アイビー

恋人ができてそろそろ一ヶ月。
好きなときに好きだと言えて、会いたいときに会いたいと言える相手がいる生活っていいものですね。
休みのたびに家に来てくれて、一緒に馬鹿みたいな話をして笑い転げて、夕方まで寝て、ご飯を食べてお酒を飲んで一緒にあたしの家に帰る。
おしゃれなデートなんてしたことないけど、サプライズも色気もないけど、とっても幸せ。
俺はマットレスみたいってほんとだね。
あたしがすっぴんでも部屋が散らかってても、落ち込んでも失敗しててもどこにいようともあたしをちゃんとずっと好きでいてくれる安心感があたしのふらつく足を抑えてくれてる。
自分の強みも特技も分かんなくなって、大好きで大事な自分のことなのに自信がなくなっちゃって、動けないのに眠れなくてまた過食しちゃって。そんな一週間でした。
お金もないのに支払いや予定があって、でも仕事には行く気力がなくて余計焦っちゃってた。
またあの仕事をしに遠くまで行かないといけないし、嫌だけどそれに救われてるあたしもいる。
ここにいたら甘えちゃうから。
ずっと夏の終わりのぬるくて気持ち悪くて心地いいあの時間が流れてる気がするの。
冬も春もなくてまだニットなんて着たら暑いような、でも半袖はちょっと寒いような。
そんな場所にいるとあたしはまだ17歳の頃に戻った気がするの。
何も知らなくて、先のことなんて考えてなくて、ただ今を楽しんでたあの頃に。
夜中に服を着たまま海ではしゃいで濡れた手で花火して溺れそうになるくらい笑ったり、夜中にマックでこれでもかってくらい食べたいものを買って公園の遊具のてっぺんでおしゃべりしながら食べたり、零れそうなほどの星空の下に寝転がって流れ星を待ちながら昔話をしたり。
こんなことをお酒が飲める年になってできると思ってなかった。17歳までに出来なかったことを今、気付いたら沢山してる。
世界で一番誰よりも愛してる男がいつでもあたしを好きなまま待ってくれてるのを信じてるから、あたしはどこに行っても誰といても今を全力で楽しめているんだと思うの。
だから沢山ありがとうって言うの。
おやすみのあとに大好きを忘れないのは、あたしの気持ちをうまくまとめられないから絞り出したせめてもの1滴なの。
今日も明日も来年も健康でいてね。人の心配ばっかりしてないで自分の体調と怪我に気をつけてね。あたしはお喋りだけどあなたの話を聞いてるのも大好きだから、いくらでも話して。その低い声でくだらない話を聞かせて。いつまでもあたしを一番笑顔にさせるのはあなたでいて。あたしの汚いところはまだ見ないで。元カノの話なんてしないで。ほんとは愛が重たくて嫉妬もしてるの分かってるから隠さないで。あたしが他の男に言い寄られてるのを見ても気にしないふりなんてしないで。不満がないわけじゃないけどそんなことよりも大好きだから、あたしの愛が本物だって証明できるならなんだってするわよ。毎日泣きそうになるくらい会いたくて、声が聞きたくて、恋しくて寂しいの。本当に心の底から愛してるのよ。
でもね、こんなに可愛いあたしの人生を全部あなたのために使うんじゃもったいないからあたしの時間を全部は使ってあげない。
心はもうあなたに持って行かれちゃったみたいだからそのまま預けておくけど。
あたしは自分の時間が必要だし、嫌いだけど大人は生活ってもんをしないといけないみたいだから家事したり仕事したり、役所や郵便局だって行かなきゃいけないのよ。
更に可愛くなってあなたを釘付けにするためにネイルや美容室だって行かないと。
たまには友達と遊んだり、何も考えずに散歩したり、素敵な出会いを求めてショッピングしたりもしたいの。
だから全然時間が足りないの。お金もね。
あなたのことは大好きだけどあたしが誰よりも一番大切にしてるのはあたし自身だから、あたしのご機嫌を取るためにこの人生を使うの。
だってあなたあたしが好きなんでしょ?
わがままで可愛くて素直で馬鹿でちゃんと楽しんで生きようと苦しんでるあたしのことが。
だから今まで通り生きるのよ。
あなた主体の人生はあなたのだけでいいの。
そんでたまに抱き合ってキスしましょう。
あたしの色をちょびっと分けてあげるからあなたの色をちょびっと頂戴よ。
交換してお腹のあたりで混ぜておきましょう。
そうやって会うたびに混ぜてったらいつかきっと同じ色になるんじゃないかしら。
そうなったらいつか二人で一緒に尽きるまで仲良く生きましょう。
それまでは小悪魔的で魔女っぽくてお姫様みたいなあたしのことを笑って隣で眺めてて。
踊るように生きましょう。
泣くように笑いましょう。
眠るように死にましょう。
歌うように愛しましょう。
さようならはいらないから、おはようとおやすみだけを死ぬまで言い合いましょう。
愛してるなんて言わなくてもわかるくらいの温度で抱きしめあって、そのまま消えたい。
愛という名の呪いをかけあっていきましょう。


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