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里親推進へ。当事者の立場から「新しい社会的養育ビジョン」について思うこと

厚生労働省は「新しい社会的養育ビジョン」の中で、未就学児の施設入所を原則停止するという方針を提示し、より家庭に近い環境で子どもを育むために里親への委託率75%以上を目指すと発表しました。
 
資料の名前が「社会的養護」ではなく、「社会的養育」だということ。それが「社会で子どもを育んでいこう」というメッセージのように感じて、嬉しく思いました。
 
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まず、話題になっている里親の推進について。こちらは私も賛成です。特定の人との愛着関係の形成が、子どもたちの健全な心身の発達の後押しになる。そう思っているからです。
 
願うならば、ただ数を追うだけではなくて、それに並行して里親さんへの研修や心のケアに力を入れていけたらと思います。それが、子どもはもちろん、里親さんを守ることにつながります。
 
個人的な経験になりますが、私は親との離別より、里親さんから「手に負えない」と手放された経験のほうが悲しかった記憶があります。今でも思い出すと、少し胸がチクリとします。
 
「里親さんにつなぐこと」よりも「里親さんにつないでから」のほうが大切です。
 
「あたたかく見守ってもらえるかも」と期待した存在が離れていくことは、子どもにとって痛みが伴うことです。また、「子どもの福祉のため」という高い志を持って、里親になられた方がそれを断念せざるを得ないことも悲しいことだと思います。
 
心が折れるその前に、サポートがあれば。そう思わずにはいられません。
 
 
そして、もう一つ。一時保護の期間をできる限り短縮することについて。生活が著しく制限される場でもあるので、期間短縮については賛成です。しかし、それは「安全で安心できる受け皿」があってこそ実現できると思います。
 
私は、一時保護施設を利用者として中から見たことがあります。
 
詳細は割愛しますが、出会った子どもたちに対して、直感的に「この子たち、これから大変だろうな」と子どもながらに思ったことを覚えています。
 
頑張らなければいけないこと、厳しい現実を見つめなければならないことが、これからたくさん訪れることが容易に想像できたからです。
 
次の受け皿が見つからず、一時保護施設からなかなか出られない子。出られたとしても、不適切な行動をして、何度も一時保護施設に戻ってきてしまう子。
 
小学生なのに、まるで赤ちゃんのような振る舞いをする子もいました。驚く私に向かって、職員の方が言ったこと。それは「今、あの子はやっと自分を取り戻せたんよ。そっと見守っていこうな」という言葉でした。
 
課題を抱えた子どもほど、あたたかい眼差しを持って、長い時間かけて見守ることが必要になります。
 
 
社会に育まれることが、悲しいこと、可哀想なことにならないように。そして、子どもたちの心が置いてけぼりにならないように。
 
子育てにまつわるNPOの一員として、自分にできることを丁寧に積み重ねていこうと改めて決心しました。
 

参考:
「虐待児の施設入所停止」新しい社会的養育ビジョンの衝撃https://news.yahoo.co.jp/byline/komazakihiroki/20170801-00074016/

毎日新聞「<厚労省方針>虐待児ら施設入所停止 里親委託75%目標」https://mainichi.jp/articles/20170801/k00/00m/040/119000c

厚生労働省「新しい社会的養育ビジョン」
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11901000-Koyoukintoujidoukateikyoku-Soumuka/0000173206.pdf

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