も突きつける本書を読んで、そう思った。

2021年5月23日


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