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医療物資のドローン物流

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コロナ禍で加速したドローンによる医療サプライチェーン変革。離島や僻地だけでなく人口密集地である都市の上空を飛行し、ワクチンや検体、移植用臓器など医療物資を搬送するドローンデリバリ… もっと読む
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【医療物資のドローン物流】 救急車より早い救急ドローン(AED搬送ドローン)

突然の心停止人が心停止に陥ったとき、脳死と死亡は僅か数分以内に起こる恐れがあり、病院外で発生した場合の生存率は極めて低い。EUでは年間80万人が突然の心停止に遭遇するが、そのうち生還できるのは僅か8%しかいない。 心停止から3分で脳死の恐れ心停止では1分経過する毎に救命率は約10%低下する。心停止から3分で脳の損傷が発生し、8分経過すると救命の可能性は極めて低くなる。救命率を上げるためには心肺蘇生法とAED(自動体外式除細動器)を用いた迅速な一次救命処置(BLS)が重要で

【世界初】救急ドローン(AED搬送ドローン)がOHCA患者を救命

所謂「救急ドローン」(ambulance drone)と呼称される「AED搬送ドローン」(AED delivery drone)による救命救急サービス「Emergency Medical Aerial Delivery」の実用化(社会実装)に取り組んできたスウェーデンEverdrone社の自律型ドローンが2021年12月9日朝、雪掻きの最中に心臓発作を起こして院外心停止(OHCA)に陥ったトロルヘッタンの71歳男性にAED(自動体外式除細動器)を3分で届け、救急隊(EMS)が

【医療物資のドローン物流】移植用臓器のドローンデリバリー

臓器移植を必要とする患者全米臓器配分ネットワーク(Organ Procurement and Transplantation Network)の推計ではアメリカに臓器移植を待つ患者が約11万4,000人いるとされるが、ドナーから摘出された臓器(特に腎臓)の多くが総阻血時間のタイムリミットまでに目的地に到達することができずに廃棄されている。 タイムリミットで廃棄される臓器ハーバード大学医学大学院(Harvard Medical School)の研究者が2019年に『JAMA

【医療物資のドローン物流】2018年に実施された世界初ワクチンのドローンデリバリー

オーストラリアのドローン物流(drone logistics)企業Swoop Aero社が民間企業として世界で初めてワクチン(vaccine)のドローンデリバリー(drone delivery)を実施してから2021年12月18日で4周年を迎えた。 世界初ワクチンのドローンデリバリー世界初となる民間企業によるワクチンのドローンデリバリーはUNICEF(ユニセフ)、バヌアツ共和国政府、オーストラリア外務貿易省などの協力のもと、2018年12月18日にオーストラリアのドローン物

【医療物資のドローン物流】デリバリーで活躍するドローンたち 〜 コロナ禍で加速したドローンによる医療サプライチェーン変革[機体篇]

『【医療物資のドローン物流】コロナ禍で加速したドローンによる医療サプライチェーン変革』前回の[序章]に続き、本稿では[機体篇]「デリバリーで活躍するドローンたち」として医療物資のドローンデリバリーで使用されているドローン機体(UAV)を概観する。 ドローンデリバリーで活躍している機体「ドローン」(drone)というと翼がなく機体にプロペラが4本付いたクワッドローター(クワッドコプター)などのマルチローター(マルチコプター)を思い浮かべる向きが多いかもしれない。しかし、医療物

【医療物資のドローン物流】 コロナ禍で加速したドローンによる医療サプライチェーン変革[序章]

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックによってドローンによる医療サプライチェーン変革が一気に加速した。もともとの強みである速さに加え、非接触型デリバリーのニーズが高まったことが要因としてあげられる。 そうは言うものの、ドローンで医療サプライチェーンがどう変革されているのかイメージの浮かばない向きも多いと思われる。そこで医療物資のドローンデリバリーがどんなものか、百聞は一見に如かず、まずはENAC(イタリア民間航空公団)がLeonardo社、Telespa

【ドローン】全方位視覚自律航法マルチコプター

香港科技大学Aerial Robotics Groupの研究者らはオープンソースの全方位視覚空中ロボットプラットフォーム「OmniNxt」および高性能フライトコントローラー「NxtPX4」とマルチ魚眼カメラセットを開発。 ドローン(Quadcopter)に全方位視野(omnidirectional Field of View)センサーを採用するにはハードウェア設計やアルゴリズムなどシステムが複雑となることからハードルが高かったが、今回の「OmniNxt」登場によって全方位視

【ドローン】欧州委員会エアモビリティ規制法案を決定: VTOL運航とエアタクシーにゴーサイン

欧州委員会(European Commission)はドローン(UAS)およびVTOL(垂直離着陸)機能を備えたエアモビリティ(manned VTOL-capable aircraft)に関する二次法案パッケージを決定。VTOL運航とエアタクシーにゴーサインを出した。 本法案パッケージは欧州航空安全庁(EASA)が2023年8月に欧州委員会へ提出した「ドローン(UAS)およびVTOL(垂直離着陸)機能を備えたエアモビリティ(manned VTOL-capable aircr

【ドローン】新しい国際航空標準・勧告方式(SARPs)

日本をはじめ世界193箇国が加盟する国際民間航空条約(通称シカゴ条約)に基付き設置された国連専門機関である国際民間航空機関(ICAO)は第231回理事会において19の条約附属書のうち15の附属書を修正(Amendment)、情報管理(Information Management)に関する新たな「航空業務方式」(Procedure for Air Navigation Services)が採択された。これらの修正には「Remotely Piloted Aircraft Syst

4IRアジェンダブログ: ドローンによる医療物資の配布支援

ルワンダやガーナで行われているドローンを用いた医療品配送がよく知られているように、この数年、無人航空機システム(Unmanned Aircraft Systems、UAS)を使って遠隔地に物資を運んだり、地域社会に医療品を提供したりする試みが注目されてきました。近年は遠隔地での成功を踏まえ、イスラエルのように都市での実証実験の成功させ、将来への枠組みを作っているケースがでてきています。商品配送、緊急支援、将来的にはクルマの代替など、巨大な可能性を秘めた都市におけるドローン技術