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気候変動の話 : サステナブルな変化に合意した社会をどうつくるか

サステナビリティという言葉には多様な意味やテーマが込められていて、地球に住むすべての人の合意した未来像というのがあるわけじゃない。とはいえ自分としては喫緊かつ重大性の大きい課題は気候変動だと思う。

世界には他にも多くのイシューがあるし課題意識もあるけれど、そもそも地球が人類にとって暮らしていける環境じゃなくなってしまっては元も子もない。そのリスクとして最も大きいのはどうやら気候変動で、人類は自らの行動の蓄積でそれを引き起こしている。そしてその変化は僕らの計り知れない遥か未来ではなく、この一世代の間に起きるらしい、という思いからだ。

2020~2021年の、COP26が開かれ、日本でも2050年までのカーボンニュートラルが宣言された勢いと比べると、今年の参院選では争点(≒ 各党・そして有権者のイシュー意識)としての気候変動は若干トーンダウンしたような印象を個人的には持っている。

実際に、日本人の環境問題・気候変動に対する意識は国際的に比べて低いらしい。

日本の消費者の環境意識は、さまざまな切り口で見ても、調査対象の新興国(インド・ブラジル・中国)や欧米と比べて低いことがわかりました。 日常生活における自分の行動が気候変動に与える影響について「いつも気にしている」と答えた人は調査対象11カ国中最低の10%でした。 日本の消費者は気候変動対策として消費を制限することに対して消極的であり、「気候変動に与える影響を減らすために、自分の消費を制限することができる」と回答した人は11カ国中最低の45%でした(他国はいずれも80%以上)。

https://www.bcg.com/ja-jp/publications/2021/understanding-a-sustainable-society-the-2021-consumer-awareness-survery-series
https://www.bcg.com/ja-jp/publications/2021/understanding-a-sustainable-society-the-2021-consumer-awareness-survery-series

国連開発計画とオックスフォード大の調査でも同じような傾向が見られる。特徴的だと感じるのが、気候変動を危機として認識している人は79%いるのに(調査対象国のなかで3位)、その内で「今すぐに必要な対策をすべて行うべき」と考える人は62%(調査対象国のなかで17位)に相対的に下がるという点だ。

https://www.undp.org/publications/peoples-climate-vote

つまりは「問題だとは知っているけれど、なんとなく自分の生きているうちは大丈夫なんじゃないか」または「自分たちが何かしたところで変えられることは無いんじゃないか」と考えているのがこの国の普通の人だということだろうか。(気持ちはとてもわかる。)

色々な本を読む限り、気候変動への対策は大きく3つある。

1つめが、活動における温室効果ガスの排出量を減らすか、排出してしまったものを吸収し、温暖化を抑制すること。2つめが、とは言え一定の平均気温上昇は起きてしまうことを想定して人類の生きる場所や生き方を適応させること。そして3つめはジオエンジニアリングや他の惑星への移住など、より抜本的な革新を目指すものだ。
それぞれについて、選択肢となる技術的・科学的なアプローチは色々と挙がっていて、研究も動き出している。それらを組み合わせて、必達目標の達成を何とか目指すことになるだろう。

一方で、そうした変化に伴って求められる行動変容について、人々がどう合意形成できるのか?も大きなテーマだと思う。サステナビリティを実現する手段が提示されるだけでなく、世界中の大多数の人が何らかの方法でそれに合意して、実際の行動を変える必要があるからだ。

歴史上の時代の変わり目を見ていくと、例えば産業革命は、みんなでせーので合意したわけではない。人々がより豊かな生活を求めて、イノベーションを起こした人物や国が経済的にも報われていった結果、革命と呼ばれるような変化が自発的に生まれていった。一方で今回の変化は短中期的には我慢やコスト増となるものもある。大きな痛みを回避するために中くらいの痛みを受け入れよう、ということなわけで、自然に起こすにはかなり難しい合意形成コストがかかるものだと思う。

では合意形成を妨げるものは何か?と考えると、①関心、②お金、③インセンティブの3つが出てくる。関心がなければ行動は起こさない。お金がかかるならばサステナブルな選択肢も選べない。インセンティブがなければ動機が続かない。少なくともこれら3つを越えていく必要があるだろう。

関心の問題については前述した調査の通りだ。もしかしたらトップダウン的に、政治家がルールを決めてくれればみんなが大人しく従う、という可能性もなきにしもあらずだが、ルールメイカーの動機は国民の課題意識に応えることだ。民主主義の構造上、まずは私たち皆の意識が変わらないとルールは作られない。

お金の問題については、ビルゲイツの書籍でも紹介されている”グリーンプレミアム”という概念で捉えるとわかりやすい。再生可能エネルギーや、電気自動車へのシフトは、化石燃料由来の選択肢と比べて高い。このコスト差をグリーンプレミアムと呼ぶ。経済的に自分の暮らしで精一杯という状態で、このグリーンプレミアムを払ってまで行動を変えるのは難しい。イノベーションによってサステナブルな選択肢のコストを下げる、あるいは政策等によって環境負荷の高い選択肢のコストを上げることで、このグリーンプレミアムを相対的に下げていくことが必要になる。

ちなみに、電通グローバル・ビジネス・センターの調査によれば、次世代につなぐよりも今の生活を守ることに精一杯だ、と答える人の割合は日本が最も多かった。(調査対象国は他に、ドイツ、イギリス、アメリカ、中国、インド、インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム。)

サステナブル・ライフスタイル意識調査2021

インセンティブの問題については、いろいろな設計の仕方がある。気候変動対策に具体的な行動をとることが自己肯定につながるというのも良いことだし、さらに社会的にも評価されるようになった方が良い。お金の問題とも連動するが、「経済的にも得をする」というのも重要かつ効果的なインセンティブだと思う。(以前のブログで得と徳を重ねる、というコンセプトを紹介した)

https://www.bcg.com/ja-jp/publications/2021/understanding-a-sustainable-society-the-2021-consumer-awareness-survery-series

①関心、②お金、③インセンティブの壁を越えて、持続可能なエネルギーや消費行動、ライフスタイルへのシフトに合意された社会をどうつくるかをテーマに継続して学び、考えていきたい。


参考リンク

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