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SRI@シリコンバレー流イノベーションの起こし方

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シリコンバレーに本社を置く研究機関であるSRI(Stanford Research Institute)の日本支社で働く著者が、シリコンバレーのテクノロジーや日本でのイノベーショ… もっと読む
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記事一覧

#20: AIは創造性を向上させるか?

COVID-19の影響で家で仕事をするようになり、はやくも4ヶ月目に入りました。自宅だと時間をうまくコントロールすることができず、すっかり記事の更新もご無沙汰しておりました・・・。 少しずつ生活のパターンも元どおりになってきて、こういった文を書く時間も戻ってきたので、また更新をしていきたいと思います。 人間の創造性とは何か?先日とあるお客様から「AI利用により、従業員の創造性が上がったという事例はあるか?」という問い合わせを受けました。AI利用で企業が「生産性をあげる」と

#019 シリコンバレーでの2020年のスタートアップのサバイバルとVC投資の状況(その1)

コロナウイルスの影響が全世界に広がったことで、米国株式市場はかなり不安定になっています。また、このコロナウイルスは米国だけでなく世界中で景気を下振れさせるリスクを増大させるというレポートをコンサルティング会社のMckinsey & Company が発表していました。 ただ、2019年から続く米中貿易摩擦の影響や今回のコロナウイルスの影響を考慮しないとしても、シリコンバレーではテック関連投資とスタートアップにとっては2020年は厳しい年になるだろうと昨年から言われていました

#018: プロジェクトで裏切り者を作らないために必要なたった1つのこと

社内で事業開発や今はやりのデジタル・トランスフォーメーション(DX)のプロジェクトを始めようとすると、多くの場合は複数部門から人数を集めてのスタートとなることでしょう。 やる気に満ち溢れた(とは限らないかもしれませんが・・)プロジェクトマネージャーが会議を主催すると、やる気がある人もそうでない人も、とりあえず第1回は全員が揃うことでしょう。ゴールの共有や、タスクの振り分け、そしてコミュニケーションルールなどの設定もどうにか終わり、実際にプロジェクトはスタートします。 とこ

#017: アンケート設計では「もてたいですか?」とか「痩せたいですか?」みたいな質問はやめよう

プロダクトを開発しようとした時に、まず最初にすべきことは「誰にどういった価値を提供したいのかを明確にする」ということを以前の記事で書いたことがあります。 ただそう言っても、「誰に」「どういった価値を」提供するのかを決めるのは簡単ではありません。 シリコンバレー方式は「観察する」シリコンバレーではとりあえずプロダクトマネージャーがもつ肌感覚を基本にしたり、あるいは小規模なインタビューからとりあえず最初のプロトタイプを作り、そのプロトタイプに対するフィードバックをもとに製品を

#016: 車が人の気分を理解し、「パートナー」となる未来

自動車業界でのイノベーションというと、真っ先に思いつくのが自動運転でしょう。もう少し範囲を広げるとCASEという言葉もよく聞くようになりました。 こういったニュースは定期的に発信されているのですが、実はそれ以外にも様々なイノベーションの研究が進められています。本日はその一つである「車による感情理解」についてご紹介をいたします。 自動運転とCASE自動運転については最近は楽観的な予想がだいぶ少なくなり、Level4 (システムがほぼ全てを操作し、緊急の場合には人間が対応する)

#015 SRIは建設業界のイノベーションを大林組と進めています

本日の日経新聞電子版でも報道をされていましたが、SRIは日本の大林組とさらなる協業を進めることを目的として覚書を締結しました。 (日経新聞の記事はこちら) 大林組とSRIは2017年から建設現場での作業効率を目的として様々な活動を続けており、過去にはその成果の第一弾として鉄筋検査を自動化することを目指した研究成果を発表しています。 今回の覚書には、さらなる協業を目指して開発技術の市場導入や人的交流についても盛り込んでいます。 (SRIからのリリースはこちら) 建設業界に

#014: ESG/SDGsは企業業績に貢献するのか?

先日、日系のある金融機関とESGやSDGsに関する取り組みについてお話をする機会がありました。ESGはEnvironment, Social, Governance(環境、社会、ガバナンス)の略であり、SDGsはSustainable Development Goals(持続的な開発目標)の略です。いずれも、グローバルにビジネスを展開する企業が積極的に貢献を期待される分野で、日本でも少しずつ関心が高まっていると言われています。 今回のお話では、ESG/SDGsと企業の業績に

#013 ホテルがほとんどないMenlo Parkでのホテル事情

前回は、シリコンバレーのど真ん中にあるSRI本社が、どのくらい田舎っぽいのか・・・ということを書きました。 こんな田舎にしょっちゅう出張している自分もどこかには泊まらなければなりません。では、どこに宿泊しているか・・というと、少ない選択肢の中で最も環境がよく、かつ会社に近いHotel Lucentというホテルに毎回宿泊しています。 Menlo Parkのホテル事情Menlo Park市はホテルに関して厳しい規制が設定されており、また高層ビルに対しても規制が設定されているた

#012 「シリコンバレーの中心」という、日本人から見るとかなり田舎にある我が社

日本人の感覚からすると、シリコンバレーに来て最初に感じるのは「広い」とか「どこに中心があるかわからん」だと思います。 シリコンバレーの土地勘?シリコンバレーの成り立ちを考えると、中心地はスタンフォード大学ということが出来るでしょう。ただ、AppleやGoogle, Facebookなどの有名企業はかなり分散していますし、数えきれないほどのスタートアップとVCもそこかしこにあるので、車なしでは移動できません。 そして移動するとすぐに気がつくのは、自然が非常に多いということ、

#011: AI×ロボットで超人になる(米国最前線テック: スマートスーツ)

日本ほど急激に少子高齢化が進んでいるわけではないですが、米国でも高齢者の増加により発生する様々な問題、および高齢者のQuality of lifeの低下は、解決すべき社会問題の一つであると考えられています。 2019年September/OctoberのMIT Technology Reviewでは、"Old Age is Over"というタイトルで、そもそもの「年を取ること(Aging)」を克服するための様々な取り組みを特集していますが、まだまだ「年を取ること」により発生

#010 スタートアップ希望のあなたはコンサルタイプ?プロダクトマネージャータイプ?

長いおつきあいのあるお客様が先端技術を活用したソフトウェアを作りたいので協力を・・・と言われて、このところ複数のコンサルティング会社の提案を一緒に聞いています(ITコンサルティングも含む)。 個人的には「顧客の問題をプロジェクトとして解く」という、いわゆるプロフェッショナルサービスを提供するという観点からは、SRIのような研究機関もコンサルティング会社も似たようなものだなと思っていたのですが、実際に提案を一緒に聞いてみると、二つの役割の方向性は全然違うのだなということに気が

#009: 日本では注目されない米国テックのトピック紹介: Deepfake対策

スタートアップや商用サービスがまだ立ち上がっていない、あるいはそういった取り組みには向かないけれども、技術開発としては重要なトピックというのはたくさんあります。今回はそういった領域の一つであり、かつ日本ではあまり取り上げられることが少ないDeepfake(ディープフェイク)についてご紹介します。 What is Deepfake?Deepfakeとは、AIの力を利用してビデオ映像や音声を変更することを言います。この技術を利用すれば、実際の人間の映像を利用して、実際には言った

#008: シリコンバレーでの安全安心なプロダクトづくり: 安全は物理、安心は心理?

シリコンバレーに出張する際に、お声がけのあった日本企業の現地オフィスに出かけることがよくあります。多くの場合は、数人〜10人程度の小規模オフィスなのですが、たまに「この企業がこの人数の日本人をシリコンバレーにおいておくのか!」と驚くようなこともあります。 そういった企業からよく話のテーマとして求められるのが「どうやって大企業でイノベーションを起こすのか?」ということです。こちらもそういったテーマについては何度も話しているので、それほど難しいものではないのですが、時々日本企業

#007: プロダクトマネジャーの最初の仕事は「変数」の操作

#004「プロトタイプ設計時に要件を決めるための4つのW」で、プロトタイプを作るための質問について取り上げましたが、実際のプロダクト開発ではこういった質問に対して、ものすごい数の要望と回答が来ることは珍しくありません。そういった「お願い」の海に溺れそうになった時に、プロダクトマネージャーがしなければならない作業というのは、「変数」の操作となります。 ステップ1: 処理すべき変数を決める検討のはじめに自分たちが欲しいプロダクトをイメージする時、非常にシンプルなものを思い浮かべ