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日本にはないサンパウロの車内放送

ブラジルの都市、サンパウロは、電車が整っており、120円で、地下鉄も電車も乗り放題だ。ただ、いつも、ある車内放送が流れ、なんだか私はもやもやしてしまう。

サンパウロは発展した都市で、ビルが立ち並ぶオフィス街や、大きなショッピングモールも多いのだが、貧富の差が激しい。電車内にもそれは表れている。車内に貧しい、物売りの人達がいるのだ。お菓子や水、イヤホン、充電器、パスポートケースなどなど、色々なものを両手に持って電車内を回っていく。そして車両ごとに立ち止まって、声を張り上げて宣伝。
「仕事終わりに、空いた小腹にチョコレート。2つで120円、2つで120円!アーモンド入りの美味しいチョコレート!」
という風に。

その物売りたちの多くは男の人で、褐色系の肌に薄汚れた短パン、ビーサンという出で立ちの人をよく見る。多いときは、列をなして電車内を回っていくこともある。

しかし、この物売りは正規の職ではない。違法であり、禁止されているのだ。だから警察が来ると皆一斉に逃げる。それでもその目をかいくぐって、売り続ける人はいっこうに減らない。

そこで、いつも流れる車内放送がこれ。
「本日もご利用ありがとうございます。車内で物売りから物を買うことはおやめください。」
日本ではまず聞かないだろう。初めて聞いたとき驚いた。

私は、彼らから何か買ったことはない。でも、客の数が少ないときなどに彼らが回ってくると、正直、怖い。声をかけられたらどうしよう、買うのを断ったら、食ってかかってきたりしないだろうか…。
とりあえず、いつも目を合わせないようにしてしまう。

だから、決して、物売りを応援しようと思っているわけではない。
でも、彼らはどうしてそこまでして、車内で売ろうとするのか考えるといつも、もやもやする。警察に捕まるかもしれないし、車内で買う人の数もそこまでいるわけではない。お菓子など、そもそも単価が安く、そこまで儲かるとは思えない。楽ではない商売のはずだ。

もしかしたら、正規の職につけなくて、こうせざるを得ないのではないか。わざわざ警察が電車に乗り込んだり、車内放送を流してまで、禁止する必要はあるのか。客は車内で物が買え、物売りは儲けられて、特に問題を起こさなければ良いのではないか。彼らは一生こうやって生計を立てていけるのか。私が何か買えば、生活の足しになるかもしれない。

いや、でも、日本人の感覚で言えば、お菓子などの品質は大丈夫なのだろうか。イヤホンや充電器なども、もしかしたら全く使えないものかもしれないが、後で気づいても誰も補償などしてくれないだろう。そもそも、混んでいる電車の中で人をかき分け、大声で宣伝しながら歩き回られて、迷惑でもある。


日本に帰ってきて日本の電車に乗りながら、そんなことを思い出して、またもやもや。禁止する側にも、逃げ回る側にも付けない。

物売りの中には私と同い年ぐらいの人もいたなあ…。

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