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【書評】名画の読み方

こんな経験ないですか?

大学生の頃,卒業旅行であり金はたいてバルセロナ・パリ・ローマの旅に出かけた。その際,当時改装されたばかりのルーヴル美術館とオルセー美術館に行った。

名画がいっぱい。。圧倒的な迫力に立ちすくんだ。1日いても見終わることのないくらいの展示数だった。

一枚一枚,巨匠たちの絵と対峙する。
めっちゃ上手い・・!

しかし,上手いこと以上何をどう他の人は読み取っているのかわからなかった。
せっかくの美術館なのに,美しさ以外に読み取る術のない自分が恥ずかしかった。
気がついたら,一枚一枚に対峙する時間は少なくなり,気がついたらどんどん素通りしてしまっていた。
風景画や静物画だけはじっくり見た。

って,こんな経験ないでしょうか?
そうかもな。って思った全ての方に送るべき本がこの,「名画の読み方」です。

決して「名画の見方」ではないってところがポイント。
この本の魅力を紹介します。

「絵画は見るものではなく読むもの」

この本の冒頭部分で木村先生がきっぱり断言されています。
そう,絵画は感じるものではなく,読み取るものなのだということを。
読み取るには,読み手にそれなりの教養が必要だということ。

確かに,訳ありげに髑髏が描かれていたり,謎に女性が裸だったり,羽の生えた天使らしき人がやたらといたり,なんだこれ?っていう理解不能な絵画が多い。
写真やネットのなかった時代は,いわば絵画は新聞のような情報伝達ツールだったのです。

美しさ以外の情報,つまり,絵画に描かれているテーマやメッセージを正確に読み解くには,
その絵が
どの時代に描かれたのか
どの国で描かれたものなのか
5つのジャンル(歴史画・肖像画・風俗画・風景画・静物画)のうちどのジャンルのものなのか

まずはこれを読み取り,絵に描かれているアイテムなどから情報を読み取る必要があるということです。
これらをジャンルごとに解説しているのがこの本という訳です。

ここからは,自分なりの気づきをまとめます。
なぜ文字ではなく絵画で伝達したのか
絵画は,文字を読めない時代,キリスト教の歴史をわかりやすく民衆に伝える目的で使われて発達したから。
そのため,現代では,情報ツールとして,文字やパワーポイント などのスライド,漫画やイラストなどがあるが,さしずめ,文字なしの漫画やイラストで伝えようとするようなものだろう。

なぜ教養が必要なのか
現代美術は,芸術そのものを堪能すれば良いが,19世紀初頭までの画家は,王族,貴族,市民階級に雇われて描いていた。したがって,好き勝手に芸術を追求する訳にはいかず,雇い主のニーズに合わせて描く必要があった。
つまり,つい最近まで,絵画は上流階級による上流階級のためのものだったのだ。
したがって,絵画を正確に読み解くには,上流階級としての素養である歴史や宗教の知識が求められるのである。

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