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映画「バスターのバラード」ネタバレ 考察 解説。

馬鹿は死ななきゃ治らない。

死んでも治らないともいう。
どっちにしろ現世ではバカのままらしい。
そもそも、何時そのセリフ言うの?
人に迷惑かけたとか、自滅したとか。
色々理由はあるけど、要は「間違えてる」時なんだと思う。
「そうじゃないのにそうした」
「そうなのにそうしなかった」
そう言う話。
死んだら治るって事は死んだ時には判断ミスに気付けたんだろう。
治らない奴は死んでも気付かないって事なんだろう。
で、この映画は死がテーマじゃなくてバカのお話。
死に至る病。それは愚かな事かそれとも絶望か。

後悔先に立たず。

バスターは陽気で凄腕のガンマン。でも死ぬ。
セリフと歌で死因が語られる。
「ずっとトップじゃいられない。わかってたことだ」
黒い男が歌う。
「もっと早撃ちがいる。明日の方向からやってくる」
盛者必衰ってやつ。
当たり前のことだけど、死ぬまで自分は除外してた。こいつバカです。

運のいい銀行強盗。この人、何も考えてない。行き当たりばったりで行動する。犯罪で捕まっても幸運に恵まれ生還する。でも死ぬ。
目先の事しか考えられない。だから死ぬ直前ですら目の前の可愛い女性に目を奪われる。運はいつか尽きる。運がよかった事すら気付いてなさそう。死んでも治らない奴。こいつバカです。

五体不満足な青年。語りでお金を稼ぐ。興行師や観客を慈悲深いと思っているのか、何にせよ彼はそれにすがるしかない。
だけど「慈悲は強いられることはなく」と言われるようにこの世では慈悲より自分の快楽の方が優先される。
1章のバスターが天に召される時に言った。
「あの世には卑劣も嘘もないに違いない」
この言葉がよぎる。この世は嘘と卑劣で満ちているので慈悲は優しい雨のようには降らない。
それ青年は死ぬ間際に気付く。そもそも自分が乗っているワゴンに以前別の何かが乗っていたのを知っていたはずなのに。彼は自分が食事券であるとは思わなかった。こいつもバカです。

俺はお前らとは違うから。

もう十分だろう。そうみんな自分がバカだと気付いてない。
大自然に囲まれて殺し合う男達。
兄が死んだら、ワゴンマスターA、彼がいない時は年老いたマスター、それも死んだ(と思い込んだ)ら自殺。
考える頭はあるが自分では何も決めない。言われたことをするだけ。

で6章、5人が乗る馬車の二人は自分を「REAPER」だと名乗る。
要は「死神」だ。でもほかの乗客は別の意味の「賞金稼ぎ」だと思い込む。
「生きてる奴は相手にしない」
とまで言われてるに自分たちが死んでると気付いてない。
また出たよ。死んでも気付かないタイプ。
目的についてようやく気付き始める。「あぁ、死んだんだ」と。
車内での会話がこれまでの話をまとめてる。

人は二種類に分かれる。
幸運か不運か
強者か弱者か
罪人か潔白か
カードの話を持ち出して、
自分の手か誰かの手か

とも言う。
重要なのはどの組み合わせでも死んでるって事だ。
例えば、
五体不満足の青年は、「無実」で「弱者」で「自分の手で勝負できない」。
でも死んだ。
幸運の男は、「有罪」で「幸運」で「自分の手で勝負できる」。
でも死んだ。
どうあがいても死ぬ。
で、死ぬ間際か死んだ後に愚かさに気付く。
死ぬほどバカではない。死ぬまでバカなんだ。

この映画はバスターがなぜか観客に向かって話しかける。
カメラ目線になることも多い。
カメラ目線では6章でもあった。死神が、
「死にゆく人が(死を)理解していく過程を見るのが好きだ」
というところだ。その後彼の顔がアップされづける。
「(死についての)話を自分に当てはめるが自分は死なない」
たしかに死神は死なないだろう。
でも僕達人間は死ぬにも関わらず、他人の死を自分と関連付けはするが、自分の死については除外する。今生きてるから。
君も僕も死ぬ。それを冒頭と最後で突きつける。
「お前に言ってんだぞ」と。
他人はバカだから死んだわけではない。
僕らは生きてるからバカなことに気付いてないだけ。

馬車は止まらない。時間が止まらないように。
君も僕も、死ぬ間際に気付く。

あぁバカだった。

備忘録

死に至る病を持ち出したのは絶望が死に至る病なのに人間に絶望してそうなコーエン兄弟が死んでないから。別の理由を探してるんじゃね?と思ったから。
4章の人間が来ると動物が去っていき、人間が去ると戻ってくることをうまく言えないでいる。
楽園っぽい絵面、神の使いの鹿。豊かな土地で金を掘る。
3章、興行師にリーアム・ニーソンは面白い。慈悲深くも見えるし、薄情にも見える。
日本語訳が誤解を招きそう。5と6のタイトルは何とかできなかったのか。
混乱するギャルと致命的な残りって直訳だけど。6は自分が死んでると気付いてないのが致命的にって事?
混乱し続けてるから人に頼りづつける?
6章で馬車は止まらない。ほとんどの馬車は止まらない。時間は止まらないし。6章でなら最後の審判に向かう死者のいう事など聞くはずもない。


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