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拝啓、教育担当様へ

もう社会人になって12年が経った。34歳の僕は、仲間たちとチームをつくりたくさんの素敵なスタッフや事業パートナーの皆さんに恵まれながら、日々、誰かの想いに寄り添いながらプロジェクトに立ち向かっている

思いも寄らぬキャリアの進み方であり、これからもまだ先がわからない。けれど、その獣道を歩んでいくための基礎体力、土壌、そして視座を教えてくれたのは、きっと社会人1年目の経験だったと思う

大学卒業後、個性的なメンバー(剣道日本一、ソフトテニス日本一、ホークスのハニーズメンバーなど)が揃い一丸となって目標に向かい、自分たちの限界に挑戦しながら日々楽しく働く人たち。そんなチームに配属された。15名ほどの部署、男性はトップのマネージャーと新人の僕だけ。他は、年上の女性の先輩方ばかりという環境。そこに2007年4月、3名の新人が入社した

仕事は企画営業で、商品は広告掲載による売上拡大、クライアントは民間運営のスクール業だった。まずは、商品に知識や社会人としてのマナーを覚え、業界のトレンドを理解するとともに仕事に慣れていくことが求められた。日々、先輩の営業への同行、時間が空いたときにはロールプレイングやテレアポを行い、経験しながらスキルを盗み、学んだ。そんな中、新人には教育担当がつけられていた

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もっとも過酷だったな(思えば最高の経験)と思うのが、毎朝、全メンバーが出社する前に、教育担当と新人でロールプレイングを行うこと。毎朝だ。あらゆる場面を想像してみたり、あらゆる相手のタイプを想像したり、ときには仕入れた情報や学んだ知識を話すことも求められながら、来る日も来る日もロープレをした。一人ひとりの提案に対して、教育担当が檄を飛ばしたり、優しくフォローしたり。おかげで実践と振り返りが常に行われた結果、提案力は日々向上していった。他部署からは「よくもまぁ毎日やるね」と言われながらも

また、新人といえど「目標数字」を持って営業をしていた。新人はクライアントがいないため、新規顧客を見つける必要がある。日々アポイントを取り付けたり、飛び込み営業をしながら街中を自転車で回る。チラシをポスティングしたり、冊子に名刺を挟んでメッセージを残したり、1時間後に戻ると聞けば近くで待機することもあった。そして、もちろんその行動や目標達成に対しても先輩が責任を持ちフォローしてくれていた。そんな毎日だったけれど日々の成長に面白さを感じ、それを楽しめるチームの雰囲気だったからこそモチベーションを保ち働けていたと思う。しかし

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そんな自分にも、入社し10ヶ月経ったときにある事が起こった。それは、仕事を続けるのが嫌になったのだ。数日は悩みながらも仕事を続けてはいたけれど、ある日、夕方の公園のベンチで座り込み会社携帯に文字を打ち込み、先輩方に「もう限界です」とメールしたことを覚えている。その理由は、自身が後から入社したメンバーの教育担当に疲れたためだった

自身の目標もありながら、新人の教育をやりつつ目標も達成させる。新人の営業についていけば、自分の時間がなくなるのは当たり前。そんな中、どちらも達成が難しい状況が続き「どうしてこんなにも、僕がやらないといけないんだ」という気持ちと「みんなに迷惑をかけている」という申し訳なさに、辛くなったのだった

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そんなメールを送った直後、秒で(本当に数秒で)電話が鳴った。先輩からだった。一言目に「いま、どこにいるの?」と。そして、カフェで待ち合わせることに。カフェに向かう時間には「忙しいのに、申し訳ない」と、さらに迷惑をかけてしまっていて辛い気持ちになっていた。

数分後にカフェで出会うと「がっしーどうしたー?」と声をかけられ、涙が出ていた。そこから、仕事が大変なこと、行き詰まっていること、教育担当を負担に感じていることなど、いろんな話をただ聞いてもらった。ひとしきり、状況を伝えた後に先輩から言われたことは「いやー、私も同じだったよ」という言葉だった。

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思えば、先輩は教育担当として、社会人として右も左もわかっていないし、会社のメンバーとしてもひよっこな新人の面倒をみてくれていた。そこでは、僕らはただただ自分のことばかりを考えていたけれど、先輩はこの苦しさや辛さを味わいながらも、僕らに向き合い、熱心にサポートしてくれていたということに、恥ずかしながらその時に気づいた。だからこそ「そういう大変なのはね、言ってくれたらいいんだよ」と言ってくれた。そうこう話していると、他の先輩方もやってきて「もう、今日はこのまま直帰で飲みに行こう」と誘い出してくれたのが、その日の出来事だった

数年後、そんな先輩も会社を卒業する時がきて(その会社では、期限付きの雇用形態があり退職する人を卒業と呼ぶ)、メッセージをもらった。そこには「あんたが一番大変だった」と書いてあった。ごもっともだと思った。そして「一番期待していたから」とも書いてあって。そうだったんだと思って嬉しくなった。そんな先輩の好きな言葉の1つが、今でも僕が大切にしている言葉の1つとしてある

「桜梅桃李(おうばいとうり)」
桜は桜らしく、梅は梅らしく、桃は桃らしく、李は李らしく
あなたは、 あなたらしく。それぞれが独自の花を咲かせること。

社会人1年目。多くの経験と失敗と、そして喜びに出会った1年だったと振り返れば思うけれど、やはり社会に出て最初にできた先輩であり、教育担当だった飛永布美香さんとの出会いが、何よりも大切な思い出であり縁だった

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#社会人1年目の私へ
今、あなたの先輩は本当に大切なことを教えてくれる人であり、あなたのいるチームはあなたが今後つくっていきたいと思うチームの礎です。12年後、リクルートで過ごした縁が色んなところでも繋がります。だから、10ヶ月目に辞めないで笑。まずは「周りに相談してみる」ことに、慣れてみようね。

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