妖怪を見ていた週末

先週末はK's cinemaで佐藤訪米監督の『NEVER MIND DA 渋さ知らズ 番外地篇』を観ていた。

スクリーンに「渋さ知らズ」の文字が並ぶだけで飯が食えるタイプの人間にとって、それに音と映像がついてくる時点で充分アドなのに、自分らしきものがそこに映っていたのだからたまらない。

作中たびたび出てくる2019年の天幕渋さin西部講堂。当時2日間かぶりつきで踊り狂っていたかいがあった。スクリーンにちらっと映りこんだあの顔はたぶん私、あの手はきっと私。もう一度ゆっくり観たらもしかしたら全然違う人かもしれないけどそう信じる。あれは絶対に私。だって私あのライブの後に不破さんにハグさせてもらったもん。(これはただの自慢)

映画自体の感想としては、終演後のトークショーでゲストの山下敦弘監督が仰っていた「妖怪を見た」というのが1番しっくりくる。沢山のおっさん(その多数にアルコール分を含むが全員がレジェンド級)が次々出てきてなにやら楽しそうに語り、突然ドラムやらサックスやらピアノやらでとんでもねぇ音を聴かせてくれる。これを妖怪と呼ばずになんと呼ぶんだろう。目と耳が幸せになる呪いにかけられてただただ圧倒された。

音楽のドキュメンタリーといえば今泉力哉監督の『たまの映画』を思い出す。調べてみたら2010年の作品だった。あの頃も今と同じように生きていくことに疲れ切っていて、常に死にたいと思っていた。誰かに吐露すれば否定されるであろうそんな感情を「死=悲しいばかりの辛いこと」ではないと、私の気持ちを柔らかく肯定してもらったようで、映画館の中で声を押し殺して泣いた。

13年経ってなお私は生きるのがつらいけど、渋さ知らズの、たまの、そのほか多数の偉大なアーティストの楽曲に救われながら毎日をやり過ごしている。

先述したように今回の映画には大勢のレジェンドが出演していた。一人一人の個性が際立っていて、音楽への強い想いはともすると独善的にすら見える。どこか別の世界の話のようで、でも確かに私は彼らと同じ空間にいたことがあって、不思議な気持ちになった。

渋さのファンになって10年足らズな私でも知っている笑える小ネタから、そんなことあったのか!と驚くエピソードまで盛りだくさん。渋さ知らズを少しでも知っている人は観たほうがいい。もちろん少しも知らんよという人も。

ちなみに別日に観た『BLUE GIANT』も面白かったので是非。モーションキャプチャーが若干荒くて懐かしのポリゴン風味になるところも含めて楽しんで欲しい。



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