短歌連作「朝」その他

光射す空と朝とは誰にでも
喜ばしくはないのだろうな

鴉鳴き夜明けを告げる午前5時
願えども朝は襲来する

朝焼けを浴びる草木の輝きの
美しささえ知らないんです

明急ぐ朝に追われて眠ろうとしても痛みだけが増えてく

宵闇は醜いものも隠すから私は夜にしか歩けない

白みゆく空見上げては私だけ老いているのを知った気がした

雲照らす陽の光さえ疎む僕 少しは素直に生きたかった

あいじろ(藍白)の空広がって
響きはじめる蝉の声など

目を逸らす振りをしたってどうしても朝は来るのだ どうしようかな

朝焼けと鳥の鳴き声遮ってしまえたらいい 眠りたいから

耳鳴りと目眩と遊ぶ真夜中に
孤独な部屋で途方に暮れる

紙の上進まぬペンを眺めては吸殻だけが積もる真夜中

君の声
忘れていないことさえも
虚しいだけの今を生きてる

あたたかいコーヒーすこし飲み込んで君の瞳の色思い出す


君の目に映る世界を知らないが生まれたことを祝福したい

最近はいつもアンクルソックスで
足首ばかり日焼けしていく

猥雑なすべてのものへ当てつけよう 客人あれば去る者もあり

綿あめを溶かす日盛り蝉を踏む どうしてここに来てるんだっけ

湿度まで私の首を絞めてきて腐る傷口抉り取りたい

次の夏にも僕はまだ変わらずに醜く生きているんだろうか

郷愁がわからない午後 根無し草だから流れて流されるだけ

来年はどうせ忘れてるんでしょう 二人でアイスを食べたこととか


桜桃の果実食む時栄養というより美しさを食べている

雑談は孤独を埋めるスナックのようなものだと君は言うんだ

わたしとて、君の笑顔がいつの日も本心からと思いはしない

水溜まりの中の星空を あなたは
つかまえることができたのですか

紫に光る火花を眺めてた
あなたの苦しみわかりたかった

呼吸毒翼は朽ちて土用雨に僕は僕を僕でなくする

灯火も祈りも蓋しひと憶う此岸のもののためなのだ

琥珀色 曇らせてくれ苦しみと荒れたる部屋の濃き輪郭を


わたしだけあなたをこんなに好きなんて
ずるいと思う
それもわがまま

悪いけど、
あなたが僕を忘れても
僕はあなたを忘れはしない

大丈夫、
きっとあなたはわたしなど
じきに忘れてしまうはずです

遠き日に会えると思う きっとそう 顔も知らないどこかのあなた