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たった一人で扉を開ける(2)

「人類は未来にタイムトラベルを実現させるのではないか。」歴史の中には、そう思わずにはいられないほどの異常人が何人か登場します。ロシアのピョートル大帝、清の康熙帝、アイユーブ朝のサラディンなど、驚異のマルチタレントで時代を一気に進める様は未来を知っているもののようです。
日本史においてはひとり、織田信長で、その意識を伺うにあまりに現代人に近い。
桶狭間の戦いや長篠の戦いが有名ですが、戦国武将などは彼の一面で、「天下布武」(天下に武を布く)を合言葉にしておきながら、前述のように経済面の支配力を先行させたことでもわかるとおり、彼は時代の改革者というべき人間でした。
兵農分離を実施。それまで田植えと収穫の時期には動けなかった“武士”をサラリーで雇い、年中戦争できる軍団を作り、日本に古くから根づく宗教勢力と戦争を起こし、仏教の対抗勢力としてキリスト教を後押しする一方、比叡山、一向宗をメタメタに虐殺します。さらに、室町将軍の権威などは歯牙にもかけず、かついでおいて用済みとなるとぽいと捨てちゃいます。
◆参照「宗教改革」:

https://note.com/mazetaro/n/ndc928d07063


つまり彼は実体のない権威をふりかざすものが大嫌いだったんですね。彼の戦争は既存の権威との戦争だった。
結果として彼が打ち砕いたものは中世そのもので、怨霊や迷信や占いや作法から、政治を分離させることに成功します。
その間、参謀や軍師なんていう人は織田家には存在しません。彼の最も優秀な生徒が木下藤吉郎だっただけです。
織田信長はたった一人で「近世」という時代の扉を開いたのです。

織田信長自画像・・・当時としては非常に珍しい写実的な画法で描かれた似顔絵なだけに、本物かどうか議論が分かれているようですね。僕は本物を描いた絵だと思いますね。


彼の若い頃の話があって、
尾張にある池に巨大な鯉がいるという伝説があったそうです。いわゆる“ヌシ”というやつで、どこの地方にもそういう話がまことしやかにありますよね。信長はそれを聞くと家来や地域の人に命じて池の水を全部出しちゃって、周りがあっけにとられる中「それ見ろ!ヌシなどはおらん」と叫んだとか、、。
大人気ない話ですが、その後「怨霊なんているわけないだろ」と仏教勢力をことごとく葬る姿をみるとわかる気がします。


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