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外伝: マルチと恋愛(混ぜるな危険)

マルチ商法のトピックそのものからは少し離れますが、勧誘者Mが「マルチ会員」から「別の何か」になっていった時のモヤモヤ、その過程で筆者が経験したモラハラや病気について整理したいと思います。

マルチへの勧誘が目的で接近してきたMとの交際関係は当然、良い結果には終わりませんでした。

交際開始時に覚えた違和感

「元クラスメイトだから」と互いをよく知った気になっていました。そのため、マルチに勧誘された時も、交際を申し込まれたときも、以下を全てスルーしてしまいました。見なかった事にした代償は大きいです。

🏴交際初日にいきなり「子供を作る気はある?」など人生計画について踏み込んでくる
🏴交際初日にMの親に、その後は知り合いに自分たちが付き合ってることをやたらと触れ回る

ポジティブ思考で、なんでも意欲的に取り組む所はMの魅力でもありましたが、その一方で、考えを押し付けたり、物事を自分に都合良く捉える側面もありました。

価値観の相違

マルチ退会後も、交際は1年半ほど続きました。
その間、Mの家族に「価値観が合わない」と交際を強く反対されるようになりました。初めは友好的でしたが、Mのマルチ退会と就職を機に態度が豹変しました。

先方は「親は絶対に正しい」「社会的に成功するにはこうすべき、それ以外の道は認めない」という家庭でした。子が成人し、一人暮らしをしていても関係ありません。

勧誘者Mの両親は「家族というものは一緒に過ごすべきだ」とデート中を狙ってMを呼び出しました(誕生日やクリスマスなどのイベント前後は集中的に狙われる)。引き離そうとする意図は露骨だったので、余程嫌だったんだろうと思います。

勧誘者Mがマルチサークルに入ってしまったのも、彼らに対する反抗心の表れだったのかもしれません。

就職先の思想にのめり込む勧誘者M

しばらくして、Mは保険会社の営業職に就職しました。
それからは、会社の思想や保険の素晴らしさを繰り返し聞かされる日々でした。特に"人生計画"(ライフプラン)への思い入れは凄まじいものでした。
Mは幾つもの「〇〇歳までに□□する」を作っては絶対に成功する!と豪語していましたが、現実味が感じられませんでした。

人生計画を立てること自体は大切なことだと思っていますが、Mの極端な"推し方"には戸惑いました。

”GNP”営業

Mの仕事は、自らの人脈を使ってアポを取り、相手に保険などの金融商品を提案することでした。そのきっかけ作りに、合コンやパーティーを企画する事もありました。私の友人達にも会いたがっていたので、「使う」気でいたのかもしれません。その仕事はいわゆる歩合制でしたので。

1つの思想に染まり、プライベートの人間関係で営業をかける姿を見て、Mがマルチを辞めても頭の中身がそのままだったことが分かりました。

ところで、業界では「義理、人情、プレゼント」で契約獲得を目指す営業手法を、それぞれの頭文字を取って「GNP営業」と呼ぶそうです。

保険の商品に罪はありませんが、今でも保険の営業が苦手です。

モラルハラスメント

交際相手をマルチサークルに勧誘し、収入源にすること自体、モラルが問われる行いだと思います。交際は初めから間違っていました。

Mは、マイホームのCMに出てくるような、理想的な家庭を築くことに憑りつかれていました。しかしCMと現実は違います。成果が出ないMの不満は、モラハラという形で現れました。

🏴人前で筆者の外見や服装を貶す
🏴M両親の筆者への悪口を聞かせる
🏴猜疑心、束縛が増す
 (携帯電話やメールを無断で覗く、人の連絡先を消させる等) 
🏴筆者への贈り物を喜ばない、身に着けないと激怒する

人格を否定するような言動を繰り返され、私はうつ病とパニック障害を併発しました。
Mの同期が集まる食事会など、華やかな場にも同行しましたが、疎外感と孤独しか感じませんでした。

高収入・ハイステータスな仕事への転職も強要されましたが、私は生き馬の目を抜くような生き方よりも、穏やかな生活を望んでいました。もっと早くに別れるべきでした。

悪質化する営業行為

金融商品は来る日も勧められました。しかし、精神疾患を治療中の自分が加入できる金融商品など限られています。Mは私の精神疾患が1ヶ月や1週間で治らないことが不満のようでした。

扱っている商品の関係で、M自らも健康のエキスパートになった気分でいたのでしょう。「こんなにいろんな種類の薬を飲んで、良いことなんてある訳がない」と決めつけて、私に処方薬を飲むのをやめさせようとしたこともあります。その根拠として、怪しい医療健康記事のリンク(※)を送られましたが、私は迷わず主治医の指示を守りました。

※これはヘルスケア情報キュレーションサイトで素人による医療記事が乱発生し、社会問題にまで発展した「WELQ問題」以前の出来事だったと記憶してます。

貯蓄型のプランなどは仮に加入したとして、失業や病気などで途中で保険料を支払えなくなったらどうするんだ、と聞いたら「親に借金してでも払ったほうが得」と言われました(親が生きてて尚かつ援助してくれる前提なのか)。借金してでも払うという発想はありませんでした…保険は払える人が加入するものだと考えています。

Mよさらば

しつこい営業行為をやめるように強く言ってケンカに発展したある日、 

もうパイナップル担当大臣との将来をイメージできない。後ろを振り向かずに前へ進むことにした

Mにそう言われて別れました。私が病気で退職し、Mの"人生計画"から外れた事も大きいと思います。

最後の半年は記憶がありません。事情を知っている友人に「デートDV・モラルハラスメント相談窓口」の連絡先を無言で渡されたのは覚えています。

Mのその後

別れた後も、しばらくの間は金融商品の勧誘や謎のポエムメールが来ました。それも来なくなった頃に、勧誘者Mはあっけなく転職したようです。

共通の知り合いのSNSでの投稿で知りましたが、Mは昔の同級生と結婚し、その"人生計画"通りに家庭を築いたようでした。新しい人間関係をゼロから築くのではなく、アドレス帳の中から相手を見つけるところも実にMらしいです。医療デマも発信していたので、そっとブロックしました。

おわりに:成功という名の幻想

マルチサークルから脱退できた方の多くは、真面目に生活していることと思います。Mの場合、抜けられたのはマルチサークルという「場」だけで、"成功"の幻想には囚われたままでした。それはマルチ以前から抱えてきたものだったのかも知れませんが。

友人達からは「天然」「素直」などと評されていた勧誘者Mには、散々振り回されました。勧誘者Mに悪気はなかったと思います。でも思慮も、思いやりも、何もなかったと思います。たとえこの記事を読んだとしても「自分の事かもしれない」とは思わないでしょう。

平坦な道ではありませんでしたが、私は無事に社会復帰できました。
モラハラのフラッシュバックで苦しむ日もありますが、周りからのサポートも得て、対処法を学びました。心身の健康がなければ、経済的な安定も成り立ちません。

どこで間違えたか、防げたとしたら何ができたか。色々と再考して、記事を書くうちに新たな発見もありました。
自分にも欠落していたものが沢山あったと思います。警戒心、主体性、自分の人生に対する責任とか。良い勉強になりました。

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