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透光不透視と漆

研究「透光不透視(とうこうふとうし)」は、一言で表現するなら「つなぐ」ことへの探究である。

そのために場、モノ、人とを結び、出会わせ、
つなぐことを可視化させてきた。

研究名である透光不透視は、
光を通して視線を遮るという建築用語であり、
実体を分つことで、より存在を繋いでいるのではないかという見解から付けられたが、その言葉を用いるきっかけとなったのが、漆との出会いである。

漆は生き物という。
乾燥しても内部で生き続け、透明度を増していく。

学生時代、テーマ探しに悩んでいたある日
研究室で、恩師が大切にしている漆をみせてくれた。

通気性に富んだ紙に包まれた板状のそれは、
部屋じゅうの光を纏うと
これまで見た事のない不思議な色をのぞかせた。

あれこれ考えてきた思考がストップし、感想も何も言葉を失ってしまったのを今でも生々しい記憶として残っている。

谷崎潤一郎の陰翳礼讃にある漆に向けた一文

ー沼のような深さと厚みとを持ったつやー

が今でもその時の感想に近い。
(近いというのは、燭台の薄明かりの中ではないから)

塗膜そのものはとても薄いのに、
底が遠く深い闇に視線が奪われ、目が離れなくなってしまっていた。
こちら側の光など怖いほど吸い込まれそうだった。

神秘的、畏敬的な美しさというのは
こういう光なのかもしれないと冷静に思えたのは、しばらく経ってからだ。

この時の漆との出会いは、
研究とは関係なく自分にとっての無形遺産だと思いたい。

話が逸れたが、
この漆との出会いによって
光の種類や影響を探り、のちに光を表す言葉となる建築用語がテーマ名となるのである。

noteでは
この研究を取り巻く、漆をはじめとした
あらゆるメモを綴ることにした。

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