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資金調達(ファイナンス)で、私が最も大切にしていること

物事の本質を見極めて行動することが大切で、経営においてそれを実現するためには、キャッシュに余裕を持つこと、つまり資金調達(ファイナンス)に関する知識が不可欠であると以前の記事で書きました。今回は、私が資金調達について日々考えていることを書いてみたいと思います。

先日も記事に取り上げさせていただいた稲盛和夫さんの言葉に「土俵の真ん中で相撲を取る」というものがあります。これはイメージがしやすいと思うのですが、土俵の真ん中が土俵際だと思って仕事に取り組めば、万が一何か不測の事態が起こっても対応することができるということです。土俵際に押し込められた状態では、打つ手は限られてしまいますし、気持ちに余裕がない状態だと判断を誤ってしまうこともあります。

松下幸之助さんは「ダム式経営」という表現を使っています。
ダムの一つの役割として、貯めておいた水を少雨の際の水不足などに利用する「利水」があります。経営においても、キャッシュを潤沢に持っておくことで、万が一の場合に対応することができ、企業として安定した価値提供が行えるのだということです。

この重要さに気づいたのは、ストリートスマートを創業する前に勤めていた会社での経験があります。上場を目指していた中で、会計基準変更の影響を大きく受け、一時的に赤字になりましたが、その後、事業転換に成功し、会社はいまでも成長を続けています。

これは、当時の社長が資金調達に関する知識を有しており、つねにキャッシュポジションを高く保っていたからであり、危機的な状況であっても判断を誤らず、大切な軸を貫いてこれたからだと思うのです。

このような出来事を目の当たりにしていたので、資金調達については20代の頃から勉強してきました。

会社がキャッシュを手に入れる手段は3つあります。売上をあげること、エクイティファイナンス(株式発行による調達)、デッドファイナンス(金融機関からの借り入れによる調達)です。

売上は、営業やマーケティングなど、日々の業務からも学び身につけられることも多くあります。私も、独立する前から意識して経験を積んできました。それに加えて、デッドファイナンスやエクイティファイナンスについても何十冊と本を読み、起業家の先輩方や金融機関さんにも多くのことを教えていただきました。

おすすめしたい本はたくさんあるのですが、これから資金調達について学びたい方には、この2冊は入門編としておすすめです。

ファイナンスに関する知識が少なかったとしても、会社経営はできます。ただ、分かってやっているのと、分からないでやっているのとでは、雲泥の差があります。土俵際で逆転しようとすれば、相手をひっくり返すしか手はないのに、無理やり、力任せに押し返そうとしているような感じでしょうか。仮になんとか困難を乗り越えられたとしても、大きな痛みが伴います。

まずは知識として学び、それぞれのメリット・デメリットを理解した上で、自社にとってベストな選択をすれば良いわけですが、弊社では、創業からデットファイナンスをメインに行ってきていて、近年では事業会社から出資をいただくなどエクイティファイナンスも実施しています。

弊社は、非常に良い条件で借入させていただいてますが、それは、必要な知識を身に付けた上で、日頃のコミュニケーションを通じて、ストリートスマートという会社や弊社のスタッフを信頼いただいているからだと思っています。

金融機関と信頼関係を築くために、気をつけていることがあります。言葉にするとごく当たり前のことなのですが「相手のことを考える」ということです。

例えば、自分がある人に頼まれてまとまった金額のお金を貸したとします。返済期限まではまだ時間があったとしても、本当に返ってくるだろうかと誰でも不安になりますよね。そんなとき、返済の目処や状況についてまめに報告をする人と、返済期限まで報告がない人と、どちらが信頼できますか?

銀行や法人間でも全く同じです。

「いまこういう状況です。順調だから予定通り返済できます」「いま業績が厳しい状態ですが、こういう対策をしていて、期限までに返せるように尽力しています」といった具合に、業績が良い時だけではなく悪い時であっても、まめに報告してくれる人の方が、最後の最後に結果だけ伝えてくる人よりも信頼できますよね。

エクイティファイナンスも原則は同じだと思います。より大きなリスクが伴うからこそ「いまの事業や組織の成長度合いはこれくらいで、もっとここを伸ばします」とか「ここが伸びてるから追加で投資お願いします」など、まめに報告をする人は出資者と信頼関係が構築できるし、さらなる調達の可能性も広げていけるのだと思うのです。

ストリートスマートでは、実際に以下のようなことを行っています。

[決算期]
・決算書に加え、事業概要、決算情報、財務分析、過去1年間の取り組み、事業戦略、次年度予算、などをまとめた詳細資料を作成
※自社の製品があれば、その現物も持参する(弊社であれば、出版した書籍など)

[それ以外]
・定期的に状況報告に伺う
・赤字になるようなリスクが生じたときには、対策とともにすぐに報告する

金融機関へ実際に提出している資料の一部

そして、必ず先方へ伺って説明の時間をいただくようにしています。お金を貸している借りているという双方に利益があるビジネスの関係ではありますが、利子も大きくないなかでリスクをとってお金を貸してくれていることに感謝の気持ちが大きく、相手のことを考えれば当然だと思うからです。

このような行動を積み重ねて、信用・信頼を築いていくことが大切で、結果として、企業のファイナンスを強くすることに繋がるのだと思います。

私は幸い、先輩方に教えていただきながら当たり前のことだと思ってやってきましたが、事業を伸ばすことだけに注力している経営者は多いようです。「土俵の真ん中で相撲をとる」つまり、キャッシュを潤沢に保つことはそれこそ事業の肝であるのに、財務の担当者に任せきりになっていたり、取引のある金融機関とのコミュニケーションも決算期に一方的に決算書を送るだけなど、その重要性を理解できていないケースも多いように思います。

資金調達にはテクニックがないわけではありませんが、最も大事なのは、このような原理原則ではないでしょうか。

まずは知識を学び、金融機関や投資家、VC等がどのような視点を持っていて、どうしたら調達が実現できるのか理解し、相手の気持ちを考え誠実なコミュニケーションを積み重ねていくこと。その結果、自社のファイナンスを強くしていくことができるのです。

原理原則を貫いた経営者である稲盛和夫さんの教えについても記事を書いていますので、よろしければご覧ください。


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