【オピオイド禁忌】飲酒量低減薬セリンクロを知っていますか?【わりと新薬】
外来患者さんで
アルコール依存症のため、
セリンクロを服用している方がいました。
セリンクロはオピオイド受容体阻害薬です。
麻薬による鎮痛効果が減弱するため、
手術1週間前の休薬が推奨されます。
セリンクロを内服している
患者さんの感想がこちら
「服用する前は日本酒3合くらい飲んでたんだけど、
今は1合くらいで「まぁいいかなー」
って感じになるんだよ。」
へー!
しかし
なんでオピオイド受容体が阻害されると「まぁいいかなー」ってなるんでしょう?
オピオイド受容体とアルコールってどういう関係なんだ?
ということで
セリンクロのインタビューフォームを読んでみたので
共有します。
この記事を読み終わる頃には
患者さんがなぜ「まぁいいかなー」となったかがわかります!
そして最後に、
麻酔科医が気をつけるべきことを3つにまとめました。
■そもそもアルコール依存症になぜなるの?
まとめの図が載っていたので
先に出します。
図のあとに解説が続きます。
アルコールを摂取すると
ふわふわとした多幸感、快が得られます。
これは
アルコールにより
μオピオイド受容体が刺激されて
ドパミン放出が促進した結果です。
(図上段左)
そして
飲み続けていると
そのうち気持ち悪さやだるさ、不快感が出現します。
これは
アルコールにより
κオピオイド受容体が刺激されて
ドパミン放出が抑制された結果です。
(図上段右)
アルコール依存症では
これらの経路のシグナルが過剰になることで
快や不快のどちらも増強します。
(図中段)
この不快を解消するために、
飲酒をして快を得続けようとするわけです。
■セリンクロの作用
セリンクロ(一般名ナルメフェン塩酸塩水和物)は
それぞれの受容体に対して
μ、δオピオイド受容体→拮抗薬
κオピオイド受容体→部分作動薬
として作用します。
(再掲 図下段)
この作用により過剰になったシグナルが減弱します。
つまり快も不快も減るんですね。
■患者さんの感想
患者さんの感想を振り返ると、
「服用する前は日本酒3合くらい飲んでたんだけど、
今は1合くらいで「まぁいいかなー」
って感じになるんだよ。」
でした。
たくさん飲んでも
楽しい感じにあまりならない
不快な感じも増えない
ので、
不快を解消するために酒量を増やすこともない。
ということだったんですね!
■麻酔科医として気をつけるべきこと3つ
麻酔科医としては
セリンクロを内服していた患者さんを発見したら
以下の3点を気をつけます。
- 予定手術の場合→1週間の休薬
- 緊急手術の場合→術中オピオイド量の増量
- 休薬できなかった場合、
オピオイドによる術後鎮痛は
慎重な検討が必要。
術中はセリンクロの影響でオピオイドの必要量が増加しますが、
術後セリンクロを飲まないのであれば急速に必要量が減弱する可能性があります。
つまり麻薬が効きすぎて病棟で「呼吸が止まる」などの合併症が考えられます。
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■参考資料
セリンクロ添付文書PDF
https://www.otsuka-elibrary.jp/pdf_viewer/index.html?f=/file/1077/sl1bnotk.pdf
セリンクロインタビューフォーム
https://www.info.pmda.go.jp/go/interview/1/180078_1190025F1023_1_002_1F.pdf
わかりやすいセリンクロ解説記事
https://medicalcampus.jp/di/archives/3722
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