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「鬼滅の刃 無限列車編」をつまらないと思ってしまったことが悲しい。

「鬼滅の刃」の映画を見た。正直に簡単に言うと「つまらなかった」と私は思う。

かと言って、私は「鬼滅の刃」が嫌いなわけではない。むしろ大好きだ。
原作の漫画は全て読んだし、アニメは2回も見た。特に、アニメは原作へのリスペクトを感じるからさらに好きだ。ストーリーやキャラを丁寧に描いていて、綺麗な絵とこだわりのある動きをちゃんと描けることを私は尊敬している。

私が「鬼滅の刃」を面白いと1番感じたのは、キャラクター性。
炭治郎、禰豆子、善逸、伊之助だけでなく、柱の人たち全員、「個性」がわかりやすい。わかりやすく魅力的に全てのキャラクターを描けていることに嫉妬するレベルだ。「鬼滅の刃」のキャラクター性のすごいところは主要人物だけじゃない。たった1話にしか登場しない人物も手を抜かずにキャラクターを考えているし、なによりも悪役である鬼でさえも魅力的に描いている。出てくるほとんどの鬼に同情し、感情移入ができる仕組みとして、鬼が人間だった頃の記憶が描かれている。それがひたすら泣ける。たくさんの登場人物に対して、泣ける家族愛や友情愛を描いた「過去」を何パターンも描ける作者の物語の引き出しの多さはすごい。
ワンピースの「過去編」と呼ばれる、チョッパーやナミの過去の話はワンピースを知っている人なら誰もがわかる人気の話だ。人気になる可能性が高い過去話を「鬼滅の刃」は、ちゃんとたくさん入れていて、「さすがジャンプ!アンケートたくさんとってるだけあるわ」と思った。ただ主要登場人物の過去を描くだけじゃなく、ザコな悪役にもちゃんと過去の話を入れていることに私は「新しさ」を感じた。


なのに。

(以下、ネタバレ注意)


無限列車編は、悪役が面白くない。魘夢という鬼の個性の理由が描かれていない。せっかく魘夢は、ブッとんだセリフを言う面白い鬼なのに、過去編がないのだ。しかも「誰も死なせない」という煉獄さんのおかげで、魘夢は鬼としての役割をあまり果たしていない。「列車自体が鬼」というカッコイイ設定ですら活かすことなく、ただ脅かすだけの役割。こんなのお化け屋敷のお化けと一緒じゃないか。それだけ煉獄さんがすごいと言うことなのだけど、誰か1人のキャラクターに力を入れて、魅力的に見せるためだけの物語なんて、たくさんある。ちっとも新しさを感じない。

列車が崖に落ちそうになる!
トンネルで暗くて敵が見えない!
何号車両が危ない!これは切り離さないとダメかもしれない!
などという劇場版名探偵コナンでもやってそうな列車ならではのハラハラの展開も一切ない。

炭治郎や猪之助たちの成長や変化が描かれるわけでもない。

無限列車編は、煉獄さんのために用意された煉獄さんのすごさを語るだけ話で、「煉獄さんでも倒せなかった」という恐怖を炭治郎たちに与えるための通過点でしかない回なのに、煉獄さんの活躍が見られるのも鬼のすごさがわかるのも最後の方だけ。

原作を先に読んでいた私は、「煉獄さんがいなければ、地味な話でしかない無限列車編をなぜ映画にするんだろう?」と思っていた。
全ての結末を知っていた私は、映画を見ても泣けなかった。炭治郎の家族や仲間を思うセリフは何度聞いてもグッとくるものがあったけど、泣くまでには至らなかった。冷たい人間でごめんなさい。

煉獄さんという存在以外、面白いところがないように私には思った。
アニメーションだって、テレビアニメより丁寧じゃないように思えた。登場人物の紹介の仕方は「パワポで作ったの?」などと大変失礼なことを思ってしまった。背景は綺麗だったけど、あまりキャラクターと馴染んでいなくて「綺麗な絵だなあ」ではなく「綺麗な3Dだなあ」と思ってしまう自分が憎かった。技を出す時に出る炎や水などのエフェクトは、和モダンを意識したフラットな絵なのに、水や炎だとわかるくらい丁寧な動きをしていてすごいと思ったけど、「いや、ユーフォテーブルさんや、もっと描けるでしょ?」と考えてしまい、「お前何様だよ、じゃあお前は描けるのかよ」と自分を叱った。

こんなに盛り上がっていて、「みんな面白い」と言っているので、私も「面白かった!」「泣いた!」と仲間に入りたいが、私にはできなさそうだ。とても寂しく思っている。

ごめんね、ワニ先生、ユーフォテーブルの皆さん、ジャンプの皆さん、映画に関わった皆さん。めんどくさいファンで、大変申し訳がない。

「鬼滅の刃」を観て、「つまんない」などとケチつけている自分がひどい奴のようで、「みんなと同じ」ではないことがこんなにも悲しいのかと泣きたいくらいだから許して欲しい。

じゃあ何で
みんな「面白い」って言ってるのだろうと私は私なりに考えた。

多分みんな「煉獄がカッコイイ、こんな先輩欲しい」とか「炭治郎がイイ奴すぎて涙した」がほとんどなのではないかという結論に至った。

うん、わかる。
キャラクターの良さについては最初に力説した通り、素晴らしいと私も思う。

でも、私はそれだけじゃ満足しなかった。
だって、それは、例えば、ワンピースやNARUTOを観ても、同じ感情を持てることは約束されているのだから。「エースがカッコイイ、ルフィーはイイ奴だなあ」と一緒だと私は思う。

王道中の王道の感情だ。
私は「新しさ」や「こだわり」に感動することを「面白い」と言っているので、王道が王道であったところで「面白い」とは思えない。

そういえば、ドラマ「恋は続くよどこまでも」もザ・少女漫画なラブストーリーの王道中の王道で、どういう展開が来るのかなんとなくわかる「ありきたりな設定のありきなりな話」なのに、ブームになった理由はなんだろうと思った。

もしかして、日本が今求めているのは「ありきたり」なのだろうか?

ありきたりで満足できない私のような存在が、少し前まではたくさんいたような気がするのだけれど、みんな疲れちゃったのかな。
と思えてしまう自分の生きる世界ですら、私は悲しい。

いつもお付き合いいただきありがとうございます。