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特別支援学級運用における極端な地域差

この記事についての僕の個人的意見です。


この通知の目的は「地域格差の是正」

 この通知の目的は、特別支援学級における「極端な地域差の是正」ではないでしょうか。
 「原学級保障」を掲げている地域の「入級条件」の中には「保護者が希望したら即日入級」もあります。つまり「手帳の所持」などは問わないというものです。ニーズがあるから対応するというのは現場や保護者や児童にとっては非常にありがたい制度です。
 地域によっては「年度当初の入級しか認めない」ところも多々あり、その場合「支援が1年間行われない」こともあるからです。さらに、支援ニーズがあっても「医療機関などで診断を受けていないから」などと断られることもあります。

 そういう意味で「原学級保障地域(僕の造語です)」は、児童や保護者のニーズに合わせて弾力的に運用できているのです。実際、「在籍しているけど、困り感が少ないからまったく支援していない児童」もいます。

 ある児童の保護者は「在籍していることを周りに知られたくないから、困ってるときにだけそっと支援して」という要望もありました。その子は年間を通じてほとんどの時間を原学級で過ごしていました。こういう子も一律で「半分以上は支援級で過ごしなさい」となると困惑するでしょう。

特別支援教育にはかなりの地域差が存在する

話を戻します。

 ここまで読んで「なんだその運用方針は?!」と困惑されている方も多いことでしょう。そうなんです。特別支援学級の運用状況には「極端な地域差」が存在しているのです。それを踏まえないと、この手の話はどうにも理解してもらえない。そして、そこを踏まえた議論があまり行われないことは、全国の支援関係者と話していていつも感じることです。

支援学級数の増加は教員数の増加

 実際、原学級保障を掲げている地域の「支援学級数」は、この10年で「うなぎのぼり」に増えました。それは「教職員数の増加」を意味します。そして、それは「人件費予算の圧迫」を意味するわけです。
 
 通常学級の数は「児童の数」で決まります。40人なら「1クラス」、41人なら「2クラス」となり、「21人」「20人」の2クラスができます。これは「恣意的」にいじれません。児童の数は増やせませんからね。

 一方、特別支援学級の場合、さきほどの原学級保障を掲げている地域だと「即日入級」が認められていることもあります。通常学級と違い特別支援学級の定数は「8人」です。
 しかし、こちらの数は「弾力的に運用」できます。例えば「肢体不自由児」「8人」を教師一人では見ることはできませんよね。だから、「肢体不自由児」はその障害の程度によっては「1人」でも在籍していたら「1クラス」が認められることもよくあります。これは、そのまま「教員が一人増えた」ということですね。

 通常学級の場合は、児童と教師の比率が「40:1」というルールでしたが、上記の場合はその比率は「1:1」になります。もちろん肢体不自由の場合は「常に目が離せない」場合も多いので、この比率は適切です。

自閉情緒の場合


 では、「自閉症・情緒障害」や「知的障害」クラスだとどうでしょうか。原学級保障地域の場合、入級基準は「手帳の有無」や「医療機関などの診断」ではないことは確認しました。
 「昨年度、不安感が強くて、情緒障害クラスで入級したけど、今年度は担任の先生の丁寧な指導の結果、ほとんど支援が必要ない」というAちゃんと、「衝動性がとても強く、目を離すとすぐに教室から飛び出し、学校の敷地外へも平気で行ってしまう」というBくんと、「本人はそこまで困っていないけど、保護者の不安感が強くて、毎日学校での様子を伝えないといけない」というCちゃんがいたとして、この3人で「情緒クラス」の「1クラス」を「認めてほしい」と申請したとします。
 この場合、その申請を認めるかどうかは教育委員会の判断になりますが、それを伝えるのは管理職になります。この伝える会を「ヒアリング」と呼んだりします。

ヒアリングの場面を想像してみる


 以下は想像のヒアリングの内容ですが、たぶんこんな感じなんでしょう。
 「Aちゃんの支援度は低そうだが、Bくんからは目が離せないし、Cちゃんの保護者対応も大変そうだ。よし、では、この3人で1クラスを認めよう」

 これで晴れて「情緒クラス」が「1クラス」生まれました。「教員数1増」です。
 さて、ここからはかなり言いにくいのですが、これ、「パズル」みたいなものなんです。つまり「支援度の高い子と低い子をうまく組み合わせれば、クラスを増やせる」ということなんです。

 そうやっていけば、全校児童300人以下の学校でも、支援学級が7クラスもあるような学校も存在してしまう。この比率、原学級保障地域以外から見たら、かなり「異常な比率」なんです。

 この手の「パズル」ができるのは「情緒障害クラス」と「知的障害クラス」です。他の障害種については「手帳の有無」や「医療機関などからの診断」が必要な場合もあります。

 では、他の地域では、「情緒障害クラス」や「知的障害クラス」で支援するような子どもたちをどのように支援しているのかというと、「特別支援学級」ではなくて「通級指導教室」で支援しているのですね。

 ここが「極端な地域差の正体」です。
 つまり、原学級保障地域には、他の地域では「通級指導教室」に通う児童も、「特別支援学級」へ入級させているのではないか、という疑念を抱かれているわけです。その弊害としては「人件費予算の増額」ですね。

まとめ

 まとめます。
 今回の通知文のターゲットにされた自治体は「原学級保障」を進めていた一部の自治体です。その目的は「人件費予算の削減」です。
 そこが抜け落ちていたのか、意図して抜いていたのかわかりませんが、この記事にはそれが書かれていないので、僕が書きました。もっと書きたいことあったけど、子供たちが起きたので今日はここまで。