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映画『ファーストラヴ』

センセーショナルな予告で話題の、映画『ファーストラヴ』を観てきた。

あらすじ
川沿いを血まみれで歩く女子大生が逮捕された。殺されたのは彼女の父親。「動機はそちらで見つけてください。」容疑者・聖山環菜の挑発的な言葉が世間を騒がせていた。事件を取材する公認心理師・真壁由紀は、夫・我聞の弟で弁護士の庵野迦葉とともに彼女の本当の動機を探るため、面会を重ねる 二転三転する供述に翻弄され、真実が歪められる中で、由紀は環菜にどこか過去の自分と似た「何か」を感じ始めていた。そして自分の過去を知る迦葉の存在と、環菜の過去に触れたことをきっかけに、由紀は心の奥底に隠したはずの「ある記憶」と向き合うことになるのだが…。

公式サイトより


もともと原作を読んでいて結末を知ってたけど、映画は映画でとても楽しめた。なんていうか、小説を読んでいて生まれた小さなハテナがすべて回収されていく感じ。すでに犯人も動機もわかっているのに、小説だけでは見えていなかったところが見えてきて、観賞後は気持ちがスッキリした。

ネタバレになるかもしれないけど、容疑者の女子大生の動機が判明するシーンが、文字を読むだけじゃ理解できてもあまりしっくりこなくて。
でも、映像で見ると、面接官の男性たちの品定めするような、あるいは見透かしてくるような卑しい視線に、スクリーン越しにこちらまで目を逸らしたくなった。環菜のような背景があれば、この行動は必然かもしれないよね……って、思わざるを得ないというか。

あと、なんといっても芳根京子さんの演技がすごい。原作では、主人公から見た環菜の第一印象を「童顔の女子大生というよりも大人びた少女」と表現してるんだけど、イメージぴったり。面会室での薄ら笑いを浮かべるシーンは、本当に鳥肌が立った。

一方で、舞台挨拶はこんなにシリアスな作品のものと思えないほど、めちゃくちゃおもしろかった! 中村倫也さんと窪塚洋介さん、板尾創路さんが変化球ボケを次々に投げて、「これ、収集つくのか?!」みたいな。
何か音が聞こえる? と思ったら窪塚さんの携帯が鳴ってた、っていうオチは本当に笑った。

質疑応答のなかで印象的だったのは、父親を演じた板尾さんの「そもそも、トイレの床が濡れていたことが一番の元凶だ!」発言に、堤幸彦監督が「いや、だからちゃんとトイレの前に清掃中の看板出してたでしょ」と返した場面。何気ないやり取りだったけど、ハッとした。
そういう、そもそも論とかおや?ポイントが、映画をよく観ると解消されるんだよね。

原作では法廷シーンはあまり描かれていない印象だったけど、読者が気になったことをそのまま検事が投げかけてくれるから、「そこ、気になってた」「あ、なるほどね〜」と解消しながら観られて楽しかった。

ひとつ気になったところを挙げるなら、主人公が環菜の母親の腕の傷を偶然見てしまうシーンで、そこの繋がりが描かれていなかったこと。
原作を読んだときに、母親ゆえに娘が自分と同じ行為をしていることに対する嫌悪感が強いとか、これからは母親のメンタルケアも必要、みたいな主人の発言があって「なるほど!」となったから、そこはちょっと欲しかったかもしれない。

同じくそこが気になった、という方はぜひ原作を読んでみて。ほかにも、原作では主人公に息子がいる設定だったり、実母との確執がさらに根深く描かれていたりするので、新鮮な気持ちで楽しめるはず。

この作品はよく「いろんな形のラヴ(愛)を描いている」っていう風に紹介されてるけど、あらすじとか登場人物の設定だけ見ると、特殊すぎてあまり身近に感じられないんだよね。

家族絡みの殺人事件って、ニュースを見ていると珍しくないけど、そもそも報道されるのはよく起こりうることではないからで。でも、ストーリーを追っていくと、なぜか共感できる部分もあって。

環菜の過去の恋愛経験は、10代~20代の女性の多くに刺さるんじゃないかと思う。

優しくされて、「好き」って言われたら応えようと努力するけど、結局最後まで好きになれない。でも、その努力を無駄だったなんて思いたくないから、自分が納得できるように折り合いをつけていく。

そういうときって、相手に自分が努力して答えていたことは伝わってないんだよね。「いやだって、笑ってたじゃん」で済まされてしまう。

虚しいなぁ。
それが恋愛じゃん、と思う人もいるんだろうけど。

主人公のように、寄りかかったら支えてくれるような愛を手に入れるのが、理想なのかもしれない。

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