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妻の面談

わが家はカレンダーアプリを使って夫婦でスケジュールを共有しているのだが、昨夜ふと見知らぬ「面談」という妻の予定が入っているのに気がついた。

面談?こどもの小学校か幼稚園か面談があるって言ってたっけ?いまいちピンとこず、妻に尋ねてみたところ「ああ、これね……」と言って神妙な顔でソファーの隣に座ってきた。

「あのさ、怒らないで聞いてくれる?」

ザワ……ザワザワ……なんだろうこの嫌な予感は。いよいよ私に愛想がつきて然るべき機関に相談するのか?私が福岡に移住しようと言って家庭を振り回したからか?それとも引越しの荷造りを妻にほぼ丸投げしてしまったからか?いかん思い当たるところが多すぎるぞ…。

恐る恐る聞いてみると、妻は「占星術の占いを予約したの」と言った。え、占星術?星の位置がどうこうというやつ?聞くと妻もまだ詳しいわけではなさそうだったが、編み物界隈で妻が尊敬する人がインスタライブで話していて興味を持ったらしい。元々引っ込み思案だったその人は占星術の占いで「人前で話すことに向いています」と言われたことで背中を押され、編み物講師をやってみるきっかけになったのだという。

だから妻も自分がどういう星の下に生まれて、どんな向き不向きがあるかを知りたいということだった。妻も今回の移住で一旦専業主婦になったことだし、これからの生き方を考えるのにいい機会だろう。いいんじゃない?おもしろそう!と言ったら、妻は安心したようだった。そしてそのオンライン面談にいいスニーカーが買えそうな値段がしたことには目をつぶった。私も失敗写真にお金をかけて人のことを言えないし、なにより妻には「イエス」か「はい」しか言わないと決めたのだ。

あと占星術の占いでは、私の情報も渡すと夫婦の相性までも鑑定してもらえるらしい。私たち相性悪かったらどうしようか、などと妻がニヤニヤと言ってくる。おい…やめてくれ。こっちは引越しで迷惑をかけて一旦離れた妻との距離を週末に家事したり朝から次女の幼稚園のお弁当を作ったりしてようやくまた妻の心の岸辺あたりまでたどり着いたような気がしているんだ。

それを「相性悪い」とか言われたらまた遠のいてしまうじゃないか!おい占い師!ちゃんとそこんところわかってるのか?相性いいように言うんだぞ!「あなたにとって旦那様は太陽のように必要な存在です」とか言ってくれ!わかったら銀行口座を教えてください何卒お願いしますちょっと多めに入れとくんで…。

ということで、妻の占いがどうなるか怖くて震えている夜である。後編へ続くかはわからない。

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