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NewsPicksアカデミアでケトルの嶋浩一郎さんと対談して来たよ

 先日、最所あさみさんに呼んで頂き、NewsPicksアカデミアのイベントでお話しして来ました。お相手はケトルの嶋浩一郎さん。出版業界でも有名なスーパースターですね。(対談後にシレッとサイン貰っちゃったよ、写真はそれ)そこで、僕の仕事である集英社の公式ECサイト、FLAG SHOPの取り組みなどに関してお話して来ました。ちょいとメモとか思ったことを書き連ねておきます。

そもそも編集者って・・・

 嶋さんは各種の著書にも書かれている通り、編集者の編集力を高く評価して下さっていて、編集者はもっと多動になるべき、編集の力を生かす領域をもっと拡張していったらいい、FLAG SHOPはまさにその一例と仰ってくれました。まぁ、実際自分たちがやって来たことってそうなんだろうなぁ、と思うのだけど、来てくれた皆さん、編集者とか編集力ってどんなもんだと思ってるんだろ?

 時間がなくて全然話せなかったんだけど、来場者のみんなが抱いてる編集者のイメージって、今をときめく幻冬舎の箕輪さんとかコルクの佐渡島さんとか、あるいはアカデミア会員にとっては本が出たばかりの見城さんとか、そういうイメージだったんじゃないかな。

 とことん突き詰めていけば本質は同じかもしれないけれど、編集者にも色々あって、いわゆる書籍編集、漫画編集みたいな作家を担当する編集者とファッション誌のような雑誌の編集者とでは全然仕事が違ったりします。

 前者は作家という才能を見出し、育て、共に走っていく感じだけど、後者は別に作家を見出す訳じゃない。何かの切り口で情報を編んで伝えていくようなイメージ。売り場の編集とか、今回の講演で度々出て来た編集力とかってそういうどちらかといえば雑誌編集者よりの編集力を前提にしたお話だったように思うのだけど、その辺のニュアンスは伝わっていたかしら。

やってることがあまり知られていない説

 ビジネス系のニュース等で取り上げられるようなこと、出版業界あんまりないけど、結構面白いことやってるよね、みたいな話の中で、なんで知られていないんだろうみたいな話があった。

 まぁ、やってることに対して無自覚だったりする、とかビジネス的な言語でやってることを整理しようとしてないとか、、、まぁそもそも別に自分たちのことを知って欲しい訳でもないかも?とか、色々思いつく。

 あと業界自体がシュリンクし続けている斜陽産業だし、雑誌=売れない、オワコン、Webメディア=いけてるみたいな構図もあるような気がする。イケてない業界はイケてる業界の添え物にされがち。でも個人的にはそう言った斜陽産業に見えるような市場こそ面白いと思っているんだよね。このままじゃダメだよね、という合意形成がし易いし、新しいことを始めるチャンスな気がするから。実際、箕輪さんや佐渡島さんと言った人たちの活躍自体、縮小し続ける出版業界から生まれた新しい動きな気もする。

 かく言う我々FLAG SHOPも雑誌売れまくり、広告入りまくりな状況ではわざわざ出てこなかった挑戦なんだろうなとも思う。だから今状況が厳しい業界の人はもっとその状況を逆手にとって、新しいこと始めてみたら良いんじゃないかな。やらなくても沈む泥船なら好きなことやった方が良いし、もしかするとその新しい行動が沈没を食い止める一手になるかもしれない。沈みゆく泥船からいち早く逃げ出すってのもアリなのかもしれないけど、そこで逆境を逆手にとって好き勝手していると、結果的に違う船にも乗りやすくなるかもよ、とかね。

編集者はもっと多動であるべき

 編集者は紙作って満足してちゃダメ。もっともっと編集力をいろんなところに活かせるはずだと嶋さんが言ってたけど、これは本当にそんな気がする。編集力をWebに活かしたり、商品開発に活かしたり、店舗にも活かしたり、などなど。雑誌を作るのが仕事、って思い込みすぎない方が良いんだろうけどね。とか、書いてて思うけど、今の時代に思い込んでるとしたら、いくら編集者だとしても使い道あるのかねとも思うよね。社内でも優秀な人はとっくにそんな垣根飛び越えたり、飛び越えようとして仕事してる気がするし。

人はコンテクストで消費する

 そう言ったコンテクスト、世界観作りに雑誌は長けている。我々は雑誌という世界観の中でアイテムを紹介して、販売している。話が脱線しまくるから喋らないでおいたけど、結局人はコンテクストの中で生きている、とも言える。自分の行動や意思決定が妥当なものだったと思い込みたいって心理もあるから、自己正当化できる文脈の中に無意識に自分を置こうとする生き物だよね。●●のせいで私は、、、なんていう救いようがないネガティブで他責な物言いも、その人にとっては自己肯定するためのコンテクストだったりするわけで。結局、いろんな次元、色んなレベルでコンテクストに乗っかりながら生きてるんだよなぁ。消費行動はスケール小さいけど意思決定だからね、意思決定はコンテクストに乗っかって行われる訳だから、彼、彼女が乗っかりやすい(それは共感と置き換えても良いけど)、コンテクストを生み出せるかってのはとても重要。

言語化されていない潜在的な欲望

 これを発見するのに編集者は長けているってのが嶋さんがずっと言ってくれていること。

 前書いたnoteで紹介している嶋さんの本では社会記号って呼んでるやつなんだけど。で、社会記号を発見し、名付け、生み出すのは従来雑誌が得意とするところだったのだけど、ついに東京カレンダーが港区おじさんみたいな社会記号を生み出した、と。確かにWebメディアがついに社会記号を生み出したエポックメイキングな事例。僕、個人的にはこの話が一番グッときたな。あー、ヤベー、時代変わってきたみたいなの一番感じたかも。北欧、暮らしの道具店しかり、Webで世界観を作れる人たちがぽつぽつ現れ始めている。それはとても素晴らしいことだけど、雑誌の役割の代替が最終段階に来ているのかも、とも思うね。ただ、本当は別に大丈夫なはずなのよ。編集者の能力を適用する領域を、もっともっと拡張して活用していけば良いだけだから。

B&B、あるいは良質な書店

 良い書棚にはまさに文脈がある。文脈棚という言葉がある訳だからね。素晴らしい書店の本棚には本の並びにコンテクストがある。だから、自分の好きな本がどこに置かれているか探してみると面白いよ。良い本屋さんだと、その近くに並んでる本で知らなかったものが根こそぎ買いたくなる。

 嶋さんの話で面白かったのは、本屋なのにビール売るっていうくだり。安易に真似しようとする人たちは、カフェ出身の人雇ったり、宣伝会議でイベントやってましたみたいな人たち雇って真似しようとするけど、そうじゃないんだ、と。あくまでも本屋なのに、ビール売ることがポイント。

 当初、店員さんからも本屋なのになんでビールサーバー洗浄しなきゃいけないんだと不評だったそうなのだけど、あくまでも本屋としてやることが重要というお話をされていた。

 僕らがやっているFLAG SHOPも、出版社なのに、ECをやっているというところが大切な気がする。結局軸足がどこか、重心がどこにあるかが大切なんだろうな。右足を出版という地点において重心かけているから、左足が一歩を踏み出せる、みたいな感覚。軸足がフラフラしてると、結局一歩が踏み出せなかったり、踏み込みが甘くなったりするんだよなぁ、と。

 というわけで、僕自身、来し方行く末を再確認できる有意義な時間でした。お越しいただいた皆様、機会を頂いた最所さん、およびNewsPicksアカデミアの皆様に感謝。

 呟いたりまとめたりしてくれている方にも感謝。

 ネットが世界観を作れない話、個別の記事のPV競争みたいな話もわかりやすかったですね。部分最適の集合は全体最適にはならないし、とにかく細切れのネタが散在してるだけだとどんだけPV稼げてても世界観は醸成しにくい。

 これは、Webの商品と雑誌の商品と売れるものが違ったりするかとかなんかそんな感じの話の流れでした話。売れるものに違いがあるかというより、売れ方が明らかに違うのよ、それはコンテクストの追い風を受けている商品とそうじゃない商品の違いだと思う、というお話。理想論じゃなくて、実際うちのサイトで売れる商品、売れない商品にはものすごい差があるから。

 そういや今更だけど百貨店になる日、の百貨店はなんのメタファーなんだと思います? 色んなものが買える場所? 欲しいものに出会える場所? 小売業の象徴?

 まとめてくれてる、感謝。編集とかコンテクストをテーマに深掘りした方が面白かったかもね、と自分もこれ書きながら思った。で、そういうコンテクストをどう作り出していくのか、メディアとコンテンツを駆使してコンテクスト生み出し、ものと人が出会えるようなお店をやっていきたいってのがFLAG SHOPなんですよね、まだ全然できてないけど、要するにそういうことってくらいの流れがちょうど良かったのかも。

 嶋さんが言ってた暗黙知、言語化される前の欲望、とかに興味がある人はぜひこの本をお勧めしておきます。人の行動から暗黙知を顕在化させる手法とその事例を紹介した本。

-----------2018/6/10----
noteを読んでくれた最所さんがコメントしてくれたので追記。

 百貨店のメタファー、最所さんのイメージはこのようです。百貨店をメディアとして捉えた上でのメタファーだったんですね。これに限らず、多様な解釈が可能だと思っていて、聞いてくださった皆様がどう思ったのかは興味深いところ。

 店舗=メディアはこれからの小売を考えていく上でも重要な考え方だと思っていて、店舗=メディアなら僕らにも色んなことができるはずだよね、というのが基本スタンス。だって僕たち出版社はメディアやコンテンツのプロ集団なんだから。

 それにしても今年は小売の本が豊作ですよね。『小売再生』は考えたくなる話がたくさん。

 オイシックスの奥谷さん、大広の岩井さん共著の『世界最先端のマーケティング』はオンライン、オフラインのチャネルという切り口でオンライン事業者のオフライン展開事例などを紹介してくれているところがとても参考になります。僕たちのようなオンラインに軸足を置いた事業者がオフラインに出ていく意味をちゃんと考えないと、店舗とサイトが分断された存在になっちゃうんだよね。

 と、まぁこんなことを考えながら色んなことにチャレンジしていきたいのですが、ご興味ある方はいつでもご連絡くださいませ。やりたいことに対して時間やリソースが圧倒的に足りないので仲間やパートナーは常に募集中です!(宣伝)

自分の好きなことを表明すると、気の合う仲間が集まってくるらしい。とりあえず、読んでくれた人に感謝、スキ押してくれた人に大感謝、あなたのスキが次を書くモチベーションです。サポートはいわゆる投げ銭。noteの会員じゃなくてもできるらしい。そんな奇特な人には超大感謝&幸せを祈ります。