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「いい子」の呪い

「本当におとなしくていい子だね」

いい子の枕詞は「おとなしくて」なのだ。

「声が大きくていい子ね」「元気でいい子ね」「主張がはっきりしていい子ね」なかなか言われる事がない。


子供嫌いで子供の実態を知らないまま、私が親になって3年が過ぎた。

かく言う私も勘違いしていたのだ。

躾ができていれば子供は騒がないし、泣かないと。騒がないように、泣かないようにするのが躾だと。

実際には騒ぐのと泣くのは全く別物だし、だめなことを言い聞かせてもそんなにすぐには改善されない。トライアンドエラーの繰り返しだ。

そして子供にも色んなタイプの子がいて、怒り、泣き、沈黙、それぞれのやり方で気持ちを表現する。

叱っていればいつかそれをやめるかもしれない。しかしそこに残るものはなんだろう?


ずっと寝たきりだった赤ちゃんが動きだす時、

はいはいしていた子が一歩を踏み出す時、

初めての言葉を口にする時、

そのすべての元に欲求がある。

触りたい、つかみたいから一歩を踏み出す。自分の欲求を伝えたくて声を出す。

お腹をすかせてなく赤ちゃんも、おもちゃがほしいと転げまわる子も。

その欲求にはものすごいエネルギーがあるのだ。

大人の世界の事情と相容れない深くて純粋なエネルギー。

そのエネルギーを使って子供達は、信じられない速さで成長していく。

そしてそれはいつか小さくなって大人の世界へと溶けていく。


あなたも何かが手に入らなくて、何かをなくして、泣くことはないだろうか。悔しくて夜も眠れない時がないだろうか。

それは手に入れようと欲した結果だからでは?その何かを愛していたからでは?

何も欲しない人は、何も愛さない人は、泣いたり悔しがったり怒ったり、負の感情に振り回されることはない。

子供達はその強烈なエネルギーをまだうまく使いこなせない。

そして親はそのエネルギーを無視して、なかったことにはできないのだ。向き合わなくてはいけない。

それを「躾ができていない、叱ればいいのだ」と簡単に切り捨てないでほしい。

その行為自体は躾けるべき、叱るべき行為だとしても、欲求を表現したことは躾けるべきことでも叱るべきことでもないと私は思っている。

危険なこと、だめなことは制止し、線引きをして、整理をして言い聞かせる。

それでもそんなにすぐには響かない。時間がかかる。


だからもう少し、

もう少しだけ見守っていてください。

「いい子」の呪いがその子の個性を消さないように。

そのエネルギーが大人の世界と和解できるように。




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