不妊治療はどのように進んでいくの?

不妊治療は不妊の原因を見つけ、治療することが原則です。
例えば不妊原因が排卵障害であれば、排卵をサポートすることで、他に不妊原因がなければ妊娠できます。

不妊治療を行ううえでの注意点

筆者が考える、不妊治療を進めるうえで難しい点は3つあります。

ヒトは妊娠率が低い!

ひとつはヒトの妊娠率の低さです。前述のとおり不妊の原因がなくてもヒトは1カ月で約20%しか妊娠しません。そのため不妊症なのか偶発的に妊娠できていないのか確認するのに時間を要します。

不妊原因には検査不可能なものがある!

2つ目は、受精障害などの一般的な検査では見つけることのできない不妊原因が存在することです。そのため、ある一定期間の一般不妊治療を行い妊娠できないときに、検査不可能な不妊原因を予想し治療を進めなければいけません。

年齢が上がると妊娠しにくくなる!

3つ目は、日本語の「不妊症」は、まったく妊娠しないという意味ですが、実は不妊症である「infertility」と妊娠しにくい「subfertility」が含まれていることです。subfertilityの代表的な因子は年齢です。加齢により低下した卵巣予備能は回復することはありません。また卵巣予備能を評価する抗ミュラー管ホルモン(AMH)値が高値でも、高齢であれば卵子の質は低いため、妊娠率は低く流産率が高くなり出産までたどりつける確率は低くなります。

不妊治療のスケジュールとは

これらをふまえて、一般的な不妊治療のスケジュールを以下に示します(文献1)。

不妊治療における治療方針を決定する主な因子は、「女性の年齢」「卵巣予備能(AMH値)」「精子所見」です。

35歳未満の場合

卵巣予備能が十分にあり、精子所見も問題がないようであれば、タイミング法→人工授精→体外受精と順を追って治療のステップアップを行ってもよいです。

35〜39歳の場合

軽度卵巣予備能の低下、軽度男性不妊のいずれかが当てはまるようであれば、原則人工授精からスタートすることをお勧めします。

40歳以上の場合

40歳以上と高齢、卵巣予備能の著明な低下、重症男性不妊症のいずれかが当てはまるようであれば、体外受精から開始することをお勧めします。

年齢問わず体外受精から開始する場合もある

ただし、明らかに両側卵管が閉塞しているなど体外受精以外で妊娠ができない方は、年齢にかかわらず体外受精へ進む必要があります。

治療を行う本人の希望も重要

もちろん、これらはあくまで一般的な治療方針です。
本人の希望は重要であり、例えば女性が40歳以上でも、体外受精を行うことに抵抗があり、体外受精を行うくらいなら妊娠を諦めるという場合には、タイミング法や人工授精を行います。
また20代でも今まで避妊しないで2年間以上妊娠せず、さらにいろいろ精査しても不妊原因が見つからない場合にはタイミング法や人工授精での妊娠率はあまり高くはありません(文献2)。少しでも早くで妊娠したいというなら、体外受精から開始しても構いません。
つまり、これらの基本方針をもとに、患者さん自身の状況と妊娠に対する希望の強さなどをふまえて不妊治療を進めます。

参考文献

1) 黒田恵司:各論1 不妊治療の実際―どのように妊娠に導くのか? 不妊治療のスケジュール. データから考える不妊症・不育症治療 希望に応える専門外来の診療指針 改訂版Medical View社 2022;116-121.

2) National Collaborating Centre for Women’s and Children’s Health: Fertility: Assessment and Treatment for People with Fertility Problems 2013; 156: 63.


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