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静電気を許すな

季節柄、静電気による「バチッ」に悩まされている。

『静電気』は物と物が接触する摩擦で発生するもの。摩擦により、静電気の元となるプラス電子・マイナス電子が、それぞれの物体に移動し合い「帯電(物体が電気を帯びること)」する。これが、静電気が発生した…という状態。
そして、この状態でドアノブやシンクなど電気を通す物体に触れると、体に帯電していた電気が一気に放出される。それが例の「バチッ」の原因なのだそうだ。
なお、軽くパチッと静電気が起こる程度だと「3kV」、バチッと痛みを感じほどの静電気は「10kV」の電撃(静電気による人体へのショックのこと)が走っているらしい。
※kV=キロボルト/電界の強さを表す単位

あまりにも静電気がひどくて、その仕組みについて調べてしまった。
家には加湿器があり、例年この時期は毎日せっせと給水をし、部屋の加湿に努めているのだけど、今年はそれが面倒でいまだに加湿器を稼働させていない。だから当然、あらゆる場所で静電気の放電が行われていた。そろそろ稼働させるか…いやでも面倒…そんなふうに二の足を踏んでいたところ、悲劇が起こる。

仕事部屋にて仕事をしていたところ、リビングにいた猫(先住)と目があった。この先住くんはうちに来て2年、今年の5月頃からやっと撫で撫でできるようになったばかり。いつもは呼んでもあまり来ないのに、試しにおいでと声をかけると、小走りに仕事部屋に入ってきた。そうして、畳んだごろ寝マットの上にそっと鎮座。
あまりに嬉しくて、わたしは彼を撫でたくなり、しかしいきなり撫でるとびっくりするだろうから、まずは挨拶を…と人差し指を猫の鼻先に差し出した。すると、猫もクンクンと鼻を動かしながら指先に近づき……そして、バチッという音のあと「ハウッ!」とダメージボイスが起こった。

ひどく傷ついた顔で走り去る猫。人差し指を突き出した、中途半端な姿勢のわたしだけが、その場に残される。この時ほど静電気を憎み、悲しんだことはない。猫に「ハウッ!」と言わせてしまった…その原因である静電気を許してはならない。たぎる気持ちでAmazonを開き、静電気除去バングルを即刻購入した。

そんな静電気バングルをつけ始めて今日で3日目。効果のほどは、無いよりはマシ、と言ったところだろうか。とりあえずあれ以来、猫に強い電撃を与えるには至っていない。
あの時の猫の顔ーーー目をギュッとつむり、口を小さく開き、ヒゲがグイッと後ろに倒れ、顔をのけぞらせた…あの時の顔。そして「ハウッ!」という、予期しない攻撃を受けた時のショックを隠しきれない声。その顔と声を戒めに、わたしは今日もせっせと加湿器に水を入れる。


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