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もう一生会わない人の人生。

タクシーの運転手と話すことが好きだ。

多分、このタクシーを降りたら一生会わないんだろうけど、
タクシーという2人だけの空間、妙に落ち着く運転手さんの低くて渋い声、目を合わさずになんとなく外の風景を見ながら声だけ交わすあの感じ、なんか本音に慣れちゃう気がするんだ。

後は単純にタクシーに乗る時なんて大抵酔っ払ってるからだ。



そういえば学生の頃、モスバーガーでバイトしてた時に
店長のミスで商品の入れ間違いがあり、わたしがタクシーでお客さんのところまで届けに行ったことがあった。
目的地に着いて、「すぐ戻るので待っててもらえますか?」と3分くらい待っててもらって、またお店まで送ってもらって。

「今後一生会わない人」に異常なコミュニケーション能力を発揮するわたし、

「店長のミスなのになんでわたしが謝らないといけないんですかねー!!」
と、運転手のおじさんに話しかけた。
「あはは、大変ですね。」
と笑ってくれるおじさん。

「モスバーガーといえば僕は、ホットドッグが好きですよ。」
「えー運転手さんツウですね〜!!ホットドッグ、常連の人とかに結構人気なんですよ。ソーセージパリッとしてて美味しいですよね〜あれ、温度管理とかめっっちゃちゃんとやってるんで。バンズも注文受けてから1回1回焼いてるし…」

「お姉さんと話してたら久しぶりに食べたくなってきたな。お金渡すからお店着いたらホットドッグ1個買ってきてもらえる?」

なんて営業をかましたこともあった。


話は逸れたが先日タクシーに乗っていた時の話。
終電はあったが一刻も早く寝たかったので少しの距離だけタクシーを使った。

相変わらず異常なコミュニケーション能力を発揮し、仲良く喋っていると、

「いやあ私、この仕事就いてまだ3ヶ月なんですけど、運の良いことに嫌なお客さん載せたことないんですよねぇ。」

とポツリ。新米ドライバーさんだった。

そのおじさん、

千葉県庁→長野市役所→建築系の営業→なんか(忘れた)→佐川急便→Amazonの倉庫管理系→タクシー運転手と

なんと6回も転職をしていた。

「凄いですね…!お仕事されながら転職するのって、大変ですよね!」


「いやぁ、自分には何にも向いてないんじゃいなかって思いましたよ。何やってもダメなのかなってね。
でも、こうやって思い返してみると、お陰で苦手なことが無くなりましたよ。」


嫌なこと、向いてないこと、苦手なこと、様々な業界・職種を経験している人生の先輩が、
転職を繰り返すことを、「苦手なことが無くなっていく」と捉えているの、
なんだかとても良いなぁと

少しアルコールが回る後部座席でつくづく思ったわけです。



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