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「SNSは多重人格」で得たもの

来週、私の本が出ます。

料理家でもないのにお恥ずかしい限りですが、ここ数年、インスタグラムで投稿してきたアレンジトーストの中から118点を選び、
新たに編集を加えて書籍化したものです。
『世界一かんたんに人を幸せにする食べ物、それはトースト』
長い書籍名で恐縮です。サンマーク出版刊です。……もしよかったらご笑覧ください。ほんと、恥ずかしい。

ご担当くださった編集者は、サンマーク出版の実力派、池田るり子さん。
彼女は昔からの飲み友達で、正直、ミリオンセラーを手がけるようなやり手だとは知りませんでした。
コロナ禍でクサクサしていた夏の日、るり子さんからLINEが入り、

ねぇねぇ繭子さん、本出さない? インスタのトースト画像って全部保存してる?

というから、うんあるよと答えたら

ねぇねぇ繭子さん、新規撮影もライターもナシで作れちゃうんだよ。良くない?

と。
続いてるり子さんは、
ど素人ながらも、私のトーストは素人でも真似しやすくて有用だとか、淡々とした文章も今どきぽいし、だいたい本業は文章のプロなんだからきっと読んでもらえるよとか、とにかくベタ褒めしてくれました。

それで決断してしまう私も私ですが、

書籍を出す

という作業を一度経験してみたくて、お受けしてしまったのでした。
長い間、雑誌編集者として生きてきた私にとって、書籍は別世界です。
そして、ミリオンセラーを手がけるベテラン編集者とは、いったいどんな仕事をしているんだろう?というのにも、好奇心をくすぐられたのでした。

よく、書籍を出すにあたっては、例えば小説とかそんな類いだと、

子を産むように大変だった

などと語る作家がいますが、私の場合は逆でした。
いえ、楽々カンタンだったとは言いませんが、とにかく楽しかった!
理由は担当編集のるり子さんです。こんなに人をうまく使ってくれる人、初めて出会いました。
それでいてこの仕事中、「飲み友達のるり子」は影を消していました。
常に私をおだて、やる気をくすぐり、ダメなものはダメと言い、時に方向修正し、
なによりもうれしかったのは、いつも私以上のやる気を見せてくださることでした。
編集者によって、著者のテンションとかパフォーマンスって変わるんだろうなぁというのが心から実感できた、素晴らしい体験でした。

超絶楽しいアトラクションに乗り続けていたかのような数ヶ月が過ぎ、あっという間に本は完成。
元はインスタグラムから始まった本ですが、実はSNSのことは、照れ臭くて今も家族には内緒です。
でも、この本が書店に並ぶ頃には、白状しなくてはなぁと今からドキドキしています。

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ところで、みなさんはSNSをやっていますか?
私は、インスタグラム、フェイスブック、ツイッター、ピンタレスト、リンクトイン、そしてnoteを使っています。
多い!と思われるかもしれませんが、この中で常時稼働しているのは、インスタとフェイスブック、noteくらいでしょうか。
そしてこれらすべてで、テーマは食でありながら、テンポやノリ、語りかける対象の方々に合わせて口調なんかも若干変えています。

そんな面倒くさいことを、とおっしゃる方もいるかもしれませんね。私は逆に、そうでもしないと自分の中の均衡が図れないと考えています。
インスタとフェイスブックは連動投稿ができるので、便利な機能としてお使いの方も多いかと思います。
が、私の場合、すべてのSNSは仕事のツールであり、情報収集の場であり、ビジネスを中心とするコミュニケーションの場であり続けました。
たぶん、始めたきっかけも、「雑誌のタイアップ記事を手掛ける際に、SNSをわかっていないと仕事にならない」という理由があって、
仕方なく始めたという感じだったのです。
そして、純粋なコミュニケーションツールとして使えるフェイスブックはともかくとして、インスタやnoteなどは

投稿テーマがないと、なんもアップできない!

という重要な問題があります。

なので、
インスタのテーマは「毎日必ずやることといえば、朝ごはんくらいか……」という理由でトーストに、
noteは、飲食に関わるディレクターとして感じることを真面目に描いていこうと思ったわけです。

プライベートの友人が私のインスタを見ると
大のお酒好きなのにぶりっ子して!
と言うし、
私のnoteをご覧になったインスタのフォロワーさんからは
別人!真面目!驚きました!
とも言われました。

朝のトーストやニューオープンの店、かわいい新製品を投稿するインスタと
「食と働く」をテーマに毎回2000字くらい書いちゃうnoteとでは、確かに別人のようです。
これを、八方美人というか、多重人格と呼ぶか、自分では分かりませんが
個人の理由としては

書き分けは必然

でもあります。
すべて私の一部分であり、真実でもあり、
さらに家に帰れば、関西弁でつぶやきながら下手くそな家事や料理にモタモタしている自分もいる。
いろんな場所で、いろんな自分が分業して、「私」というパーソナリティーを形成しているんだと思うことで、
一つの方向に向かってひた走るような努力は不要になりました。楽です。

SNSで無理をすることに疲れている方や、
自分のプレゼンスを高めて仕事を得ようと思っている方に、
「SNSの多重人格化」って楽だよ
と伝えたいなと、ふと思った次第です。

#食の仕事 #言葉の仕事 #SNS #COMEMO

フードトレンドのエディター・ディレクター。 「美味しいもの」の裏や周りにくっついているストーリーや“事情”を読み解き、お伝えしたいと思っています。