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欠けた1冊

今週、古本をまとめて6冊買った。梱包の仕方も、発送元もそれぞれ異なる本が次々と送られてきて、ポストの中にそれらが入っているのを発見するたびウキウキ、ドキドキした。全国から古本を買えるようになるなんて、いい時代になったものだ。

そんな6冊の本の中には漫画本も含まれている。わたしが購入したのは、主人公が日常から感じる喜びや怒り、不安、疑問などを4コマ形式で丁寧に描いた、少しだけシリーズ化している作品だ。数年前、友人が貸してくれたことでこの作品を知り、その後、古本屋などで見つけたら買うようになった。そして最近、シリーズの中で持っていない作品をちゃんと手に入れたいと思い、今回購入にいたったのである。

件の未読だった漫画本を手に入れたわたしは、改めてこの作品をイチから順番に読んでみようと思った。本棚から過去に集めた作品を取り出し、発行年が古い順に並べてゆく。すると、どうしても1冊足りない。それはこのシリーズの中でも一番印象深く、心に残っている作品だ。本棚やブックケースの中を探しても、その作品はどこにもなかった。

それもそのはず、わたしはその作品を「友人」に借りて読んだのだ。読了後、この作品が心に響いたと友人に感想を伝え、恐らくそれからこのシリーズの作品をちまちま集めることになったのだと思う。そしてあまりに印象に残ったから、勝手に購入した気でいたのだろう。

普段のわたしであれば、自分の勘違いにより欠けていたその作品をすぐさまネットで探し、購入の手続きを取っただろう。でも、なんとなくそんな気にならなかった。それは、当時その作品を貸してくれた友人とわたしが今、完全な疎遠関係になっているからだ。わたしの生活に変化が起きたことを機に、友人はわたしから距離を置いた。

昔、友人が貸してくれた作品。唯一欠けている作品の名前は「どうしても嫌いな人 すーちゃんの決心/益田ミリ」だった。

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