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「美味しければ集客できる」は幻想だ

舞台が飲食店に設定された昭和平成のドラマとかではたまに、

真面目にうめぇもん作ってりゃ、ちゃんとお客さんはわかってくれるんだっ

と啖呵をきる、一本気な店主が登場します。

もちろん客はわかる。
その美味しさと労力、店主の情熱と愛を。
しかし、そのシチュエーションというのは、
今も生きているのでしょうか。
個人的には
周りの人間がまだ雑誌やテレビ、口コミを素直に信じ、
辛口の常連さんでも、とにかく頻繁に店に顔を出してくれる、
そんな、人との距離感が近い環境下で発揮されるものではないかと思うようになりました。

だって今や、時は令和。
「ずっと変わらない本質がある」というのはもっともな話ですが
その一方で、レストランの形態は日々、刻々と変化しています。
私は職業柄、新しくオープンしたレストランをご紹介することも多いのですが、
その後数年で閉店する店の多いこと………。
メディアもその一端に加担しているんじゃないかと思うと、さらにやりきれません。

最近、仕事で新しいWEBサイトの制作に関わったのですが、
当初、思うようにPVが取れない状況にイラついていた我らに対し
デジタルディレクターが言ったセリフが

「どんなにいいWEBサイトを作っても、
今の状況はいわば

ド田舎の裏通りにイケてるレストランを作って客を待ってる

に等しいんです」。

わー!
これ、WEBだけでなくすべてに通用するセオリーだと感動しました。

どんなにいい料理を出してても
どんなに素敵なアイテムを発売しても
どんなに頑張って努力していても

今という時代は、それを見知らぬ誰かに届ける“戦略”を添えないと
ただの独りよがりにしかなりません。

なので私は、
「人生これ営業」と考えるようになりました。
編集者だけど、営業。自宅でも家族に営業。
熱い思いや成果はわかりやすいものですが、
それらが勝手に、真価やストーリーまでを世に伝えてくれると思うのは甘え、なのだと。

俺が作る最高にうめぇもんを
まずはその辺の奴らに何も言わずに食わしてやれ。
目を丸くした奴らがまた食いたいと言ったら
今度は、物書きやよその料理人も呼んで食わしてやれ。
記事にしたいとかコラボしたいとか言ってきたら
今度は…………

冒頭の店主を令和テイストにしてみたら
きっとこんな感じ。

「素敵なもの」と「届ける工夫」は、今後きっと、二人三脚が基本になる。

新しいものを作るとき、ちょっと思い出していただけたらうれしいです。

#レストラン #料理 #マーケティング #令和時代にやりたいこと


フードトレンドのエディター・ディレクター。 「美味しいもの」の裏や周りにくっついているストーリーや“事情”を読み解き、お伝えしたいと思っています。