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【#シロクマ文芸部】桜色のさくらんぼ

 桜色のさくらんぼは市場でも滅多に出回らないほど希少価値のある果物だ。
 それを食べると初恋が実るという都市伝説がある。
 私はその噂を真実として受け止め、飛行機を三回乗り換えて、とある国にやってきた。
 ジャングルの奥地を抜け、沼で身動きできないほど泥濘ぬかるんだ道を突き進むこと九時間、ついに見つけた。
 私はこれを日本に持ち帰ろうとしたが、空港の検査に引っかかって没収されてしまった。
 仕方なくもう一度行って、今度はその場で食べてみた。
 ごく普通のさくらんぼだった。
 だが、食べる事ができたので、私はすぐに日本に戻った。
 空港着いてすぐにタクシーに乗り、そのまま学校に向かった。
 運賃を払って一目散に教室に行き、彼を待った。
 チャイムが鳴り、入ってきたのはお目当てのサッカー部の彼だ。
 私が幼少期の頃からずっと片想いをしている人だ。
 私は「コウタくん!」と言って近づく。
 彼は目を丸くしたまま立っていた。
「ずっと前から気好きでした! 付き合ってください!」
 さぁ、どうなる?
 桜色のさくらんぼを食べたんだ。
 成就しないなんてありえない。
 そう願いながら返事を待っていると、彼は顔を真っ赤にして言った。
「ごめん。俺、彼女いるから」
 その言葉を聞いた途端、私のお腹や腸に蛇でも入っているのかと思うくらい激痛が襲いかかってきた。

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