多チャネル化するアメリカの雑誌に見る、メディアのトレンド

■このnoteのまとめ
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・アメリカの主な雑誌メディアの総合評価データ
・アメリカで人気の3つのメディアはエンタメ、スポーツに加えてまさかのジャンル…
・日本でも有名なエンタメゴシップ誌peopleは曲がり角!?
・「National Geographic」の驚異的な部数。アメリカのビジネスマンは教養深い?
・前年同月比での比較で見る、指標が伸びているメディアの条件
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日本でも雑誌不況と言われていますが、アメリカでもその状況は加速しており、出版社では次々とレイオフや休刊が相次いでいるといいます。
アメリカでは、雑誌を出版部数で図ることから脱却しようとしていて、電子書籍やWEBサイトのアクセス、動画コンテンツの視聴数など、紙での閲覧にとらわれず、雑誌ブランドにおける各種コンテンツの視聴数のデータを公開しています。それがmedia360°です。
今回はmedia360°のデータをひもといて、アメリカの雑誌メディアをとりまく概況を分析してみたいと思います。

データ収集時に気づいたのが、アメリカのいずれの雑誌社も自社の雑誌一覧を表示するメニューをMagazineと表記せずにBrandと表記している点です。雑誌社は、紙の媒体にとらわらずに自社の雑誌ブランドを多チャネルに展開している状況がうかがえます。(以降は雑誌ではなく、メディアと表記します。)

それでは、さっそく公開されている雑誌の総ビジター数の累計を見てみましょう。
※2018年6月の数値データ。
※以降登場する数値データの単位は全て1,000。
※AARPという全米退職者協会の機関誌は、政治的な色合いもあるためグラフからは外して計測。

■セレブを扱うエンタメ誌、スポーツ紙、ヘルスケア誌が3強

全ての雑誌を並べてグラフ化するとこのようになるのですが、50,000を超えて大きく飛び出ているメディアが3つあります。

エンタメ誌のpeople(総ビジター数73,154)、総合スポーツ誌のESPN The Magazine(総ビジター数88,167)、ヘルスケア誌のWebMD Magazine(総ビジター数55,962)の3つです。peopleは日本でも「世界で最も美しい顔」などでおなじみのセレブネタを中心としたエンタメゴシップ誌です。日本でも文春の勢いがすごいことを考えると、セレブのゴシップネタというのは全世界共通で鉄板ネタなのかもしれません。

次いで総合スポーツ誌のESPN The Magazineは、総ビジター数で88,167となっており、スポーツに関心が高いアメリカならではの数値となっています。

3位のWebMD Magazineはヘルスケア誌なのですが、健康のための食事法から大腸がんなどの各種病気・疾患に関する予防や治療法、そしてうつ病などのメンタルヘルスまで踏み込んだ総合ヘルス誌になっています。アクセスの内訳を見ると、モバイルからのWEBへの流入が最も多いのですが、電子書籍を含めたプリント版の数値も9,921と高い数値になっています。
日本ではwelqの件もあり、WEBでのヘルスケア情報の需要が非常に高いことが分かっていますが、電子書籍を含めた誌面の部数を見てもアメリカでは需要が高いことが分かります。これは、日本との保険制度の違いにおける健康意識の違いが反映されているかもしれません。アメリカでは国が補償する保険制度が潤沢ではないため、健康に気を使う必要があるからです。

■アメリカのビジネスマンは教養深い!?

3メディア次いで総ビジター数が多い(30,000~50,000)メディアがこちらの8つになります。

・ニュース/ビジネス・経済「Time」(47,876)
・カルチャー「National Geographic」(38,001)
・女性ライフスタイル「Good Housekeeping」(39,543)
・女性ライフスタイル「Allrecipes」(46,144)
・女性ライフスタイル「Better Homes and Gardens」(42,005)
・スポーツ「Sports Illustrated」(32,582)
・ニュース/ビジネス・経済「New York Magazine」(36,797)
・女性ファッション「Cosmopolitan」(35,198)

「Time」は権威ある英字ニュースメディアですが、生物や地理学などを扱う「National Geographic」の総ビジター数の高さに驚きます。なぜこんなに驚異的に高いのかと気になって媒体資料を見てみると、リーチできるターゲットとして下記の記述があります。

National Geographic ranks #1 in reach of:
Men
Generation Z
Postgraduate degree
Influentials
Emerging Millennials (Millennials with
HHIs of $100,000+)
Self-employed Professional/Managerial
媒体資料より

1990年代半ばから2000年代前半生まれのジェネレーションZ世代の男性のほか、大学の学位を持っていたり、経営層や専門家などにリーチできるとあります。
つまり、アメリカの知識階級ともいうべき層は、生物や地理学、サイエンスなどを恒常的に教養として学んでいることになります。日本では、自分が携わるビジネスに関わる情報以外を取り入れる習慣はほぼないでしょう。アメリカのビジネスマンは、一般的な教養の知識に対して恒常的に関心があることが分かります。

ちなみにこれは前年同月比との比較グラフになりますが、他のメディアに比べて驚異的にプリント及び電子書籍のセクションが飛びぬけています。教養を得ようとする知識階級の人をターゲットにすれば、紙媒体や電子書籍を購入していもらいやすいという証拠かもしれません。

アメリカのメディアの特徴として、こういった女性向けのライフスタイル誌の数が多いことも特徴のひとつです。さらにインテリアや建築関係のメディアも多いのですが、アメリカは家が広いためインテリアや雑貨、庭などのこだわりどころが多く、それについての情報ニーズが高いことが予想されます。

また、女性向けのファッションメディアとしてランクインしているのが「Cosmopolitan」(35,198)です。ハイブランドに寄った「Vogue」よりは一般向きで、Web版ではセレブのゴシップネタなどのコンテンツを豊富にラインナップしています。

この内訳を眺めていると、なんとなくアメリカ人の生活の傾向というものが見えています。

多くの人はセレブのゴシップネタを定期的にチェックし、スポーツ観戦に熱心で、健康に関する関心が高く、ニュースサイトなどで定期的に政治ニュースもチェックする。そして女性は、インテリアや雑貨、ガーデニングとしたライフスタイルを充実させる情報に関心が高く、男性の知識層は仕事以外の地理学、生物学、サイエンスとしたカルチャーも学んでいる。

といったところでしょうか。

■インスタやツイッターにユーザーを取られるエンタメゴシップ誌!?

それでは、次に各メディアにおける前年同月との比較を見てみましょう。

エンタメ誌のpeople(総ビジター数73,154)、総合スポーツ誌のESPN The Magazine(総ビジター数88,167)、ヘルスケア誌のWebMD Magazine(総ビジター数55,962)の前年比較のグラフになります。


3つのメディアともいずれも前年同月より微減していることが分かります。ゴシップネタが強いpeople誌については、別の記事でも触れましたがセレブがSNSで直接情報を発信をする傾向があるため、相対的に価値が弱まっています。Mobile/Webのビジター数が半分以上減少しており、ユーザーもメディアからセレブの情報を手にいれるよりは、インスタやツイッターなどから直接情報を手に入れたり、あるいはそれに詳しいファン同士の情報交換が活発になっているからでしょう。

総合スポーツ誌のESPN The Magazineも総合数では減少傾向ですが、videoのセクションだけは11,768とやや微増です。スポーツやファッションなどのジャンルにおいて360°の総合指標が伸びているメディアに関しては、このvideoセクションが伸びている傾向があります。
ヘルスケア誌のWebMD Magazine(総ビジター数55,962)も総合では微減ですが、チャネル別に見るとMobile経由のビジターが伸びていることが分かります。

■時事ネタを丁寧に取材する「New York Magazine」のアクセスが、前年比2倍に

最後に、残りのメディアの前年同月比をカテゴリ別に見てみましょう。

ニュース/ビジネス・経済

・「Time」(47,876)
・「New York Magazine」(36,797)

この2つのメディアはいずれも前年比増で、かつ「New York Magazine」関してはMobileからの流入が、なんと倍程度に増えています。流入の内訳を見ると検索による流入が44%程度となっており、オーガニックワードの上位を見ると「tanacon」というワードが検索ワードの14%を占めています。(1つのキーワードが、10%以上の割合を占めるのは非常に珍しいことです。)
「tanacon」とはYoutuberによるイベントのようで、予定より収容人数が少なかった、炎天下の中で待たされて来場者が火傷をしたなどの不祥事があったようです。その内幕を細かくレポートした記事が掲載されており、このイベントで何があったかを調べるためにユーザーが検索して流入したものと思われます。
こういったセンセーショナルな時事ネタのルポを丁寧に行うことにより、検索経由の流入が増えているのかもしれません。

「New York Magazine」流入元と検索ワード

・女性ライフスタイル
「Good Housekeeping」(39,543)
「Allrecipes」(46,144)
「Better Homes and Gardens」(42,005)

女性ライフスタイルを見ても大きく指標を伸ばしているのはmobileからの流入が増えている「Good Housekeeping」です。流入経路を見ると8割近くが検索流入になっています。記事コンテンツを見ても「小さな庭を大きく見せる40の方法」といった家庭のハウツーや「Amazonで買える24の楽しいキッチン用品」といったモノマガジン的なコンテンツが多いので、SEO向けのコンテンツを大量に投稿していると言えます。

・女性ファッション
「Cosmopolitan」(35,198)

「Cosmopolitan」も伸びているのはモバイル経由のWebへの流入ですが、やはりアクセスの8割は検索経由の流入のようです。メディアブランディングが出来ているメディアの場合、定期的に閲覧する読者が多いためダイレクト流入の比率が多くなります。しかし、女性ライフスタイルしかり、SEOワードを狙いにいってとにかくアクセスを集めているように見えるのですが、メディアのファンを醸成するという観点ではどうなのでしょうか。

・スポーツ
「Sports Illustrated」(35,198)

最後にもう1誌のスポーツ誌です。前年比横ばい傾向となっています。

ということで、media360を分析してアメリカの雑誌メディアを取り巻く概況を紐解いてみました。面白いのが売れている雑誌を見ていると国民性とでもいうべきものが見えてくるのと、知的階層にウケていると思われる「National Geographic」の強さです。さらにセレブを扱うエンタメ誌である「people」がどんどんビジター数を失っているというのも、日本でも同じく起る傾向なのではないでしょうか。

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とりさん

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