見出し画像

#018: プロジェクトで裏切り者を作らないために必要なたった1つのこと

社内で事業開発や今はやりのデジタル・トランスフォーメーション(DX)のプロジェクトを始めようとすると、多くの場合は複数部門から人数を集めてのスタートとなることでしょう。

やる気に満ち溢れた(とは限らないかもしれませんが・・)プロジェクトマネージャーが会議を主催すると、やる気がある人もそうでない人も、とりあえず第1回は全員が揃うことでしょう。ゴールの共有や、タスクの振り分け、そしてコミュニケーションルールなどの設定もどうにか終わり、実際にプロジェクトはスタートします。

ところが、打ち合わせも複数回になり資料も豊富になってくると、明らかにメールや過去の検討内容を理解しないで発言する人が出て来ます。発言するだけなら、まだしも「既に検討した内容」を再度取り上げて議論を混乱させる人もいるでしょう。

こういった人に対して、最初は辛抱強く対応していたプロジェクト・マネージャーもついには怒り出し・・・というのが、よくあるプロジェクトの終わり方の一つです。
こういった結末を避けるための最も強力かつ簡単な方法は・・読み合わせです。随分古臭い方法を・・と思った方、何も新しいことがいいことではないのです。


読み合わせの効果

画像1

メールでの情報共有や議事録の共有はもはや当たり前のように行われているでしょうし、Slackのようなツールを使っている組織も多くなっています。

それでも、会議ごとの毎回の読み合わせに勝る情報共有はありません。時間を無駄遣いしていると感じる人も多いですが、特に社内で複数部門からメンバーが参加している時には、時間のロスを遥かに超えるメリットがあると言えます。

メリット1: 情報共有の場を強制的に作ることで「資料を読んでいなかったので、よくわからない」という言い訳を許さない

メリット2: 必要に応じて、項目ごとの内容確認をすることで「自分が納得/合意していない間に決まっていたことがある」と、議論が前に戻ることを避けることができる

メリット3:常に最新の情報を参加者全員が共有する場を作ることで、参加者が「自分が参加している」という感覚を持つことができるようになる。結果として、プロジェクトで裏切り者が出る可能性を大幅に減らすことができる。

読み合わせなんて古臭いし、スピード感がなく意識が低い日本企業でしか行われていないんじゃないか・・・?と疑問に思う人もいると思いますが、決してそんなことはありません。実際にはシリコンバレーにあるスタートアップでも、読み合わせに近い時間をとって意思共有をしている会社はたくさんあります。

もちろんSlackやメールだけでやり取りをしている会社も、同じくらいたくさんあります。しかし、米国企業では読み合わせ(というか、顔を合わせての意思共有)は日本とは別のメリットがあるため、定期的に行なっている企業が多いのです。

そのメリットとは・・・その場で質問の回答をちゃんと得られることです。一般に、日本人と比較した時に米国で勤務している人はメールの返信が遅い/少ないです。自分に関係ないと思っている or 関係ないと思いたい or 面倒臭い or etc...という内容は数度無視するというのも当たり前。この「返事がこないこと」によるスピードの遅れというのは無視できないレベルになったりすることがあります。

読み合わせを行うことで、そういった遅れを回避することが可能となるのです。日本では"落ちこぼれを無くし、意思決定内容を確認する"、米国では"すぐに議論内容を確認し、アクションを確定する"と目的は違いますが、読み合わせは意味のあることとして実施されています。

参加意欲に期待せず、合意に期待する

画像2

すでにお気づきのように、米国の例でも日本の例でも、定期的な読み合わせというシステムの素晴らしいところは、参加者のモチベーションや"やる気"によって成果があまりブレないということにあります。
もちろん参加者全員がやる気にあふれていれば活発な意見交換が行われるかもしれませんが、それは何も「読み合わせ」でやる必要はありません。一方で、極端に言えば欠席さえしていなければ、少なくとも意思の確認と同意を行うことが可能なわけです。

会議に継続的に欠席をする、とか、参加して一度同意していたにも関わらず後から意見を翻す・・ということも実際にはあるでしょうし、そういったことを積極的に行うような政治的な人というのもいるでしょう。
残念ながら読み合わせによってでは、そのような人に対応することは出来ません。ただし、そういった人がいることわかれば、プロジェクト・マネジメントとは違う舞台での対処が可能となります。

読み合わせというのは、合意を得るための一定のコストであると割り切れば、十分にメリットがある行為なのです。様々な人間が参加する場においては、合意には「一定の」時間をかけることが必要です。一方で、それは限られた時間で行われるべき。

プロジェクトで今ひとつ参加者の反応が鈍いな、スピード感が出ないなと感じたら、古臭い方法であると馬鹿にせず定期的な読み合わせをすることをお勧めします。快速での運行は無理でも、各駅停車での確実の進行が可能になることでしょう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?