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映画「マチルダ」の指輪 〈映画の指輪のつくり方〉第75回

逆境を力に!
1996年公開映画「マチルダ(Matilda)」
文:〝美根〟(2023年7月21日連載公開)

朝散歩をしていると緑の匂いが強くなるのを感じる。強い日差しや、冷たい飲み物、夕方の長さや、雨が降り始める時の匂い。夏だね。子供の頃の夏休みの感覚が蘇ると同時に、この映画を思い出した。夏休みの午後のロードショーで見た「マチルダ」。今回はこの映画の指輪をお届けします。

マチルダは大天才!

金に目がない中古車販売店を営むワームウッド夫妻の元にマチルダという女の子が誕生した。車をめちゃくちゃに修理して高額で売り飛ばす父、ビンゴで一攫千金を狙い派手に着飾ることしか興味のない母。娘に全く関心がない夫妻の知らぬところで、毎日一人で留守番をするマチルダは0歳で自分の名前を書けるようになり、4歳になるまでには自分の身支度、朝ご飯の調理ができるようになり、家じゅうの雑誌を読み終えていた。

図書館に一人で通うようになり本を読み漁る日々。6歳半になった娘の年齢も正確に言えない両親は、マチルダを小学校に入学させることも忘れていた。そんな中、父の店に小学校の校長が現れる。厳しい学校方針に賛同した父は、大切な顧客でもあるその校長の小学校にマチルダを入学させる。待ち焦がれた学校生活! そんなマチルダを待ち受けるのは・・・という話!

でもマチルダは負けない

冒頭からあまりにも不遇な環境で生きるマチルダ。聡明なマチルダだが、価値観の違いすぎる親からは疎ましがられ、生意気な悪ガキ扱いされる。もしも私だったら絶対挫けちゃうよ・・・。めちゃくちゃグレる自信しかない。でもマチルダは、彼女が出会ってきた沢山の本や作家たちの言葉に勇気づけられ、希望を胸に生き抜く!

「悪いことをした子(child)にはお仕置きが必要だ!」を「悪いことをした人(person)にはお仕置きが必要だ!」と父親が言い間違えたことで、「あ、悪いことをした人なら、子供が大人にお仕置きしてもいいってことだな!」とマチルダが新たな教訓を得るところは面白い。それをきっかけに、マチルダはちょっとした悪戯で、自分を不当に罵倒する親を「お仕置き」するので、映画自体が陰惨にならず、愉快なテンポを保って安心して観ることができる。

そして、天の声的に見守ってくれるナレーションのセリフもとても心打たれる、素敵な言葉ばかりで好き。「本はマチルダに希望と慰めのメッセージをくれました『君は一人じゃない』と。」「だが彼女はじきに気がつくはずだ。自分という強い味方に。」マチルダを通じて、観ている私たちにも必要なメッセージをくれる。

憧れの学校! 残酷な校長!

やっと通えるようになった学校。優しい友達、素敵な担任の先生ミス・ハニーとの出会い。だがしかし、この小学校はみんなから恐れられる厳格で残酷な校長が支配する場所だった・・・!

なんでこの仕事についているのか、謎すぎるほどに子供が嫌いで、罰を与えることに生きがいを感じている校長。女の子のおさげ髪を握ってハンマー投げのごとく子供をぶん投げたり、ケーキをつまみ食いした子供には全校生徒の前で見せしめのように罰を与えたり・・・。とんでもなさすぎるぜ。

校長先生のシーンは、生徒たちと同じように観てるこっちもドキドキ緊張するんだけど、救いなのは、子供達が可愛くて割とタフで一致団結しているということと、ミス・ハニーが子供たちを愛する優しい先生であること、そしてマチルダがいるということ! 子供達がケーキをつまみ食いしちゃった子をウォー!と応援する場面は素敵でちょっと涙。

マチルダの才能大爆発

マチルダの才能は進化を続け、普通の人間なら使うことのない部分の脳まで働き出したことで文字通り爆発! 新たな能力が開花してしまうのだ。練習を重ねるシーンの無敵感と爽快感はワクワクが止まらなくて、マチルダの小粋さとキュートさが愛おしい。

ある”力”の源となるものも突き止め、その力を発動させるために、親や校長に浴びせられた罵詈雑言を思い出してパワーに変えるシーンは最高でしかない! 嫌なこととか言われても、素敵なパワーに変えられるなら頑張れそう。

私の場合、 何くそ〜! オラオラ!ってやれる時と、ヒエーン!としょんぼりしちゃってネタにできるまでかなりの時間が必要な時があるから、私もマチルダを見習って素敵なパワーにすぐに変えられるようにやってみようと思ったよ。

自分の力を信じること

今回そんなマチルダが図書館に通う姿を指輪にしました。カート一杯に本を借りて変えるシーンが良いんだよね。指輪制作動画もリニューアルしてみました! どうかな? 感想教えてね。

映画の原作「マチルダは小さな大天才」の作者は、「チャーリーとチョコレート工場」の原作者としても有名なロアルド・ダール。そういえば「チャーリーとチョコレート工場」の前日譚の映画が年末公開されるね。オリジナルストーリーらしいけどそちらも気になる!

天才少女マチルダ、でもそのことを鼻にかけず、人生に冷め切ってしまわず、困難な環境を悲観したり、人のせいにしたりせず、機転の効いたアイデアと豊富な知識と優しさ、そして物怖じしない大胆な行動力で、道を切り拓いていく。マチルダみたいに天才ではないけど、恨んだり憎んだりしないで、でもそんな感情でも込み上げた時は小粋で楽しいパワーに変えて、突き進んでいきたい。

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音楽:Thurston Harris「Little Bitty Pretty One」カバー
モチーフ:本を運ぶ図書館に通うマチルダ、本を積んだカート、借りてきた本

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