仮面の力(3) 1 仮面の起源

 1 仮面の起源

 日本語の仮面、面を意味する英語はMaskにあたる。「浮かれ騒ぐ」「冗談」を意味し、同時に仮面を着けた人や仮面自体も指し示す。しかし、語源ははっきりしない。佐原真の解説によると、エジプトの中王朝では皮革・第二の皮膚のことをmskと呼び、これがアラビア語のmsrとなり、エジプト化していること、古代エジプト人のようなお面をつける意味になった。(*1) そしてこれから、アラビア語の「嘲り笑い」とか道化師を意味するmaskhara(マスクハラ)が生まれ、「偽る」、動物、化け物(モンスター)、変わった姿(フリーク)に変容するという意味になる。それが早い時期にイタリア語に借用され、maschera(マスケラ)になり、16世紀にアルプス山脈を越え、英語のmaskになったらしい。そして17世紀にフランスからドイツにも伝わりmaske(マスケ)(当時はmasqueとかいた)自らを隠すためのものという意味になった。もちろんマスクという言葉の伝わる前に、ヨーロッパにも仮面そのものは存在していた。
 ドイツ語圏のアルプス地帯と南西ドイツでは木製の仮面をLarve(ラルフェ)(幼虫、妖怪)と呼び、他にはMasche(マッシュ)(網目)が仮面を意味する言葉として用いられた。なぜ〈網目〉なのか。この語はランバルト語mascaから由来し、本来は死者を包む網を意味したと考えられている。この南西ドイツに住んだアレマン人は、墓の下に網を張りめぐらして、死霊が出てこないようにした。Mascaは「死者を包む網」が「この世にかえってくる死者、幽霊、悪霊」という意味を持つようになり、さらに「網で顔を覆うもの、仮装した人、仮面」をあらわすようになったという。(*2)




*1 佐藤真  「総論ーお面の考古学」『仮面ーそのパワーとメッセージ』
        里山出版 2002年

*2 勝又陽子 「ヴェネツィアー華麗なる仮面の祝祭」『仮面ーそのパワーと       メッセージ』
        里山出版 2002年

 

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