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介護映画「ブラック・フォン」ネタバレ考察

「この世の地獄や」

テレビで親が子を、子が親を傷つけた事件が流れると僕の婆ちゃんが叫ぶ。
婆ちゃんにとって現代の親は悪魔に見えるらしい。
そんな婆ちゃんは幼いころ水死体を見たことがあるそうだ。
時代なのか、メンタルケアもされず家に帰され親に言うと
「珍しいもんみたなぁ」で済まされたって話が好きだ。
もう一つの好きな話は婆ちゃんの父親が
「男は何があっても家族を守らんといかん」
が口癖なのにもかかわらず、40歳位で病死する話。
「昔から地獄やん」と思うと同時に、自分のひい爺ちゃんにちょっとだけ
「なにやってんだよ。大人だろ?」と思ってしまう。
そう言う僕も大人としてはかなりダメな部類だ。
立派な大人でいるのは難しい。立派な親なんてさらに難しい。

ペニーワイズ再来

映画「IT」でおなじみの有名なピエロのオバケ。
この映画はITのオマージュっていうか似てる所が多い。
口が裂けた様なマスクをつけて黒い風船を持ち笑う。
雨が降ったり、黄色いレインコート着てみたり。
意図的に「ペニーワイズと同類です」って伝えてくる。
ペニーワイズの正体は恐怖の象徴。狙うのは子供。糧は子供の恐怖心。
ITとこの映画のもう一つの共通点は「大人が役に立たない」ところだ。
両方とも子供が自力で解決してしまう。

この監督の他の作品で「フッテージ」と「NY心霊捜査官」っていうのがあってフッテージは殺人鬼役だったイーサン・ホークが小説書くために妻子を連れて事故物件に引っ越すって話。
NYの方は悪魔が存在していて親にとりつき子供を殺させる。
とにかく親が子供に危害を加える地獄が展開される。
フッテージでもこの映画でも親のふがいなさに憤るレビューがあった。
でも少し考えてほしい。君の親は立派だったのか?自分が親なら立派と言い切れるか?これからも立派でいられるか?もちろん僕は言えない。

愛の鞭

大体の場合、自分より若い子への説教の言い訳として使われる。
愛があるのは事実なのが厄介だ。
飲んだくれの父親はグウェンをベルトで叩く。殺人鬼も抜け出そうとした少年をベルトで叩こうと待ち受ける。
このベルト打ちって行為は海外では躾の一種とされてる。現代では虐待と認識されてる。
父親は何でもかんでも叩ているわけではない。夜更かしして占いに興じるグウェンを注意し、愛してると伝える。彼なりに親をやろうとしている。
殺人鬼のゲームは子供を守るために監禁してるという建前がある。
「守ってあげてるのに逃げようとする」から罰として叩く。
殺人鬼は言い訳として言ってるのか、気がふれてるのかはわからない。
ただ父親の虐待とダブるようにベルトを映す。

誰も子供を傷つけようとは思っていない。でも子供はたびたび犠牲になる。
人は長く生きるほどつらい経験をする。それが人を変えてしまう。
父親は妻が予知夢のせいで自殺したことで塞ぎこみ、グウェンにきつく当たる。
この子も同じ道をたどってしまうのではないかという心配が体罰に走らせる。魔が差すってやつ。NY心霊捜査官でも「弱ってる奴に悪魔は憑りつく」とか言ってた気がする。要は大人の弱さが過保護、過干渉に繋がり子供を傷つける。
親や社会が子供にできることは思ったより少ないのかもしれない。
この映画の子供たちは子供の世界で生き成長していく。

兄妹が何度も口にする「お父さんは任せろ」
父親は別にグウェンが友達の家に遊びに行くことを禁止してないから父の面倒を見ると言う意味合いだと推測できる。
これじゃ立場が逆だ。
地下室ではこれまで犠牲になった子供たちが自分の失敗を糧にフィニーを助ける。フィニーは子供の代表。子供は試行錯誤し大人を越えていく。
結果大人の力を借りることなく生還する。
父親は二人を抱きしめ何度も謝る。
映画だとよく見る光景でこれとって感動しないのに何故かしんみりした。
大人が子供にできることは躾でも監視でもなくそばにいてあげることだけ。そしてそれだけでいいのかもしれない。

備忘録

NYもフッテージも悪魔が出てきた。この映画とNYは神の力が出てくる。
神の力は現実を変えない。弱者を救う。この映画では死者。NYでは悪魔にとりつかれた大人。

プリズナーズって映画を思い出した。これも監禁と神の力が出てくる。

イーサンホークは大体の場合いい人役が多い。ストックホルムでも犯罪者だけどいい人。親役の時も根はいい人であることが多い。
それを殺人鬼役にすることに「意外性」以外の意図を感じる。

殺人鬼は顔を見られることを恐れる。ここがよくわからない。
彼も体罰を受けてたとか、何かヒントになりそうなものがない。

暗闇から出てきて暗闇に消えていく演出NY心霊捜査官でも多用してる。フッテージがどうだったか覚えてない。首吊りツリーしか思い出せない。

この記事の絵の兄妹がすき。
https://note.com/margaret_cinema/n/n5a1e5c3a57a8?sub_rt=share_pw

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