3自分は何者でありたいのか

自分の言葉を自分のために使う_4

Vol.4 自分が自分を大事にする

2年半の引きこもり生活の後、一度現場管理の仕事で社会に復帰するも、思うところあって、歩み出したカウンセラーの途。

建設業界からカウンセリングへ―最初に経歴を伺ったときには、ずいぶんと大きなキャリアチェンジに踏み切られたのだなと思いました。

けれど、取材をしてその背景を知れば知るほど、そのつながりはごく自然な流れであったようにも感じました。


誰かの支えになる。喜ばれることを果たす。


松本さんの生き様に一貫している主題です。

「お客さんの要望を叶えることができる現場管理の仕事は楽しかった」

そう振り返って話してくれました。

職人さんと頭を突き合わせて悩みながら、お客さんに喜んでもらえるものを創り上げる。

そして、気持ち良く働ける現場を創る。

「職人さんが気持ち良い環境であれば、彼らは能力を最大限に発揮できる」

そうした想いは、今も変わらずに松本さんの中で息づいているのです。

“職人さん”という言葉を“あなた”に変えただけです。


カウンセリングを学び、トレーニングを受けたのは、生まれながらにして授かった「役割」を全うするため。

「人の話を、どんな話でも自分のパワーに変えていける力を備える」必要があったのです。

病んだ自分。自分は弱いということを痛切に知った。

だからこそ、カウンセリングという装備を自分に施す。


― 何がきっかけで病んだのか、はっきりとした理由は自分でもわかりません。

両親や仕事への不満だったかもしれないけれど、原因は明確ではないのです。

とすると、これからも私はまた病むことがあるのではないか。

そうならないように、先手を打ったのだと思います ―


以前、図書館で借りたことのある一冊の本を頼りにカウンセリングの学校を見つけ出します。

生まれ育った福岡を離れ、大阪へ。


カウンセリングを学び、「自分が自分を大事にしたことで、結果的に自分を救った」と言います。

自分はそれで助かった。他の人もそうしたほうがいいのではないか。

けれど、自らがそうであったように、人の期待に応えようとする気持ちもよくわかる。

自分と周りの世界―そのバランスを取るためには、せめて自分が自分にかける言葉ぐらいは整えていこう。

自分を大事にする一つの方法が、言葉。

そのようにして、「自分の言葉を自分のために使う」ということが芽吹いていったのです。

次回へつづく。

松本コミュニケーション研究所は、人との対話を通じて自分の言葉を聴き、自分への理解を深めることで、目をつむりがちな日常にひそむリスクにいち早く気がつき、ひとつでも多くのリスクを回避いただけることを目的に活動をしています。いただいたサポートは、目いっぱい大事に活かします!