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『スローターハウス5 』カート・ヴォネガット・ジュニア

急に寒くなってしまったので、読書の秋というものを味わい損ねた感じなのですが、最近読んだ本。

『スローターハウス5 』(屠殺場5号)
カート・ヴォネガット・ジュニア 
伊藤典夫・訳

村上春樹が影響を受けた作家だということと、戦争実体験を書いたSF小説、というところが気になって手に取りました。

独特の、ちょっとへんちくりんな文体がよかった。翻訳あるあるだとおもうのですが、なかなかスルスルとは読めなかったです。海外ならではの独特のユーモアが時々ついていけなかったり。でも読み終わる頃にはその「クセ」に愛着が湧いている。そんな読後感でした。

カート・ヴォネガットは第二次世界大戦でドレスデン爆撃を経験しています。

第二次世界大戦中、アメリカ人捕虜としてドイツ東部にいた主人公ビリー(=筆者)は、その時に友軍、英米軍からの大量無差別爆撃(通常爆弾の大空襲)にあう。
様々な理由で亡くなる友人、精神を病む仲間、まるで月面のように何もかもが無い光景。
清潔さも、文化の潤いも、優しさも、皆無の日々。

というのは、ここに登場する人びとの大部分が病んでおり、また得体の知れぬ巨大な力に翻弄される無気力な人形にすぎないからである。いずれにせよ戦争とは、人びとから人間としての性格を奪うことなのだ。

そのままを淡々と語るには地獄すぎる光景・事実。それを最後まで読めたのは
「人生の時間をいったりきたり時間旅行する」「宇宙人に連れ去られて別の星にいく」など、SF的でエンタメ的なシーンへの切り替わりがしょっちゅうあったおかげだなと。

あと主人公が、地獄の中にいても平和の中にいても、運命に対して一貫して「そういうものだ」を連発するんですが、こういう諦念的なキャラの視点を通して読めたおかげもある。

自国の世界史の教科書で太字になっていること以外にも、知らないところで同じくらいの悲惨なことがあった、ということを忘れないようにしたいです。


読んでいただきありがとうございます。

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