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興ざめな貼り紙と呪われた旅館

東北のある旅館に、日帰り入浴をしに行きました。

露天風呂に向かう通路に、貼り紙が貼ってありました。

転勤族の家の子である私は、貼り紙を読む習慣が身についていました。

貼り紙は、その土地の重要な情報源です。

早速、興味津々で、貼り紙に近づいてみます。

「お客様の大切なところをよーくよーくお洗いになってから、湯船にお浸かりください。女将」

「なんじゃ!これ?」もう一度、読み返してしまいました(笑)。

私の横で、滅多なことで笑わない母が、ケラケラ笑っています。

一応、雰囲気の良さと、そこそこの高級感を売りにしているらしい旅館なのですが・・・。

「きっと、素人が経営している旅館に違いない!」そう思った私。

アトピーに苦しんでいた私は、幼い頃から両親に連れられて、かなりの温泉宿で日帰り入浴をしてきていました。なんとなく、経営者の人物像に思いを馳せてみるのが、常でした。

ちなみに、温泉のおかげで、アトピーは無事完治。温泉の力は凄いのでした。でも、週2回、4年間程、集中的に入り続ける必要がありました。

後に、この素人経営の勘は、正しかったことが分かりました。

別の入浴施設で出会ったお爺さんに、この旅館の話をしてみると、評判は良くありません。

「あの旅館は、高いばかりで、食事は貧しいんだよ!」

最近、この旅館がまだ存続しているのかを調べてみました。

すると、この旅館の女将の葬儀の日に、息子である弟が、兄を刺し殺そうとした傷害事件が発生していたとのこと。さらに、民事再生手続きが開始されていました。

なんか、あの貼り紙を見た時から、不吉な予感がしたものです。

自分の変な勘が当たったことが、自分自身で妙に気持ち悪いのでした。


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