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「料理が義務」でなくなる日

「料理研究家」を英語では何というか?
答えは「chef(シェフ)」です。

cooking expertとか、
home cooking professional とか、
文字ヅラ的にはそんな雰囲気を感じますが
ただシンプルに、シェフ。以上。
海外の友人何人かに聞いたところ皆同じ解答だったので、
おそらく本当にそうなのでしょう。

日本にはたくさん、有名無名の「料理研究家」がいます。
テレビや雑誌でよく見かけるエプロン姿のマダムたち。
季節の食材を使って、意外性がありながら家族に喜ばれる美味しい時短料理を教えてくれる、ありがたい存在。
書店の料理本コーナーに並ぶレシピの数って
いったいどのくらいになるんでしょう。

しかし最近、思うのです。

この状況、海外と日本で少し違うんじゃ?

きっかけは海外の料理番組でした。
米国のマーサ・スチュワートも、
英国「ブリティッシュ・ベイクオフ」のメアリー・ベリーも、
番組内で伝える料理は、日本のそれと比べて、ものすごく難易度の高いものばかり。
食材だって、本格的なスパイスからハーブまで多用しており、
「こんなレシピ、日本の雑誌で紹介しても誰も作ってくれないよ……」
と感じることもしばしばです。
あれって、一般的なんでしょうか?

誤解のないように申し上げると、
私は、日本の料理研究家がチープだと言いたいのではありません。
編集者である私も一緒になって、
「簡単、便利、安価で映える」をキーワードにした料理を推進してきたんですもん。

しかし、その先にあった無意識の目的を考えた時にハッとしました。
日本ではまだまだ、

料理は義務

という人が大多数だから、料理研究家たちはそれに応えようとしているんだ、と。
三食作って家族に食べてもらって
健康も満足感も満たさねば、
という重責を担う女性が多いからこそ、
海外とは少々ノリの違う料理研究家が台頭し、
一生懸命、ちまたの人々の悩みを解消するレシピを研究し続けているのではないかと。

「マンマの味」が尊ばれるイタリアなどでも似たような状況がありそうですが、
例えば、パリで長年料理教室を営む友人いわく、
生徒は女性よりも若い男性の方が多いという。
ロッテルダムのオランダ人男性に嫁いだ友人は、
旦那さんが作るメアリー・ベリーばりの料理を頻繁にSNSに投稿している……。
海外の男性がマメなわけじゃない。

料理が義務なんかではなく、
男女問わない高尚な趣味として捉えられている

からこそなんではないでしょうか? 違う?
もしくはバンコクや北京の街角のように、
至るところで安くて栄養価の高い食事が手に入り、
そこで食事を済ませるからといって
誰も後ろ指などさされないからこそ、
料理が「趣味」に成り得たのか。

人間は食べなければ生きていけません。
どんな不味いものだろうと、最高の手料理だろうと、
口に入れば、体は健気にそこから栄養素を摂取しようとします。
どうせ向かい合わなければならない生理に対し、
男も女も、老いも若きも、
もっと積極的になったっていいと思うし、
それらが不得手な場合、お金を使ったり他人と共同して料理するなど、別の方法を考えたってまったく構わないと思います。

料理が義務でなくなる日。

が実現したら、割とイケてる未来なのではないでしょうか。

#フード #令和元年にやりたいこと #料理

フードトレンドのエディター・ディレクター。 「美味しいもの」の裏や周りにくっついているストーリーや“事情”を読み解き、お伝えしたいと思っています。