見出し画像

「働きやすい職場」が「成果を出せる職場」という勘違い

今日は、「働きやすい職場」が「成果を出せる職場」なのか?
ということについて書いてみたいと思います。

私は介護事業の会社を10年経営しています。

これまで、とにかく「働きやすい職場」を作ろうと色々な目標や制度を作ってきました。

・有休取得率100%目標
・残業0時間目標
・週休3日制
・フレックスタイム制
・短時間正社員制度
などなど。

そのためか、社員から直接「働きやすいので助かっています」と言われたり、「働きやすい職場だよ」と友人に言っているといった話も聞くことが多いです。

ただ、今は、「働きやすい職場」=「成果を出す職場」かというと、そうではないと考えるようになりました。

働きやすい職場だとみんながヤル気になって成果を出しやすくなると思っていましたが、どうやらそうではないようです。


アメリカの臨床心理学者 フレデリック・ハーズバーグが提唱したモチベーションの要因には、「衛生要因」と「動機づけ要因」があります。

「衛生要因」:労働環境、労働条件、福利厚生、対人関係、賃金など
「動機づけ要因」:自分で決めることができる(任されている)環境、他者の役に立っているという実感、成長できている実感、チームで協働する楽しさなど

この要因から考えると、いわゆる「働きやすさ」は「衛生要因」であるといえます。

衛生要因でモチベーションを上げようとすると、一時的にはヤル気が高まるかもしれませんが、長続きしません。

衛生要因が一定水準を超えると、「あって当たり前」の状態になってしまい、モチベーションは上がらないのです。


とはいえ、働きやすい職場がダメということではなく、働きやすい職場環境があれば社員の離職率が低くなるメリットはあると思います。

ただ、「成果を出さない社員や問題社員も離職しない」というリスクをはらんでいます。

衛生要因だけが整っている職場は、いわゆる「ぬるい職場」であることが多いため、社員の居心地が良いので、「離職はしないが成果は出さない」という職場になりやすいのだと思います。


そして私はさらなる勘違いをしようとしていたのですが、インセンティブ制度の導入を考えていました。

インセンティブ制度を導入して社員同士で競う環境があれば、社員のヤル気が出るのではないかと考えていました。

インセンティブ制度は一定の条件下では成果につながることもあるかもしれませんが、中小企業が安易に導入すると失敗しやすいと考えています。

インセンティブ制度が有効に働くためには、以下のような条件が必要になってくるといわれています。

1.明確な目標設定:従業員が達成すべき具体的な目標が明確に設定されていることが重要です。これにより、インセンティブが与えられる理由とその基準がはっきりとします。
2.公平性と透明性:インセンティブ制度は公平であり、全ての従業員が制度の内容を理解し、受け入れられるものでなければなりません。また、どのようにしてインセンティブが計算され、配分されるのかが透明であることも重要です。
3.適切な報酬:インセンティブは十分な魅力があり、従業員が努力する価値があると感じるものでなければなりません。小さすぎるインセンティブではモチベーションの向上は見込めません。
4.達成可能性:設定された目標は現実的で達成可能なものでなければなりません。不可能に近い高い目標は従業員を落胆させ、逆効果になることがあります。
5.正しい振る舞いの促進:インセンティブが正しい行動や企業の長期的な目標と整合性を持つことが重要です。例えば、短期的な利益だけを追求させるようなインセンティブ設計は、組織全体の健全性を損なうことがあります。
6.定期的な評価とフィードバック:インセンティブ制度は定期的に見直しを行い、従業員からのフィードバックを取り入れて改善することが重要です。これにより、制度の効果を最大限に高め、従業員の満足度を保つことができます。

インセンティブ制度で社員同士が競う環境ができたとしても、それが会社全体にとって有効に働くのか?ということはよく考える必要があると思います。

特に医療・介護事業では、事業の性質からしても、医療・介護の専門資格を持った社員が受けてきた教育からしても、「競う」ということは馴染みにくく、真逆の「協働する」ということが必要になってきます。

安易なインセンティブ制度の導入が、この「協働する」ための下地を破壊してしまう大きなリスクをはらんでいると思います。


そういうことから、今は「動機づけ要因」によるモチベーション向上をメインに考えているところです。


以上、「働きやすい職場」が「成果を出せる職場」なのか?
ということについて書いてみました。


ここまでお読みいただき、どうもありがとうございました!

よければ「スキ」ボタンも押していただけると、今後の執筆の励みになりますので、よろしくお願いします!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?